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パズル沼の住民が謎解き沼に入った話

本記事はペンシルパズル Advent Calendar 2021/3日目の記事です。

こんばんは、にょろっぴぃです。
今日からパズルボスラッシュ3がはじまりました。対戦よろしくお願いします。でも、本記事ではパズルではなく、謎解きの話をします。

twitterでご存じの方もいるかもしれませんが、最近、謎解きにハマっています。長い間パズラーを名乗っていましたが,今年で言えば、パズルと変わらないぐらい,あるいはそれ以上,謎も解いています。
ということで,本記事では,パズラー目線で見た,謎解きの話をしてみようと思います。去年のペンパアドベントの記事にあった,きよしさんの記事「謎クラから見たペンパ」の逆バージョンになります。パズルと謎解きの比較については、同記事を見てください。

パズル歴と謎解き歴


最初に、簡単に私のパズル歴と謎解き歴を紹介します。

〇パズル
・始めたのは幼少期から
・2001年、ナンローでニコリデビュー。以後、細々と20年ぐらい作家を継続中。数理系・言葉系問わず、大体何でも作る
・ニコリ以外の活動では、同人誌トケタ?、日本パズル連盟、パズルボスラッシュ、カジュアル早解き大会(~2021年10月)など
・2012年頃より競技パズルを開始。2014年〜2019年にかけてWPC(世界パズル選手権)日本代表5回、WSC(世界数独選手権)日本代表2回。WPC最高世界9位、PGP最高世界5位

〇謎解き
・公演の初参加は2014年「海底監獄インペルダウンからの脱出(SCRAP)」。以後、年1程度。あと、地下謎への招待状はほぼ毎年やっていました。
・本格的に謎解きの世界に入ったのは2019年の秋、世界大会の帰国後から。11月に開催されたナゾガクや,タンブルウィードの公演に行くように。
・現在は月2回ぐらいのペースで公演に参加。オンラインを含め,今までで合計50回程度。ソロ参加と2人以上で参加がほぼ半々。
・持ち帰り謎、Web謎も同様で,本格的に解き出したのは2019年末から。今まで解いたのは50個〜100個程度。
・作家としての活動はほとんどなかったが、2021年夏にSCRAP所属の「パズル作家」に(業務委託)。以後、不定期で持ち帰り謎の制作協力。
・謎検の受験歴はないが、おそらく2級程度。解神の予選通過はなし。


パズル作家としては広く浅くで、例えばニコリ作家でいえば私よりも活躍している作家はたくさんいる一方で、活動の広さで言えばかなり広い方だと思います。また、パズルの解き手としてはランカーレベルだと思いますが、今でも作家としての活動がメインと自負しています。

一方の謎解きは、いわゆる謎クラから見るとまだまだライト層ですが、パズラーの中ではかなりやってる方だと思います。解く能力はパズルに比べると大分落ちますが、ある程度は解けるレベルです。パズル謎を解く能力だけ突出しているため,公演だと何かとパズル謎を引き取りがちです。

謎解きをやるようになったきっかけはいくつかあるのですが,1つには「パズル以外のことが何かやりたくなった」が大きかったと思います。上記のように,基本的に広く浅くで,作る解く問わず一通りのことはやってしまった感があったのと,特に2018年9月に,nikoli.comが終了したことが大きかったと思います。
競技パズルもそろそろかなと思っていたタイミングで、パズル以外のこともやりたいと思った時に、ニコリなどでも多少は載っていたり(ちなみに、最新号の176号は謎解き特集です)、パズラーで謎解きもする人がいたり(ニチョ謎,解神など),何かと触れる機会が多かった謎解きは、入りやすかったのだろうと思います。

2019年にははじめようと思っていて、年明け早々解神に行ってみたりしたのですが、予想に反してWPCのA代表を取ってしまい,競技パズルをしっかりとやらないといけなくなったりがあり、本格的に始めたのは世界大会が終わってからでした。
もっとも、これはきっかけの話で、ハマった理由は別の話です。特に公演については、パズルとはあまり関係がない理由が大きいと思っていますが、詳細は後述します。

謎解き沼に入ってみた


そんな感じで謎解きの世界に入ってみたのですが、まず思ったのが「広すぎて何があるのかが分からない」です。

SCRAPとニチョ謎以外だと、ponponさんとゲムマで周遊だけ知っていたよだかのレコード、ことうさん経由で名前だけ知っていたタンブルウィード、謎解き王2019で知っていた零狐春といった具合で、団体が多すぎる上に、そもそもどこで何をやっているのか、誰がやっているのか、何の公演に行ったら良いのかも全く分からない状態です。
ペンシルパズルの世界であれば、とりあえずニコリとパズスクと早解き大会ぐらいを押さえておけばどうにかなると思いますが、謎解きの世界はパズルとは規模感が違うようです。もっとも、上記の通り、ペンシルパズルについては、私がパズル沼の住民だからそう思っているだけで、外から見ると何を解いたら良いのかよく分からない、という人もいるのだと思います。

