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2024年4,5月の新譜記録

こんにちは!タイトルの通り、私が4,5月に聴いて良いなあと思った新譜について、感想とともにまとめておく記事です。

良かった新譜

アルバムタイトルからsongwhipのページに飛べます。

(come in alone) with you - Magnolia Cacophony

"Vocaloid Shoegaze" という概念に真っ向から挑んでこれを超えられるものはもう出てこないんじゃないか。My Bloody Valentineやその子孫たち(Guitarやburrrnなどを想起)へ直系で連なるオーセンティックなノイズギターに、ボーカロイド由来のキャッチーでエモーショナルな歌メロを掛け合わせて「轟音ギター+美メロ」というシューゲイズの根幹を真正面から完璧に換骨堕胎した傑作。日本でしか起こり得ない特異な文脈ゲームの極北として、・・・・・・・・・『』に並ぶ邦シューゲの金字塔とすら言える作品です。

本作ではボーカルに重音テトSVと歌愛ユキとが使い分けられており、この点も個人的に興味深いポイントでした。自分もこういう合成音声を使った曲を作ることがあるのですが、Synthesizer Vは従来のボーカロイドと比べて「合成音声っぽさ」がかなり希薄になっているため、いわゆる「電子の歌姫」的な美学を軸とするやり方で曲を作るのもなんか違うんだよなと感じていました。その一方で、合成音声であるところに何か意味を見出そうとしてしまう気持ちもあり。

本作収録の「」に出会ったのは、ちょうどそんなことを考えながらボカコレ2024冬に初音ミクの曲を投稿したタイミングでした。実際に意図されているところなのかは分かりませんが、合成音声っぽさとかボカロックっぽさに全くとらわれていないような、突き抜けたシューゲイズバンドの音源と言われても遜色ないサウンドをボカコレのフィールドで決めていたことにかなりの衝撃を受けました。「Synth Vって、もう合成音声だからとか拘らずにもっとフラットなツールとして扱ってしまってもいいんだ」という気持ちが確信に変わった瞬間でした。

というかむしろ、Synthesizer Vというツールの可能性はそこにこそあるのかもしれません。自分で歌わない / ボーカルがいない人に向けて、「ボカロック」や「ミクゲイザー」みたいなマナーから自由に開かれた選択肢を与えるということ。その一方で、キャラクターに愛着を持ったり、人格を見出してメッセージを託すような合成音声特有の親しみ方も両立させられること。少なくとも、Synth Vの扱いに悩んでいた自分にとっては、そういった新たな地平が見えてくるような作品でした。

勝手ながら、自分も頑張って曲書かないと……という気持ちにしてくれる一枚でもありました。今後の活動も楽しみです。

NOBODY - tofubeats

上記と同様のことを別の角度から感じた作品。こちらもSynthesizer V(おそらく花隈千冬)をボーカルに使用していて、そのことが話題になってもいました。tofubeatsという、自分でも歌うし豪華な客演を迎えたりもしてきた人があえてSynth Vを使っているという点で、「普通にボーカルとして使っていいんだ」という驚きはこちらでもかなりあり。本作についてのインタビュー(これとかこれとか)を読むに、Synth Vへの態度は普段から合成音声を使っている人たちよりもドライで、キャラクター性に全く着目していない点、演者の心情を意識しなくてよいことを利点に感じている点、「クオリティ的な差はあまりない」としつつ、人間のボーカルとの使い分けについては判断を留保している点などで、「こういう距離感の使い方もあっていいんだよな」と面白く感じました。楽曲としても、合成音声とかは置いといてもノりまくれるキャッチーなハウスという感じでとても好きでした。

niconico - kuragari

「シューゲイズ」や「ノイズロック」という形容では不十分に思えるほどの、猛烈なノイズの嵐。前作まではかろうじて残っていたビートがほとんど希薄になり、音楽としては全くめちゃくちゃな状態になっているはずなのに、コード進行とメロディから成る歌モノとしての面影がまだ保たれているところに強烈な切なさを覚えます。例えるなら、エヴァ旧劇のデカ波や、進撃ラストの終尾の巨人を見た時の感覚に近い。

for the rest of your life - twikipedia

宅録万歳、SoundCloud万歳と声を大にして叫びたくなる。例えるならば、ギターポップが好きすぎたUnderscores、元気なParannoulといったところでしょうか。ロックスターにはなれなくても、部屋で1人高らかに爆音をブチかまし、ロケットを打ち上げ、それを地球の裏側まで届けることはできるんだという、そのことを本当に大事にしていきたいものです。

Heaven - Softcult

音楽面もビジュアル面も、グランジとゴスとドリームポップの折衷という感じ。つまりは汚れたサウンドにダークな雰囲気、そしてそこに宿る耽美なカリスマ性と、完全に好みのド真ん中。ライブ見たらマジで飛びそう。去年来日してたのを知らなかったのがかなり悔しいです。

人工島 - 電球

ドリームポップやシューゲイズのルーツにあるサイケデリアを全開で詰め込んだ、聴いていて非常に心地よく安らぐ一枚。一定のリズムを刻み続けるビートやドリーミーなノイズギターがトリップを誘うのと同時に、焦点が定まらないかのように力の抜けた歌声や、淡々とかつ超然としたサンプリングによって、ぼんやりと白昼夢の中へ連れ去られるような感覚を味わえます。

What is my Porpoise? - Dolphin Hyperspace

なんか5年前くらいにルイスコール周辺でこういうフザけたミニマルファンクあったなあ…と思ったら普通にルイスコール参加してました。サックスとベースのデュオに様々なドラマーを迎えたアルバムとのことで、縦横無尽に跳ね回る演奏のスリルと、それを乗りこなす強者の余裕に溢れた高カロリーの演奏。

At the End of Corridor - Catt

最後にめちゃくちゃ宣伝になりますが、ベース弾いてますのでよかったら聴いてください。硬派で強力、そしてリアルなロックチューンが並んだ捨て曲無しの大傑作ができたと思います。なんであれ、ロックバンドが好きだよという方には全員チェックしてもらいたいです。

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4,5月はこんな感じでした。1ヶ月サボった割に偏りの酷い並びになってしまいました。


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