トランプ米政権はアメリカからEUワインを消してしまうのか 2020/1/9

今、世界No.1のワイン消費大国であるアメリカの市場が最大の危機に晒されています。

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( "Say No to Wine Tariffs" 「ワインの関税に反対しよう」ブルックリンにあるワインショップ、VINEWINEが投稿したインスタグラムより )

2019年12月の初め、トランプ米政権がアメリカにおける、EU産ワインの関税を100%にする指針を発表しました。

もし、この新しい関税案が通れば、アメリカ市場のEU産ワインは現在の約2倍の小売価格で販売されることになり、小売業や輸入業、レストラン業界に大きな影響が出ると言われ、論争を巻き起こしています。

米国通商代表部(USTR)は、2020年1月14日までパブリック コメント(世論)を受け付けており、ニューヨークをはじめ、世界中の多くのワイン業界の人々がこのコメントへの参加を呼びかけています。

 もともと、なぜこんな話になったかというと、2019年7月にフランスが導入したデジタル税が原因。デジタル税とは、GoogleやApple等の巨大IT企業に対し課された新しい税で、トランプ氏は「アメリカが不正に標的にされた」とし、報復措置として、フランス産ワインやチーズ、バッグ等に対して関税措置を検討すると発言してきました。

 そして第一弾として、トランプ政権は、2019年10月18日にフランス、スペイン、ドイツ産のワイン(スパークリングワイン、ALC14%以上、マグナム以上のビッグサイズのワインを除く)の関税を25%に引き上げました。この関税が施行されたのがホリデーシーズン前だった為、ほとんどのワインショップやインポーターは自分たちでコストを飲み込み、ワインの市場価格を変えない努力をした為、市場へのインパクトはほとんどありませんでした。

 しかし、昨月の2019年12月、追加課税100%の方針が出されました。

上述したように、アメリカはワインの消費量が世界No.1の国です。世界のワイン消費量の約15%をアメリカが消費しています。(2018年ーWINE INSTITUE調べ)そして、アメリカの全輸入ワインの65億ドルのうち、TOP2はフランスとイタリアから。この2国からだけで40億ドルを輸入しています。

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(ニューヨーク、マンハッタンにある大手ワインショップAstor Wines&Spirits 。現在(2020年1月8日)はヴーヴクリコのイエローラベルが$47.95で販売されていますが、関税が100%になると、約$100になると言われています)

ワイン業界の多くがSNS等のメディアを通じ、この関税に批判を表明しています。今日訪れたマンハッタンにある大手ワインショップでは、店の棚のあちこちに、「関税100%が価格を上げる」と張り紙をして、消費者に知らせています。

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(ニューヨーク、マンハッタンにある大手ワインショップAstor Wines&Spirits の関税に関するお知らせ文書)

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(ニューヨークにある人気のワインバー、Terroirは、「関税100%は地球上で最高の飲み物を生み出すために日々努力している全てのワイン生産者とワインラヴァーに完膚なきダメージを与える」として、アクションを起こすことを呼び掛けている)

ここ数日間、このワイン関税に関する多くの記事を読み、一様に書かれている事は、もし本当にこの追加関税100%が施行されてしまえば、いずれアメリカからEU産のワインは消えてしまうだろう、ということ。それは同時にアメリカにある数多くのワインインポーターやワインショップ、レストラン、物流会社がビジネスを続けることが出来なくなり、そこで働く多くの人が職を失う事を意味します。それだけでなく、今までアメリカ市場に輸出をして生計を立ててきたEUのワイン生産者は、ワイン造りが続けられなくなる可能性も大いにあります。

更に、この新たな関税の報復措置として、EUがアメリカワインの輸入に高い関税をかける可能性もあります。(アメリカ産ワインの輸出先No.1はEUです)そうなれば、もう、いたちごっこ...

 日本にいればあまり深く考えない問題だったかもしれませんが、アメリカに身を置く以上、他人事には思えません。禁酒法がなくなり、法が整備され市場が成長し、ワイン文化が根付いてきたこの歴史を、トランプ政権が簡単に潰すかもしれない、、という事実にとても失望しています。

世界へインパクトを与えるパワーを持つ大国に来たばかりの、いちワインラヴァーとして、つたない英語で米国通商代表部(USTR)へコメントを送りました。

 米国通商代表部(USTR)へのコメントリンクhttps://www.regulations.gov/document?D=USTR-2019-0003-2518

 

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