それから約2年が経って、謎クラというほどではないですが、謎解きの世界も大分分かるようになりました。
謎解きの世界は大きく「公演/持ち帰り謎・Web謎」の2つに分かれ、同じ謎解きと言ってもこれらは全く別のものだと思っています。それぞれに分けて紹介します。

持ち帰り謎・Web謎


持ち帰り謎・Web謎と言っても色々あり、

①twitterなどで出題される、1枚謎 (例)暇謎、たつなみパズル
②オンラインで解けるWeb謎・LINE謎 (例)謎解き王トーナメント
③紙を中心とした持ち帰り謎 (例)クリアファイル謎
④書籍

ぐらいには分かれると思います。ペンシルパズルに比べると④が少なく、②③が多めです。

①1枚謎
内容が違うだけで、ペンシルパズルでも日々流れてくる投稿問題と、あまり違いはありません。特にうりよしきばさんやらまぬじゃんさんに至っては、ほとんどパズルそのものです。デザインの要素があることと、パズルよりもバラエティが広いことが違いでしょうか。
ちょっとした隙間時間にやるのに最適で、パズラーでも何か解いたことがある人がほとんどではと思います。

④書籍
パズラーにはおなじみの媒体で、パズルコーナーのすぐ近くに置いてある本屋も多いです。一枚謎の本と、SCRAPが出している本が多いです。1000~2000円の本が多いので、パズルに比べると若干高めですが、持ち帰り謎に比べると購入しやすいです。何より、事前に内容を見れるのが大きいです。
パズラーが入りやすいのはSCRAPの「究極のクロスワード本」と、最近発売された「イラスト謎解きパズル」あたりでしょうか。入手難易度が少し高いですが、Xevsさんの「謎解きパズルドリル」もおすすめです。いずれもほとんどパズル本です。また、最近出た「美しいナゾトキ」は、パズルにはない切り口の本で、新しい世界が見れる本だと思います。

②Web謎・LINE謎
パズルで言えば、今日から始まる(!)パズルボスラッシュ、Instructionless Gridにあたるものですが(パズスクは単問なので①扱いとしています)、10分ぐらいで解けるLINE謎から大規模イベントまで、パズルに比べるとかなりの数があります。基本的に無料なので気軽に参加しやすく、こちらも何かしら解いたことがある方が多いのではと思います。
Webの性質上からか、後述の持ち帰り謎に比べるとペンシルパズルはほとんど見ません(SCRAP100万謎2019はゴリゴリのパズルですが、印刷が想定されています)。謎解き王トーナメント2019準決勝「Golden Ticket」が程よい難易度で超面白いので、全人類解いて下さい。あと、学祭やストーリー物が好きな人は「僕たちは、学園祭の夢を見る。(きりんぐたいむに象の群れ)」も強くおススメします。コロナ禍が終わる前に解いた方がいいです。

③持ち帰り謎
残る③ですが、ペンシルパズルではほとんどない分野、かつ謎解きではかなり大きな分野となっています。業者制作から同人的なものまであります。
1時間ぐらいで解けるものが多く、大体1000円~2000円ぐらいです。事前に内容は見れないので、合う合わないがかなりあります。

謎解きを始めた頃に思ったのですが、正直「高い」と思いました。
ペンシルパズルの場合、1000円ぐらいで本を買えば、大きくハズレることはなく、かなりの時間を楽しめます。私も関わっている同人誌「トケタ」なら数十時間は遊べて1300円です。パズルが好きな人からすると、これらと戦うのはあまりにも分が悪い戦いです(ちなみに、最近はパズルもオンラインから入る人が増え、書籍は入手が面倒臭い・高いと思う人がいるそうです…。ソシャゲと違って重課金勢がいないので、それぐらいは落として欲しい…。)。

