見出し画像

謎解き沼に入ったパズル沼の住民から見たパズルの話

これはペンシルパズルI Advent Calendar 2022の6日目の記事です。

お久しぶりです。にょろっぴぃです。
パズラーの中ではかなり謎解き寄り、ということでパズラーから見た謎解きについて書いた去年に続いて、謎解きっぽい記事を書きます。

去年の時点ではまだ1作だけだったのですが(※1)、ありがたいことにその後、SCRAP「Mystery for You」(以下「MfY」)の高難易度謎の制作依頼を定期的にいただくようになり、およそ4か月に1回のペースで、今まで4作の制作協力をさせていただきました。現在5作目の制作中です。
元々が「パズル作家」で入ったことと、高難易度枠ということもあり、基本的には4作ともパズル成分がかなり強めです。
次第に目新しさが落ちてるのでは感があり、本当はもう少し幅広く作れた方がいいのかなとも思うのですが、一方で、得意分野を活かした方がいいだろうと思うと悩ましいところです。どちらかと言えば、パズル謎以外も色々作れるようになるというよりは、パズル謎で作れる幅を広げたい。

ということで、本記事ではMfYを作る時に考えていたことをはじめ、謎解きに出てくる(ペンシル)パズルの話をしようと思います。
なお、私はいわゆる持ち帰り謎しか制作にかかわったことがなく、公演については専ら参加者側なのですが、根本的な部分では共通する部分が多いと思いますので、以下では特に区別せずに書くことにします。

〇制作にかかわったMfY
(ネタバレはしませんが、若干内容に触れる部分もあるため、気になる方はこの項目は読み飛ばしてください。逆に、ネタバレ前提で気になることなどがあれば、個別でDM下さい)

・Puzzle Fusion
Puzzleが出てきて何かがFusionするらしい。
最初(で最後かもしれなかった)なので、(ペンシル)パズルの世界を広く紹介してみたい、というイメージでジャンルを選びました。他に比べるとペンシルパズルとしては既出ルール、かつ解き手の大多数が知らないだろうジャンルが多めで、ジャンルはyazrow謎っぽいかも。

・Infinity
何かInfinityに関する要素が出てくるらしい。
この中ではペンシルパズル要素は一番薄め。まず大謎のアイデアを作り、そこからパズルのルールを考えていったため、オリジナルルールが多い。大謎は某公演に影響されているらしい。

・POLYOMINO ZOO
ほぼポリオミノ。ここから2つはジャンル特化型。
ポリオミノ謎にすることを決める→大謎を決める→小謎を決める、というステップで作っていますが、謎解きに出てくるポリオミノは試行錯誤で解く問題が多いので、もっと色んなポリオミノが出来ないかと思ってジャンルを選んでいました。
コメントにも多かったけど、切り取り線の実装に感謝。一番実装が難しかった問題で別解が見つかって、修正が大変でした。全体の難易度はこの中では一番低いと思います。

・スケルトンパーティー
ほぼスケルトン。「究極のクロスワード本」みたいなイメージで作りました。スケルトンなら慣れている人が多いだろうということもあり、パズルとしての難しさでは、恐らくこの中で一番難しいと思います。


〇謎解きに出てくるパズルについて(総論)

ネタバレなしで書けるのはこれぐらい、ということで、ここからは謎解きに出てくるパズルと、ペンシルパズルの違いについて見てみましょう。

・ルール
謎解き、特に持ち帰り謎では自作を含め、色々なパズルが出ますが、ペンシルパズルとの最大の違いは、事前にルールを知っているかどうかだと思います。
ペンシルパズルでは、基本的にルール文が示されている上、全くの初心者でなければ、ルールは初見ではなく、そのルールは既に知っていて解くことが大半だと思います。また、いわゆる競技パズルでは、出題ジャンルについて、事前にインストラクションが出ます。知らないジャンルであれば、事前にそのジャンルを練習したりもできます。

これに対して、謎解きで登場するパズルは、公演・持ち帰り謎を問わず、基本的に事前に情報は開示されません。POLYOMINO ZOO、スケルトンパーティーはジャンル特化型なのでジャンルだけは公開されていますが、それでも具体的なルールはネタバレ禁止です。他にもクロスワード謎などはありますが、ジャンルが公開されているものも、全体ではかなり少数です。

