01 はじめに
あなたは入院が怖いですか?
この質問に「まったく怖くない」と答えられる人は、そう多くないと思います。看護師の私でさえ自分が入院したときには、仕事が続けられなくなり、将来が閉ざされるのではないかという怖さを味わいました。でもこれだけは自信をもって言えます。
「入院にまつわる不安や恐怖を和らげる方法はあります!」
日本人は、生涯のあいだで10回くらい入院します。これは、患者調査の概況(厚生労働省、平成26年)のデータなどから計算できます。ところが、現場で入院する患者さんを見ると、何度もくり返し訪れる大イベントであるにもかかわらず、「十分な備え」ができないままに入院しているケースが多いと感じます。その結果、必要以上に病気が怖くなったり、入院が長引いてしまったり、治療の効果が半減したりすることも少なくありません。
たとえば、膝の軟骨がすり減ってしまい、関節そのものを人工の関節に取り替える手術があります。とても残念な事に、術後に膝が思ったように曲がらなくなってしまうことがめずらしくありません。膝の痛みで日常生活が不便になり、意を決して手術をしたのに、膝が曲がらずに自転車に乗ることも出来なくなってしまうのです。
これは「痛いからやらない」「手術したばかりだからやらない」「眠いからやらない」などの理由でリハビリを行わない人に多く起きます。我々も必死で励まし、あの手この手で説得するのですが、彼らの意思は固くたいていは徒労に終わります。
少しでも「そんなこと言ったって、手術したばかりで痛いんだから休みたいと思って当然じゃないか」と思った方は、この本を最後まで読めば必ず何かが得られると思います。
今回の膝が曲がらなくなった例では、
・医療者とのコミュニケーションの準備ができていない
・病気や治療とつき合う心の準備ができていない
・必要な知識を得ておくという準備ができていない
という原因が考えられます。
「手術をするだけでは治らず、そのあとのリハビリも非常に大切です」「手術後は痛いかもしれませんが、痛み止めを使ってリハビリをします」という話はくり返しされます。それでも、手術が近かったり、入院生活に不慣れだったりすることによって、上に挙げた3つの準備が十分にできていないのだと思います。
医療者と落ち着いて話すことができず、治療に向けての心の準備が整わず、我々の話の内容をうまく受け取ることができず、知識を得ておくという準備が不足している。そのような状態では「リハビリをやりましょう」「薬を飲みましょう」とやることを押し付けられているように感じて、入院生活が苦痛になってしまいます。
聞いたことが理解できていれば、リハビリをやるかどうかで悩むことはなく、痛ければ痛み止めを飲むなどの工夫ができるはずです。
私は患者さんを見るたびに感じるのは、
「入院する前や病気になる前に戻って余裕をもっていろいろ伝えられたらいいのに。そうすれば不安や苦しみが最小限で済むのに」
ということです。
その思いが確信に変わったのは、私自身が入院を経験したときです。そのときに、看護師ならではの知識や経験のおかげで、それほど思い悩むこともなく長い入院生活を乗り越えられたのです。それどころか、入院をとおして自分を成長させることすらできたと思っています。
このような私の看護師の経験や、患者としての経験から得た事この本を読むだけで入院にまつわる不安を解消でき、安心が得られる。そんな一冊を書いていきたいと思います。
そして、病気になったからといって落ち込むのではなく、入院を経験してもなおあなたらしく生きてくための助けとなる、あなたにとっての入院のバイブルになればと思ってます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?