若干失礼な話で恐縮ですが、個人的な話をすると、最初に買った持ち帰り謎はタンブルウィードの「beautiful harmony」(1300円、想定時間45分~90分)という持ち帰り謎で、ゲムマで「パズルが好きな人へのおススメ」を聞いて購入しました。
パズル度が高く、おススメ自体は間違えていなかったのですが、確か30分ぐらいで終わってしまった気がします。特に後半がパズル謎だったのですが、私には正直易しすぎで、「えっ、これでもう終わり⁉」となったのを覚えています。
このまま持ち帰り謎には縁がなく終わりかけるところでしたが、その後も公演に行く度に何か1つ買うようにしたおかげで、素晴らしい作品にも色々出会うことが出来ました。ただ、後述の公演(1回3000~4000円)では値段が高いと思うことはまずないのに対し(値段で躊躇ったのはこの前のIMMORTAL(7700円)が初めてだった気がします)、持ち帰り謎は未だに割高感が拭えません…(*1)。これはパズラーならではの価値観なのかもしれません。

ちなみに、上記のbeautiful harmonyをはじめ、持ち帰り謎ではパズルもかなり出ます。紙ベースなのと、時間を気にせず解けるので、公演に比べるとパズルと高相性です。拙作「Puzzle Fusion」(1200円、サブスク)も、ほぼパズルに特化した内容で、その分好き嫌いがはっきり分かれる内容だろうと思います。「パズバコ3」「Mushup Network」「ゴショク謎」あたりは大部分がパズルの謎です。

結局、パズルや無料の1枚謎と何が違うのかという点が問題になるのですが、単純に制作にかかっている時間が、文字通り桁違いなのだろうと思います。ただパズルや1枚謎を出すのではなく、全体として何らかのギミックやストーリーがあって、その中に謎やパズルを組み込んでいく感じです。
単問のペンシルパズルだと中々無いですが、Webのところで触れたパズルボスラッシュとInstructionless Gridが比較的近いイメージでしょうか。ということでパズラーでも「魔王シリーズ」でも作って、世に魔王をばらまきましょう。魔王1体1000円ぐらいで捌けると思います。

公演の会場で買うことが多いので、全体的に入手難易度がやや高めです。公演以外ではパズルにおけるトリトにあたるような「ヒラメカ」という店舗があり,ある程度の持ち帰り謎を購入可能です。
基本的に高難度ですが、パズラーだと入りやすいのは「ニチョ謎」シリーズだと思います。値段の点では学生団体だからか全体的に安いAnother Visionがオススメで、特に「Xワード」はパズル度が高めです。あとはちょっと高めですが、「XI」(タンブルウィード、2200円)は全人類解いて下さい。「パズバコ3」「スイート・ノベンバー・ブルース」は評判通りの素晴らしい謎なのですが,入手難易度が高めです。

公演


いわゆる「リアル脱出ゲーム」をはじめとするイベントで、会場で4人ぐらいのチームを組んで、謎などを解くイベントです。また、コロナ禍によって、オンライン版のイベントも増えました。

公演や団体によって異なりますが、概ね小謎→中謎→大謎のような構成になっていて、謎に詰まったチームでも大謎までは到達できるように、フォローシステムがあることが多いです。公演は大体60分程度で、時間制限はタイトな設定になっています。

公演になぜ行くのかは、人によっても異なると思いますが、私の場合は、単純に謎が解きたいからというよりは、何らかの体験がしたくて公演にハマったのだと思っています。上記の持ち帰り謎・Web謎が第一には「解く」ことが目的となっていて、パズルとパラレルな存在であるのに対し、公演の場合は、謎はあくまで媒体であって、その先の体験が主目的と感じることも少なくありません。
謎解きの世界に入る前、一時期人狼にかなりハマっていた時期があって、オフライン人狼にも行っていたのですが、パズルよりはオフライン人狼の方が近いと思いますし(フォーマットが決まっている点など、謎解きとは大分違う点もあると思います)、演劇・ミュージカルの世界に通じるものがあると思っています。
最近行った特に好きな公演だと、「原点」(よだかのレコード)、「スーパーペーパーキングダムからの脱出」(SCRAP)あたりが該当します。前者は大型公演ならではのパーティー感が、後者は世界観とアナログ感満載の謎が好きでした。後者は今でもやっているので、世界観が合うなら全人類行きましょう。

もちろん、謎自体は解いていて楽しいので、純粋に謎の面白さで全力で殴ってくる公演(「Revolver」など。「原点」はこの要素もありました。)も好きです。競技パズル出身だからか、謎に対しては基本的に真剣勝負をしたい派です(逆に、持ち帰り謎は早解きはしたくありません)。