これによって、パズルと謎解きでは、ルールが事前に公開されているか、その場で初見のルールであることを前提とするかの違いが生まれます。初見のルールである以上、そこまで複雑なルールは出せません。交差ありトーラス嘘つきスリザーリンクはもちろんのこと、ルールの多いへやわけやましゅでもかなりハードルは高くなります。まあ、公演でTapaやDoppelBlockが出たのは見たことありますが…(苦笑)
なお、パズルでも例外はあります。先日開催された「日本パズル選手権(JPC)」では、ごく一部を除き、事前にルールは公開されず、また、オリジナルルールの問題も数多く出ます。内容はほぼパズルですが、この点ではかなり謎解き寄りのイベントです。また、Instruction Gridやパズルボスラッシュなどに登場するインストラクションレスも、その場で初見のルールを考える点で、謎解きに近いと思います(どちらもイベントの性質上、難易度は高めです)。

・難易度
これは主に想定する層にもよりますが、パズラーが解くことを前提とするパズルと、謎の一種としてパズルも出てくるという位置づけでの謎解きでは、基本的には前者の方がやはり難易度は高いと思います。ルールが初見であることを前提とする点も、難易度を下げる要素になります。
一方で、謎解きに出てくるパズルは手の運動レベルかというと、必ずしもそうではなく、らくらく(★1)よりはむしろ、おてごろ〜たいへん(★2〜★3)の方が多いのではと思います。公演ではチームのうちで誰かが解ければ良かったり、協力して解くこともできますし、持ち帰り謎だとある程度時間をかけることが想定される形で出やすいので、難易度もそこそこになりやすい気がします。★4以上はさすがにほとんどありませんが、あんたがたのような全体戦や100万謎のような高難度コンテンツ、あるいは公演において、普通にやっても解けないことを示す(抜け道がある)ために意図的に高難度が出たりすることがあります。
あと、主に持ち帰り謎で数理系を使う場合、盤面の解き直しをさせることがよくあるのですが、解き直しを入れると制約がかなり強くなるため、いつの間にか試行錯誤でしか解けない★3とかになりがちです。

・手筋
ルールの話とも繋がるのですが、上記の通り、謎解きでは基本的に、そのルールをその場で初めて見ることが前提となります。また、当然ながら、普段パズルをほとんど解かない人もいます(上記のJPCは、普段パズルを解く人を想定しているので、この点では謎解きと異なると思います)。
そのため、特に数理系パズルにおいては、ルールそのものの難しさとは別に、ルールから導かれる手筋や解き方の難しさも問題になります。

例えば、スリザーリンクの場合、隣り合った03や外周の02はいいですが、33の隣接形やナナメの03あたりになると、初見で手筋を理解するのはハードルが高くなりますし、カックロでは1通りの分解表をいきなり理解してもらうのは難しいでしょう。バッグやしろまるくろまるでの市松定理なども同様です。逆に、直感的にルールが分かりやすく、単純な試行錯誤で解けるようなジャンルは謎解きにも使いやすいことになります。分割系とかだと意外と★ぐらいの初見でもなんとかなります。

〇謎解きに出てくるパズルについて(各論)

ここからは、上記の総論を踏まえて、謎解きに出てくるパズルについて、実際のジャンルをみてみましょう。基本的には数理系メインで取り上げます。

・クロスワード
・スケルトン
どちらもワード系ですが、ペンシルパズルでは圧倒的に2強だと思います。どちらも、ルール文を書かなくても大体伝わるのが大きく、そのまま小サイズで小謎として出しても、中謎としても使えます。難易度調整も利きますし、少ししてからクロスワードの盤面の一部を拾わせたり、スケルトンのリストを変えて解きなおさせたり、盤面の一部を使ったりと、色んな使い方が出来ます。どちらかと言えば、クロスワードは公演で、スケルトンは持ち帰り謎で使われることが多い気がします。
スケルトンはクロスワードなどとは異なり、知識のいらない理詰めパズルなのですが、解き筋を1つに決めなくても良いのと、多少難しくても問題ない点がとにかく使いやすいです。

