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サマソニ2023に行きました

サマソニに行きました。ということで今回はその記録も兼ねた感想記事です。本当は帰ってきてすぐ書きたかったのですが、案の定コロナに被弾してぶっ倒れていたため、ちょっと遅くなってしまいました。アクト自体は非常に素晴らしく、とても楽しいフェスでしたが、己の健康との両立について真面目に考えさせられる機会にもなった二日間でした。

とりあえず、観たものたちから振り返っていきたいと思います。

1日目

待ちに待ったサマソニ1日目。12時からのNewJeansを観たくて、またその前にサマソニTシャツが欲しかったので、10時半ぐらいに着きました。この時点でもうマリン横のグッズ販売ブースは長蛇の列で、炎天下の中1時間半並んでようやくTシャツとタオル(持ってきたタオルが既に使い物にならなくなっていたため追加購入)を買うことができました。あまりにも暑すぎて、1アクトも見ていないのにHPをゴリゴリ削られるし、物販列で倒れてる人も何人かいたほど。普通にちょっと怖かったです。

NewJeans

今回特に気になっていたものの一つ。グッズを買い終わった段階でアリーナは入場規制がかかっていたため、スタンドから観ました。前半はバックバンドをつけた編成によるバンドアレンジ、ブレイクを挟んだ後半は原曲通りのアレンジ、という基本的にはロラパルーザと同じセット。あまりバンドサウンドがハマるイメージはなかったんですが、特にCookieとかは四つ打ちスタジアムロック感がかなり良くて面白かったです。2番Aメロのダニエルとその取り巻きみたいになってキャッキャしてるところもありがとう度高かった。
一方、惜しむらくは、昼のマリンがNewJeansのクールさをもってしても誤魔化しきれないレベルで暑すぎて、観ている側もだんだん「みんな大丈夫……?」という気持ちが強まり、後半あまり素直に楽しめなかったことです。みんな顔真っ赤でさすがに観てて辛かった。Super Shyとかは特にキツそうでしたね、、、
ただそれでも、歌も踊りもしっかり安定してミスなくこなし(それどころかその最中に他のメンバーを気遣う様子もあり)、表情やMCのテンションも最後までキープするところは一流KPOPアイドルの底力を感じました。全員10代とは思えないよ。ファンの熱量も相当なものを感じたので、また別の機会にベストコンディションでのステージを観てみたいところです。

↑バンドアレンジはこれ(公式映像)でも聴けます。

Bialystocks

NewJeansの後はSHYGIRLを観る予定だったのですが、あまりの暑さにくたばっていたり、メッセまでの移動に時間を食ったりした結果SHYGIRLは観られず、その次のBialystocksの途中から参加するという始末に。まあ仕方ない。

前々から好きで聴いていた人たちで、私のnoteでも一度紹介したことがあります。やはり歌も演奏もめちゃくちゃ上手というか丁寧で、小さめのステージでも聴き応えは十分でした。個人的なイメージでもうちょっとスカした感じなのかなと勝手に思っていたんですが、ステージ上でのアティチュードはむしろロックバンドなんかに近いんじゃないの?というぐらいに爽やかなのも好感持てました。特にボーカルは丁寧でいながらかなり情感的にパワフルに歌い上げるスタイルで印象に残っています。相当テクい演奏をしているのに、あんまり嫌な感じ(見せつけられてる感)というか取っ付きにくさがないのはそういうところなんですかね。今度ちゃんとフル尺でライブ観たいです。

Two Door Cinema Club

ビーチステージのUMIを観に移動していたところ、飯食ったりしていた都合で途中からしか観られないね〜となり、同行者の「じゃあもうこのままTDCC観ちゃう?」という発言を機にマリンステージへ向かうことに。この時点で裏のHolly Humberstoneを切ることは確定してしまったんですが、もう一度メッセへ引き返す気力も無く……

こういった具合で、スケジュールが早速めちゃくちゃになった中、「TDCCとかいうイギリス版邦ロックバンドをいまさら……?」と若干不本意な気持ちで向かったステージでしたが、曲はもうもれなく踊れるし演奏の安定感もバッチリ(特にサポートのドラマーが良かった)で、全然しっかり楽しめました。What you knowとかUndercover Martynとかのアンセムもとい懐メロは問答無用でみんなで盛り上がれてよいですね。偶然の出会いというほどではないですが、なかなか楽しいイレギュラーでした。

