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島本理生さんと可能世界が紡ぐ生き方


こんなに四六時中、恋愛文学小説に夢中になるのは初めてなのではないだろうか。

登場人物が男性に翻弄されるパターンが多くて、その男性の特徴が狡くて、優柔不断で、でも男を感じさせるくらい情熱的で。

そして、正しさを追求しようとするが、自分の生き方を探求することの大切さを知る描写が繊細に映し出されている。

私たちの現代社会は息苦しいほどに固定観念で成立しているとつくづくと思う。そんな行き場のない迷路の世界で路頭に迷う登場人物たち。その彼女たちが、恋する男性たちはいわば駆け込み寺のように私は視えている。

しかしながら、著者自身は決して幸せとは何か、愛とは何かを明示せず、彼女の論理を展開することもない。読者に問いかける余白を作っているからこそ、読者の感情移入を促している効果がある。加えて、誠実に生きることと正しく生きることの違いを教えてくれている一面もある。世間の言う正しさに抗うような流れも多々描写されている。
そのためか、恋する男性たちから離れる結末、結ばれる結末が混在し、どちらの選択肢を選んでも、切なさと応援する気持ちが複雑に絡み合った感情が読み終えた後、沸き起こるのである。

では、彼女が隠しているメッセージはなんなのか。
さまざまな結末が予測される展開がこの世の世界とは予測不可能な出来事で詰まっていて、可能世界でできていることを教えてくれている。
つまり、可能な選択肢がある限り、生きる方法も多種多様で、その選択肢は貴方に決める権利があると伝えたいのかもしれない。

もう少し、可能世界について。言語学では可能世界をモダリティと呼ぶ。この理論は、私が住む現実世界とは少し似ていて、少し微妙に異なる世界のこと言う。ここでは可能性と必然性の両方が存在している。この可能世界が存在する限り、未来にはさまざまな可能性が起きることを提唱している。

このモダリティと島本理生さんの世界観が何か通づるものを私は感じざるおえない。
それは、固定観念に沿えなくて嘆いてしまうことから逃げずにさまざまな可能性を信じてみる勇気を持つことの大切さのような気がする。
(余談だが、私も諦めかけた片思いに焦りを感じながら様ざまな結末の可能性を想像したら、実ることを果たした事がある。モダーリティの力恐るべし。)

最後に
私は心がこんなに悦び、枯れ苦しむものなのかと彼女の物語の展開・結末を読みながら実感することが多く、現実世界で誰かを想い恋い慕う事がどれほど、不安定で想像を絶するほど異物を摂取するような行為であることを身に沁みて感じた。

なぜ、誰かを好きになるのか、翻弄されうるのか、やはり言語化不可能な疑問ではあるが、恋は確かに私が生きている原動力の一部になっていることは確かであることは間違いない。

生きるーそれは命が呼吸すること

命が呼吸しながら、何者なのか分からないその人の思想を受け入れたいと叫び続けることを人間は命ある限り、生涯繰り返すことはどんな世界でも真といえるに違いない。

#読書 #小説 #島本理生 #恋愛文学 #可能世界

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