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「アーバンスケッチ」がしたい…のかもしれない


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 私は、田舎で育った。
 生まれてしばらくは青森県寄りの秋田の小さなまちで、
 幼少の頃は宮城県の三陸の海の街で、
 子供時代は、宮城の内陸の田んぼだらけの街で、育った。
 中規模な都市に暮らしたのは、学生時代からだ。

自然がの多い田舎には、ビルなんてない。せいぜい自治体庁舎が四階建くらい。

 自然な豊かなところにずっと住んでいたのもあって若い頃は「風景画を描く意味」が全然わからなかった。
 「豊かな自然」なんて珍しくもなんともない。時間をとって描くほどのものではない。それにどう考えても、自然がいいに決まっている。自然は自然のままが良いのであって、人間如きに表現できるわけがない、などど思っていたものだ。
 だから、学生の頃、花や静物を写生はしても、風景を描く、という気持ちには全然ならなかった。


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しかし、私の気分に変化を与えたのは、やはり旅であった。

就職して2年目、手術の傷も落ち着いたからと、女友達と九州に旅行に出かけた。伊万里や有田を訪ねる旅だった。
今も使っているこれらの食器は、色褪せずに今も美しい。

旅をすると絵が描きたくなる。

実際自分も「旅」の絵を描きまとめるようになったのはこの時からだった。それまで「人間如きに自然など描ける訳がない」と心底思っていた風景が「描きたくなった」のである。

しかしヘタクソ極まりない。

旅の絵というのは、画材との旅でもある。

旅行時に絵を描くというのは「重すぎない絵の具」「水換えが簡単な筆」「適度に乾く紙」「描く速さ」などがうまく噛み合わないといけない。軽量化を目指すと、パレットを小型化しすぎて、混色ができない。彩色時に色がが薄くなりすぎてしまう。
逆にウエットオンウエット(水をたっぷり使ってにじみを活かしながら描いていく方法)のようなことをすると、乾燥に時間がかかるために次の目的地には行く時に扱いが難しいし、屋外では湿度のコントロールがなかなか厄介だ。(太陽光が強いところではあっという間に乾くこともあるし)結局毎回トライアンドエラーでやるしかない。


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先に述べた「自然の風景を素敵に描く」となると、やはりウエットオンウエットでじっくり描いたほうがいいと思っている。イーゼル持参でコットンペーパーで描けたら楽しかろう。しかし旅となるとやはり忙しいし、次々に日の向きが変わる。そういう場合は半日は時間を取りたい。

  色々描いてきて実感したのは、自然のままの風景よりも、建物や構造物の方がずっと簡単だということだ。その中で「アーバンスケッチ」というジャンルについて知ったのが10年くらい前だろうか。2014年にこの本を買った。(今円安でなかなかのお値段になっているが)


The Art of Urban Sketching: Drawing On Location Around The World

 人間が作ったものというのは案外考えやすい。法則性がはっきりしている。
例えば柱や窓枠などは、大体脳内で3面図に変換するから捉えやすい。箱を描いているのと変わらないので落ち着いて観察すれば意外と描ける。
水彩に限らず、ペンや色鉛筆やマーカーで遊べるのがいい。

 田舎に育った私が、アーバンとは・・・と自らツッコミを入れてしまうのだけれど、旅や生活を絵にするという意味では多分このジャンルが私にとってフィットするのかなという気がしている。


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