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211223 2021年にぐっと来た音楽

0.はじめに

早いもので2021年は終幕を迎えようとしております。
今年はどんな一年だったか。
ざっと思い出せることもあれば、靄がかりうろ覚えなことも多々あります。
とにかく私は牛歩の歩みで、過行く時間を一秒一秒楽しめたのではないかと思います。
そう考えると、結構長い、ゆっくりした一年だったかもしれません。

そんな私を今年も生き永らえさせてくれたのは、日本国の盤石な社会福祉制度を土台に、音楽、アニメ、映画やお笑いといったエンターテイメントの数々でした。

遊民的生活の上文字通り晴耕雨読の一年、例年よりも音楽を楽しめた感もあり、平生同じ音楽ばかり聴きがちな私ですが、今年ぐっと来た音楽を少しご紹介させていただければ。
レビュー的な文章はあくまで私の私見ですので、悪しからず。


1."特にない" 藤井風

21年私のapplemusic(itunes)で一番再生されていたのがこの曲でした。
20年秋頃、不意打ちをくらい心にグサグサと痛恨の一撃を入れてくれた彼に今年も大変お世話になりました。
シングルも何作か出た中で、この音が私には中毒的な心地よさを与えてくれました。
荒い録音のピアノから導入され、HIPHOP的なドラムがビートを出していく。
上りも下がりもしない、淡々とした曲構成がどんどん癖になっていきます。
彼の曲の多くはjust two of us進行等のjazz的コードワークですが、この曲はⅣ♯φ(Ⅳ△7かも)からⅠ△7まで半音進行で降りていく所謂歌モノエンディング進行(勝手にそう呼んでます)になっています。
(ex. I'm beggining to see the light , etc…)
この入り方する曲私は大好きなんですけど、エモくなりすぎてまう感があり、演者のカラーをある意味出しにくい気もします。
この曲はというとそうはならず、切なくも楽観的で明るい藤井風の世界観を作り出してくれています。
来年もめちゃくちゃ聞くことになりそうです。

2."HOT WIND BLOWS" Tyler, The Creator

今年一番聞いたHIPHOPはこのアルバムです。
特にこの曲を推したい理由は、元ネタとのセッション感、曲へのリスペクト(理解度)が半端じゃないと感じた為です。
この曲は所謂サンプリングで作られたビートなのですが、この手法ではどうしても展開が作りにくいところがあると私は思います。
ループ音楽の限界のようなものと私は考えます。もちろんそこが良いのではあるのですが。
それに対しこの曲では元ネタをそのまんま使うことで、曲の展開、ダイナミクスを作りこむ手法をとっているようです。
この手のまんま使いビートにラップを載せていくとどうしてもちぐはぐ感が出てしまうのではというところ、見事に乗り切っています。
この曲では元ネタのフルートソロをほぼそのまま使っているのですが、見事にラップと調和させていて、生バンドと実際に一発録音でやってるのかと思ったほどでした。
Kendrick Lamarの"For Free?"ではKamasi Washintonバンドの演奏するマイナーブルース上でラップするというのをやってますが、これのイメージでした。

元ネタも調べたらすぐ出てきたので、お時間あれば聞き比べていただければ。
元ネタはこのサイトで見つけました。ここめちゃくちゃおもしろそう。
今年感じたことですが、トラックメイカーの能力として一番必要なのは音楽の知識なのかもしれません。いいビートを組むにはいい曲を知っているのが一番の近道かも。
DJさんからトラックメイカーに自然になられる方の地肩のようなものを感じます。


3."ON THE SUNNY SIDE OF THE STREET"  Bar Colombia, Sant Andreu, Joan Chamorro, Andrea Motis, Sept. 2019

3つ目はyoutubeでサジェストされたこの動画でした。
後から知ることになるのですが、真ん中でトランペットを吹く女性はAndrea Motisというスペインのトランぺッターで、日本にも来日したことのある売り出し中の若手ミュージシャンだそうです。リーダー作も素晴らしかったです。
この動画のストロングポイントはとにかくジャムセッションの根源的楽しさ、喜びを見せてくれるところです。
メンバーのなんともリラックスした雰囲気。若手からベテランまで入り混じったメンバー構成。自然に沸き立つオーディエンス。バックテーマのわかるやつみんな歌ってくれ感。
私がジャズから教えてもらったことはこれなんだなぁとなりました。
音を楽しむのにスーパーテクニックや挑戦的リハーモナイズなんていらねえよというやつです。(それはそれで大好きではありますよ勿論)
ジャズ研に入っていて、ジャズの楽しさを感じられた期間があって本当によかったなぁと思わせてもらいました。
これもきっかけとなり、今年はジャムセッションにも多数参加させてもらい、音楽仲間が増えた一年でした。

4."Love Is The Message" Yussef Dayes X Alfa Mist ft.Mansur Brown & Rocco Palladino

これに関してはこの曲単体でぐっと来たというよりは、UKブラックミュージックシーンが熱すぎるという気づきを得たので、その総まとめ的に選びました。
きっかけとしては数年前知ったTom Misch経由でまずAlfa mistというやばいキーボーディストを知り、久々にお気に入りになりそうなドラマーYusef Dayesを見つけ、Yusefのライブ盤のベーシストぱねぇ、、ってピノパラディーノの息子!?のように連鎖的に知ったミュージシャンが全員UKシーンだったのでした。
これまであまり興味なかった領域なので、まだまだこれから知っていきたいという段階なのですが、特にこの曲を聴いて得たのが「まだコンテンポラリージャズって先があったんだ」という発見でした。
カート以降のジャズって絞りつくされたのかというくらい、私の中では代わり映えしてなかったのですが、単に私が追いついていなかっただけで、脈々と色んな場所で枝葉が広がり果実をもたらしていたんですね。
物事を決めつけるのはよくないと心底戒めるきっかけになりました。
話は逸れましたが、あくまでUKクラブジャズの味は残しつつ、フォーマット的にはコンテンポラリージャズっぽいなというこの方々の音楽が、次に私が目指したい世界観になりつつあります。
本当にまだまだ聞きかじってる段階なので、もっといろいろ聞いていこうと思います。

5.最後に

今年特にぐっと来た音楽は以上になります。
ここに書きはしなかったけどだいぶぐっと来たやつでいうと、今まで聞いてこなかったモザイク以降のブレイキーだったり、ビョークだったり、ジョーヘンだったり。
最初にも書きましたが、時間があるって素晴らしいですね、こんなに音楽にまつわる気づきを得ました。
来年はECM系を改めていくつか聞いてみようかなとも思ったり、ブルーノートの知らない名盤を攻めていったりもいいなと思ったりしています。

年末年始は図書館で借りてきた大江千里さんのNYでの生活の本を読んでいこうと思っています。
ぺらっとめくって、うおおジャズっていいなぁやっぱりとなったので楽しみです。



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