The Lounge Society

The Lounge Society前のパシフィック

ずっと観たかった人たち。期待をさらに上回ってすげー良かったです。音源はいかにもDan Careyって感じのポストパンクなんですが、ライブだとそういうののもう一段上の、「ロックンロールバンド」としてのエネルギーを感じました。これは若いバンドならではです。
バンドのまとまりがすっごくいい感じで、ドラムを軸に4人全員のテンションの推移が完全に同期しているのが見ていて気持ちよかったです。全員が若さゆえのエネルギーを持て余していて、今だ!というタイミングで4人揃ってそれを爆発させてくれるのが、やっぱりロック耳には嬉しい。むしろそういうことができるからこそ、緊張と解放をビビッドに突き詰めたポストパンクの方法論がハマったのかもしれません。
とはいえ、このままUKポストパンクとして時代とともに終わってしまうのもあまりにもったいないので、そこに捉われずに生き残ってほしいなとも思います。エモ風味を感じる曲もあるし、個人的にはFugaziとかATDIみたいなポスコアっぽい感じがかなりハマると思いますがどうでしょうかね。

あと、この日のヘッドライナーのBlurを観た後、マリンを出ようとしていたらギタリストのHerbie がいて、声かけたら写真撮ってくれたのも良い思い出です。めちゃくちゃいい人でした。彼、イケメンだしスタイルも良いから、なんか足を振り上げる仕草とかがもうストレートにカッコいいんですよね。ああなりたかった……

Fall Out Boy

同行者の青春のバンドらしく、Blur前ということもありついて観に行くことに。ただ本当に申し訳ないんですが、感想らしい感想がありません……。自分の想定していた「ポップパンク」の感じは100%やって来たものの、逆に言えばそれ以上でもそれ以下でもない感じ。もともとそんなに詳しいわけでもなかったので、単純に思い入れの問題もあるとは思います。"Uma Thurman"のときの背景がちゃんとパルプフィクションとキルビルになっていたのはカッコよかったです。音も分厚くて良かった。

Blur

1日目ヘッドライナー。バンドとして「到達」するとはこういうことか、と徹底的に分からせられる1時間半でした。全員もう肩の力が抜けていて、ただやりたいようにやっているだけ、それでちゃんとBlurの「変」さは完成し、むしろそのことを全員分かっているから、お互いに好き勝手やることを信用している感じ。Lounge Societyみたいな、みんなで円陣組んでやってるようなところからさらにもう何歩か進んだ、別に円陣は組んでないけど精神的なより深い部分で通じ合っている信頼関係を感じました。それぞれの老いや哀愁すらそのままに、ただ今の自分たちとしてやれること・やりたいことをやる、それを許容して信頼している。そうでなければ出せない空気感、鳴らない音が出ている。演奏ミスってたりもしたけど、そういうのはもうどうでもいいと思える。こういうのを「老練」って言うんだろうか。バンドの年の取り方として一つの理想だと思います。

ライブの内容としても、"Parklife"や"Song 2"、"Girls & Boys"、"Tender"などみんなが歌えるアンセム揃いのオールタイムベスト的な並びの中に、違和感なく新譜からの楽曲も入る非常にバランスの良いセトリで、全編通してグレアムのギターが冴え渡ってました。"Popscene"とか"Advert"みたいなオルタナチューンではちゃんと爆音オルタナギターやってて良かった。彼のギター、"St. Charles Square"みたいなわかりやすく変なギターリフならまだしも、"Barbaric"の一見普通のアルペジオだけどなんとなく変だけどなんか美しく聴けちゃう、みたいなのが一番困る。やっぱりこの人が変で、そこにデーモンという奇才が組み合わさることで生じた普通に変なバンドなんだなあということを再認識しました。(仲直りできてて良かったよ、、、)

なんというか、今回のサマソニは色んなベクトルのすごい人たちをたくさん見ることができたのですが、Blurはその中では「バンド」というベクトルの究極形でした。自分たちにしかできない変な音楽を、ありのままの自分たちだからこその代替不可能なやり方で実現しているバンド、まさに唯一無二でしょう。1日目にして、ちょっと圧倒的なパフォーマンスでした。

2日目

2日目です。正直に白状すると、朝起きた時点で体が動かず、リアム&ケンドリックは万全の状態で観たい、そして翌日は仕事……という状況を勘案した結果、夕方のInhalerから観る、という判断になりました。The SnutsもMaisie PetersもFLOも観てません。不届者!と思いました?キレたいのはこっちだよ(己の貧弱さに)

