ニュージーランドは2005年に一度同性婚合法化への道を閉ざしそうになったことがあることとニック・スミス
この記事に乗っているモーリス・ウィリアムソンはニュージーランドにおける同性婚合法化、というよりもすでにシビル・ユニオンで認めていた同性婚を結婚という制度でも認めようという話だが、の立役者のように語られている。
特に日本では彼のスピーチが劇的に取り上げられるあまりにヘレン・クラークが絶妙なバランス感覚で導入したシビル・ユニオンというワンクッションがあることを無視されていることが非常に不快だったために先日彼女を紹介する記事を書いた。
あくまでもニュージーランドの結婚制度において男女以外の関係における結婚という制度を制定するには長い時間をかけてじっくりと突き崩すような形で進められていた。
当然当時のナショナルでも岸田首相のようなことを言う人がいた事は想像に難くないが、それに対して攻撃するのではなくあくまでも議論として勧めていた。
ところで2005年に実は一度ニュージーランドで同性婚合法化への道を閉ざす法案が提出されたことがある。
この法案についてはレイバーは一人を残して全員が反対し、ナショナルは75%が賛成したこの法案はMarriage (Gender Clarification) Amendment Bill 2005という。
この法律はUnited Futureという政党によって提出された。この政党は今もあるかは知らないが議席を長いこと獲得していない。
今回はこの法律について書くことにするが、レイバーが一貫して反対に回らなければ成立していたかもしれず、2013年のウィリアムソンのスピーチを聞くことすらできなかったかもしれない。
ちなみにウィリアムソンもこの法案には反対していた。
この法案は一体なにをしようとしたのか?それは「結婚は一人の男性と一人の女性との間でのみ行われることを明確化する」というものだ。そしてこの法案は1996年の裁判結果を受けてのものだ。
更に言うならばこの法案が提起しているのは、人権法の差別禁止条項には「ただし結婚は除く」というようなことまで追加しようとしていた。
ではこの法案になぜレイバーは一人を残して全員反対したのか?ヘレン・クラークは「結婚制度はいじらない」と言っていたのだし、別に賛成しても彼女の言うことには矛盾しない。
だがもう一つ認めていたことが「同性婚を認めないのは差別である」ということだ。つまりこの法案を認めることは彼女にとっては「ポリシーに準じていない」ということだったのかもしれない。
また、将来的に同性婚を認める流れはすでに始まっていたと言っても良いかもしれない。
つまりニュージランドは段階的に同性婚を認めてきており、途中に「道を閉ざそうとする勢力」も登場していたことになるので、実は日本とそれほど代わりはないと言っても良いかもしれないし、ウィリアムソンのスピーチばかりを見ていると多少抵抗はされたかもしれないが同性婚合法化までは一本道であったというような印象を与えかねない。
日本の政府はある意味で事項連立政権による独裁が長いこと続いていると言っても良いので、ニュージーランドとはかなり実態としては違ってくることは認めるが、ニュージーランドのやったことをもっと俯瞰して見つめる必要はあるだろう。
2013年に話を戻すと、このときに反対票を投じたナショナルの政治家にニック・スミスという人がいる。
彼は同性婚に反対はしたのだが、後日息子がゲイであると伝えられたことで同性婚の持つ意味を理解し、同性婚に反対したことを謝罪した、それも引退スピーチの中でだ。
ニュージランドの政治家は引退のときにスピーチを行う。ニック・スミスは31年という長い政治家人生の幕を謝罪とともに閉じることを選んだ。私は彼のスピーチも他と同様にもっと取り上げられるべきだと思っている。
彼は過去の過ちを認め、その謝罪を公式な記録が残るスピーチに入れることを選択した。彼のスピーチ全文はこちらにある。
スピーチの中の彼の謝罪を以下に引用する。
彼の言いたいことがわかるだろうか、同性婚を合法化することがいかにたくさんの人の人生をより良いものにするかということを彼は息子の告白によって痛感したのだ。
そういうわけで日本の報道機関はもっと全体的に調べて記事を書いてほしい、こんな鬱屈した1個人が書いた記事などより遥かに良い記事がかけることだろう。
そういうわけでニュージーランドに来ることはおすすめしない。
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