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はじまり 第一話






ここはフランス、パリ。

おしゃれなパリジェンヌが行き交う町の、とあるケーキ屋さんでパティシエールとして働く日本人女性がいた。その名はルー。

彼女は自分の仕事に誇りを持っていたが、その笑顔はどことなく悲しげだった。

風も冷たくなってきた秋のパリ。仕事帰りのルーはコートの襟を立て、涙を流しながら歩いていた。

彼女の頬には40代という年齢とは似つかわしくないシミがたくさんあり、髪の毛はベリーショートすぎるベリショだ。そして、左胸の膨らみも無い。

そう、ルーは乳がん患者だったのだ。

そこに突然、

「あのさぁ。

『なぜ私が乳がんに?何か悪いことしたのかなぁ?どうして大切な髪の毛も無くならなければならなかったの?シミもお薬の副作用の色素沈着で多くなっちゃったし、涙も止まらないし、、、街ゆく普通の人と私は違うんだ』

なぁんて、思ってたりする?」

と、怪しい女性が、いきなり声をかけてきた。

彼女は、ピンクのレオタード姿に猫耳、更にパーティーで使う変なハートのメガネをかけていた。
とんでもなく怪しい。

あまりに怪しい女性に若干引き気味のルー。
しかし、(なぜこの変な女性に私の気持ちが分かるのかな?)と、いぶかしげな眼差しでこの女を見ていた。

怪しい女は、そんなルーに
「Non Non Non! 怪しまないで!私の名前はCAT。
あなたの涙、奪い去ります!」
と変なテンションで、意味不明なことを言ったと思ったら、いきなりルーの写真を撮り、サッサッサと似顔絵を作成したのだ。

その似顔絵は、顔のシミも全部除去、シワも少なめ、髪も抗がん剤で抜け落ちる前のお気に入りのロングのヘアーが再現されていた。

CATはその似顔絵を直接手渡せばいいのに、なぜか、どこで手に入れたのか炉端焼きの板みたいなものの上に乗せて、プルプルしながらルーに渡した。

その似顔絵を受け取ったルー。似顔絵を見るなり、泣きながら笑顔になった。
嬉し涙を流しながら、ルーは「はっ!」とあることに気が付く。

「CATと名乗るこの女性…レオタードのシルエットから察するに左胸だけない様子だし、きっと私と同じ、乳がん罹患者(りかんしゃ)に違いないわ!」

勇気を出して、ルーはたずねた。
「あのー、もしかして、乳がん罹患者ですか?もしそうなら、私も誰かの為、同じ乳がんで悩んでる人を助けたいです!がんになる前からパティシエールとして働いてました。お菓子作り、裁縫、ネイルなら得意です!」

CATは、微笑んでこう言った。
「丁度、メンバーを探していたの。私と一緒に、世界中の乳がんで悩む女性を救ってみない?」

CATの目標は、世の中の乳がんで悩む人を助けることだった。世の中にはたくさんの乳がん患者がいる。CATは「もっともっと助けたいのに1人じゃどうしようもない…」と悩んでいたのだ。

2人はすぐに意気投合した。

ダジャレ大好きなルーは言った。
「あのー、私、グループの名前、いいアイディアを思いついたんですけど!その名も、『乳がんカジャー!』」
自信満々にルーは鼻を膨らましている。

「ふんっ(微笑)、患者とカンジャーね。ダジャレだけど、いいかもね。それ採用!私たちは主婦でもあるから、スーパー主婦戦隊『乳がんカンジャー』ってのはどう?」
とCATも、、うまいこと言えたとドヤ顔。 

「スーパー主婦戦隊……うぅーんっ…(汗)」と、少し困惑しながらもルーも賛成した。

こうして、2023年夏、ここにスーパー主婦戦隊「乳がんカンジャー」が誕生することとなったのだ。

ちなみに、CATが炉端焼きで使う板みたいなものでルーに似顔絵を渡したのは、世界はコロナと共存の時代になりつつあったものの、ソーシャルディスタンスを保つためだった。


CAT
似顔絵が得意で、人を笑わせるのが好き、たまにやりすぎちゃうが憎めない、このチームのリーダーの、キャット

ルー
現役パティシエールで、おしゃれ、ネイル・裁縫得意で、ダジャレ大好き、

この物語は、
読んだ人が喜んだり笑ってくれるような
「真面目にふざける」ことを発信する事をモットーに、乳がんになった人を次々に元気にしていく、
スーパー主婦戦隊「乳がんカンジャー」のストーリーである。

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