Inhaler

2月に出た新譜が個人的にかなり好みで、楽しみにしていたアクト。立ち姿からしていかにもUKという感じ、耽美主義的でキラキラした楽曲と、どこか翳りのある気怠げな立ち振る舞いには、それこそU2やスミス、ストーンローゼズなんかを重ねてしまいます。UKロック後追いの世代としては、そうしたバンドたちの若き日の姿を見ているようで、思わずこれよこれ!と叫びたくなってしまう。演奏もフレッシュさはありつつも勢いに任せたようなところはなく、しっかり上手くて安定感ありました。
ただ、その方向性を正当に進化させて今最も先頭を走っている1975とかと比べると、ややインディー趣味で保守的な感じは否めないなとも。昔のバンドに比べると、ギターロックの割にリズム隊の存在感が強いなど面白いポイントは随所に窺えるので、そういうところを活かせばまだまだいけるポテンシャルは秘めていそうです。今後にも期待したいですね。

Liam Gallagher

いつものアレ、本物。

人生最高のライブでした。ロックンロールスターってマジでいるんだなと思いました。

サッシャのMCが終わった段階からリアムコールで沸き立つマリンステージは、これまで行ったことのあるライブとは明らかに違う異様な熱気。Familiar To Millionsと同じFuckin' in the BushesをSEに、そして自分をただ褒め讃えるだけのワードを並べまくった映像をバックに登場すると、まさに割れんばかりの歓声が巻き起こりました。"Mornig Glory" を歌い始めると、すぐさま観客側でも一斉に大合唱が始まり、一時はリアム本人の歌声も聴こえないほどでした。
「一体感」というと陳腐な表現になりますが、観客全員が彼の登場を待望し、彼が歌えば一緒に歌い、視線はまさに釘付け、といった形で、あの時間は完全に世界がリアムギャラガーを中心に回っていました。圧倒的なカリスマ性によって抗いようもなく掌握されるような、あんな感覚を味わったのは生まれて初めてでした。特に、ラストのWonderwallからChampagne Supernovaにかけて、もはや血肉となっている楽曲を大いなる流れに身を任せてただ叫ぶように合唱していた時間、あれは人生の中でもベストモーメントの一つになっていくでしょう。Biblicalって言いたくなる気持ちもよくわかった。完全なる「ロックンロールスター」がそこにいました。

というか、ようやくロックンロールスターになれたのがこのソロ復帰後なんでしょうね。声の調子が良いのは復帰してからずっと言われてきたとおりでしたが、なんというか当人のカリスマ性100%でメンバーも客も掌握しきれるソロ形態になったことで、やっともう一人のカリスマたるお兄ちゃんの影を吹っ切れたような感じがあり、そちらの方がむしろインパクトとしては大きいような気がしました。オアシスはもちろんノエルがいないと始まらないバンドだったし、ビーディアイも「ノエルのいないオアシス」として頑張ったけどセールス的には不発。そうした過程を経て、ソロキャリアでも数々のアンセムを生み出し、これだけのステージを成立させられるようになったことは、真の意味での「ロックンロール『スター』」として独り立ちできたことを示しているようで、胸熱でした。

こういうこともあって、なんか初めて「(今のままなら)オアシス再結成しなくてもいいかも」とさえ思ってしまいました。ここまで来るにはお兄ちゃんの力が必要だったとはいえ、リアムは結局ソロ形態の方が合ってそうだし、ノエルが書いた曲も全然やるし、そもそも当のノエルがあまり乗り気じゃないし。オアシスキッズとして兄弟仲直りしてほしい気持ちはあるけど、音楽としてはそんなに今すぐ無理することはないんじゃないかなと思います。もちろん、こうして二人ともオアシスからちゃんと吹っ切れた状態で再び合流するからこそ意味があるような気もしますけれど。その辺のどうなるかわからなさも含めて、スターとしての現在進行形具合がよくわかったライブでした。

前日のBlurが「すごいバンド」だとしたら、こちらは「すごい人間」だったと思います。すごかったです。

Kendrick Lamar

ラストで打ち上がった花火

サマソニ2023最後のアクト。こちらも相当な衝撃を受けました。ソロアーティストという点では先のリアムと同じですが、完全にベクトルは別種。圧が違う。スタンドから観てましたが、それでもちょっと怖くなるほどの存在感。