ペンシルパズルというと、どうしても1人で静かにやることが多いのですが、数は少ないものの、オフラインのリアルイベントとして行われるものがありました。国内ではJZC(図形パズル選手権)及びJPC(日本パズル選手権)、海外では上記のWSPC(世界数独・パズル選手権)が該当します(いずれも2020年・2021年は開催されていません)。
他のパズラー、特に日本代表に比べると、私はこのリアルイベントがとにかく好きでした。面白いパズルが解きたいからというよりも(もちろん、真剣勝負の楽しさもあります)、会場で生まれる熱気のようなものが好きだったからです。特に2019年の後半は,WPC,JPC,コミケと特に熱狂的なイベントが続き,パズルに対する燃え尽き症候群のような状態になっていました。そこにうまく入ってくれたのが,謎解き公演だったのだと思います。

ちなみに,最初は,何に行ったら良いか分からなかったことに加え,ソロで行くことのハードルの高さがありました。これを払拭してくれたのが,2019年夏に行った「ミュウツーの城からの脱出」(SCRAP)で,アニメ・マンガに疎い私が珍しく原作に詳しかったのと,チームに恵まれて「ソロで行っても大丈夫なんだな…」と思うきっかけになりました。あと,司会の亀田さんが凄かったのをよく覚えています(思わず帰ってから司会の方を調べました)。この時に初心者お断りのようなチームに入っていたら,謎解き沼に入っていなかったかもしれません。

〇公演におけるパズル

去年のきよしさんの記事にも一部つながるのですが,公演でも時々パズルが出題されます。特に,クロスワードは中謎でも良く見ます。一方,時間制限のある公演なこともあり,持ち帰り謎に比べると,ルールが複雑だったり難易度の高いパズルはあまり出題されません(いわゆる数理系のペンシルパズルは,持ち帰り謎ほど出ないようです)

ペンシルパズルそのものをテーマにした公演はほとんどなく,「スル?スル!パズル」(タンブルウィード)ぐらいしか記憶にありません(ペンシルパズルでないパズルも含むのであれば,パズルルームからの脱出(SCRAP)も該当すると思います)。
ただ,同公演もあくまでパズルをテーマとした謎解き公演であって,パズルを解くことそのものを目的とした公演ではありません(*2)。

去年の記事にもあった「いっぷす」「きさい」(XEOXY)あたりの,水瀬yazrow氏が制作に関わっている公演では,いわゆる小謎枠で,本格ペンシルパズルが出題されました。
パズルの使い方としては新機軸で,謎解き沼の住民をパズル沼に引き込むには有効だろうと思います。一方で,なぜパズルを解くのかという文脈が切れやすいことと,パズルを解きたくない人にはミスマッチになることが難点でしょうか(個人的には,ペンシルパズル謎は大体オーバーキルになるだけなのであまり満足度が上がらず,どちらかというとパズルが出ない公演の方が好きなのですが、特殊なケースだろうと思います。制作側の立場であれば,是非入れたいです)。

小謎としての使い方でも、テーマとしての使い方でも、謎解き公演におけるパズルは、まだまだ未開拓感があります。
最近の傾向として、特にSCRAPでは「謎解き」というよりも「体験」化が進んでいて、オーソドックスな謎の割合が減っているようです。一方で、タンブルウィードやXEOXYあたりでは、一部の公演で高難易度路線が強くなっています。

こうした流れの中に、パズルもうまく入れられないかな…と、いつかパズル公演を作ってみたいと思っています。パズルの場合、謎解き以上にどうしても参加者でのレベル差が出やすいので、そこをうまく補うシステムが必要不可欠だろうと思います。ルールが難しすぎなければ、現状のフォローシステムのような形でどうにか出来るのかもしれません。
個人的な体験として、世界大会の団体戦が、謎解き公演に通じるものがあると思っているのですが、こちらは前回の記事「世界大会団体戦の話」で詳しく取り上げたので、興味のある方は同記事も読んでみて下さい。

終わりに


本当はパズルと謎解きの比較とかも書こうと思っていたのですが、個人的な経験談を書いていたらあっという間に長文になってしまったので、ここら辺はまた別の機会に書こうと思います。パズルと謎解きは、共通点もあれば、全く違った点もあって、どちらにもそれぞれの良さがあると思います。

本記事は、ペンパアドベントの記事なので、謎クラよりもパズラーの読者の方が多いと思いますが、謎解き沼も、入るまでのハードルを越えればとても楽しく、そして深い世界です。良かったら一緒に、謎解き沼を覗いてみませんか?

(*1)タンブルオールスター(11990円)を「高くないですか…」と思いつつ,何だかんだ2年連続で買っています
(*2)ペンパ勢で固め,殺意マシマシで参加。でも90点でした。









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