まず、世界トップクラスのラッパーがたった一人で何もないステージに現れる、という演出に度肝を抜かれました。一曲目 "N95" イントロのコーラスパートが終わってラップが始まった時、高揚感と同時にやってきた鋭い緊迫感がかなり印象に残っています。あとで知ったことですが、これでも同期は使わず、トラックはステージ裏の生バンドに演奏させるという徹底ぶり(生演奏ではあり得ない音圧と正確性だったので、普通にずっと同期だと思ってました。だとしたらこのバンド上手すぎる)。途中から現れたバックダンサーたちのときにメッセージングで、ときにコミカルな動きも、ステージ上の異様な空気感に一役買っていました。背景に使われていた黒人の肖像画(Henry Taylorという画家の作品だそう)はどこかメランコリックで、世界的スターでありながら、マイノリティのコミュニティを背負うラッパーとしての側面も感じさせました。

ラップについてはさすがというか、ヒップホップにあまり明るくない私でも分かるレベルの圧巻の実力。緩急の付け方、発音の明瞭さ、語気の強さなど、マイク一つでラップする中にいくつもの次元が存在し、その中で自由自在に言葉を繰っていることがわかる。「言葉で表現する」ということのなんたるかを分からせられるステージでした。個人的には "Bitch, Don't Kill My Vibe"が聴けたのがよかったです。

比べるのも変ですが、他のメンバーやたくさんの機材とともにステージに上がるタイプのアクトと比べると、やっぱり圧倒的に存在の圧力が違う。舞台芸術のように極めて洗練されて、それでいてヒップホップのストーリー性をも担保するステージングも、ラップの言葉だけでスタジアムを独占する技術も、すべてが圧巻。興奮と畏怖が表裏一体で同居する、衝撃のライブでした。リアムとは完全に別ベクトルで「すごい人間」を見ることができました。

その他所感

というわけで、音楽的には非常に良いものを見ることができた2日間でした。ただ、個人的に大きな反省点としては、体力的に厳しい戦いを強いられる中、半ば戦略的撤退のような形で観るアクトを絞ったがために、ラインナップがかなりロック系に偏ってしまったことが挙げられます。全部観てたら死んでいたとはいえ、結局「地元最高❗️」してしまったのは我ながら大変遺憾です。SHYGIRLとかHolly HumberstoneとかFLOとかほんと観たかったんですよ。

こうなってくるとどうしても、いやなんのためのフェスやねん、という気持ちが去来する。シビアな体調管理との兼ね合いで見たいものも見られなかったり、水分補給を優先せざるを得なくてお酒もロクに飲めないのって、なんかあまり楽しいとは言えないなあというのが正直な感想です。おまけに、今回は無事コロナにも感染して結構大変な症状になったので、いいもの見られたおかげでギリギリプラスの思い出になってはいるけど、それを除けば普通に散々なイベントでした。ソニマニから全参加してる人ももちろんいるので、こちらの体力不足や計画不足といえばそれまでなんですが(そこまでしなきゃいけなかったかな、、、という気持ちもあり)。

そんなところで、来年以降の夏フェスは、ちょっとどうしようかな〜という感じです。20代半ばで情けない気持ちもなくはないけど、無理なものは無理で仕方がない。健康に勝るライブなんて冷静に考えてそんなにはない。
少なくとも、もう全参加は渋いし、昼のマリンステージに何かを観に行くのもよっぽどのことがない限りやめておくと思います。今年レベルのヘッドライナーなら迷わず通し券買って観に行くけど、毎年そうとも限らないだろうし……。

おわりに

以上、サマソニ2023の感想でした。まとめると、「音楽的には素晴らしい、でも身体的にはかなりつらい、後者がなければ前者ももっと楽しめた」といったところです。まあでも、散々な目には遭ったけど、特に2日目のリアム〜ケンドリックでは真面目に人生の1,2位のライブを観ることができたと思うので、行ってよかったなという気持ちには変わりありません。ただそのために支払った代償がデカすぎるという話。

去年行ったフジロックでも思ったことですが、日本にいながら世界のアーティストの百人百様に優れたパフォーマンスを観ることができるのはやはり非常に意義のあることだと思うので、どうにか無理のない形で存続してほしいと願います。特にサマソニは、フジロックと違って比較的気軽に参加できるからこそ、いい意味で大衆的に開かれた文化を形成してきたイメージがあるので、このまま過酷な環境にあの手この手で適応できる人たちだけを残してハードルを上げてしまうのはあまりにもったいない。何かしらのアクションを期待しつつ、来年の発表を楽しみに待ちたいと思います。


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