・迷路
色々ありますが、とりあえずスタートとゴールと、途中で拾う文字があればOKです。パズル系ながら、シンプルなルールであれば目解きが出来る点も便利で、パズルが苦手な人でもとっつきやすいです。
バリエーションとしては、SCRAPでよく見る気がする壁にぶつかるまでは曲がれない迷路、ある記号で右折・左折の指定がある迷路、イラストを使う系などがあり、少しサイズを大きくしてルールを追加すれば解き直しにも使えます。大掛かりな迷路を作れば、公演の中謎でも使えます。

・ポリオミノ
謎解きだとやたら出ますが、ペンシルパズルというよりは、箱詰め系のポリオミノに近く、試行錯誤で解くしかない問題が多いです。意外とパズラーが苦戦します。
ペンシルパズルっぽいものを出す場合、特にペントミノは12種類ある点のハードルが高いと思います。一方でテトロミノはテトリスのおかげで、回転なし7種類が割と知られている気がします。

・四角に切れ、ブロックパズルなど分割系
数理系ですが、試行錯誤気味になりやすいのと、ルールがシンプルなことが多いので、謎解きでも比較的よく見ます。JPCでも良くありますが、オリジナルルールもやりやすいです。四角に切れの場合、仮押さえの考え方は知らなくても、適当にやってれば大体解けますし、この系統は多少難しくてもどうにかなることが多いです。ハニーアイランドもこの系統なのですが、六角形で応用が利きにくいのが難点。

・ナンバーリンク(数字つなぎ系)
ルールはあまり難しく考えず「同じ数字をつなぐ」「交差しない」を直感的に理解できれば解けるので、パズル初心者でもやりやすいパズルです。ただ、得意不得意の個人差があるのと(ポリオミノも割と同様な気がします)、解き方を説明するのが難しいので、高難度は使いにくいです。ペンシルパズル度を上げたくないが、何かパズルを入れたいときに便利です。困ったときのナンバーリンク。

・ループ系(SからGへのパス系含む)
シンプルループなど、とりあえず全マスを使って、交差や枝分かれしないループを作る、などは割とよく見ます。迷路との共通点もあり、基本ルールを直感的に理解するのは分かりやすいジャンルなのではと思います。問題を再利用する場合、文字拾いの指定が「6の倍数」などきれいに調整しにくいのが難点。
ましゅのようにルールが多いパズルでは「白丸で直進、黒丸で曲がる」のように要素を減らせば使いやすくなります。全マスルールを除外したMaxiLoopを解き直しさせる謎とかを見たことがあります。ミッドループとかいいんじゃないでしょうか。

・黒マス系
黒マス連結や2×2禁あたりは、初見で理解が難しいのでジャンルを選びがち。へやわけとかはさすがに厳しいですが、どこかの除夜謎でAqreが出ていたのは見たことがあります。あと、ネタバレになるので詳しくは書けませんが、某パズル謎は黒マス系の知識を要求される謎になっていました。
ループ(path)との複合ですが、持ち帰り謎で、Snakeを思いっきり主役にした謎を解いたことがあり、こんなのもありなのかと思ったことがあります。ルール理解が難しいので、徐々に難易度を上げる構成になっており、まさにペンシルパズルに慣れる体験ができる謎になっていました。ジャンルは別ですがPOLYOMINO ZOOではここら辺の導入をかなり意識して作った記憶があります。

・数字埋め系
数独はルールはメジャーなのですが、時間がかかるのが難点。謎解きだと大体6×6までな気がします。ビルディング、波及効果、Suguruあたりは見たことがあります。
自作でABCプレースのらくらくを出したことがあるのですが、デバッグ、解き手の両方から難しいというコメントを見たので(デバッグの段階でヒントを足しました)、数独以外のラテン系は謎解きだと若干ハードルが高い印象です。ABCプレースの場合、特にニコリストが解き方を理解するのに苦戦しやすいのですが、ニコリストでなくても、具体的に外周から解いていく方法が、ルールから理解しにくいのだと思います。

・物体配置系
シンプルなルールになりにくく、あまり見ない気がします。スターバトルあたりはルールは分かりやすいですが、そこからおてごろの手筋までの飛躍が大きく、試行錯誤でどうにか解ける問題にしないと使いにくい気がします。美術館やバトルシップなどの使いにくさは言わずもがなです。

・絵系
ルールが広く知られているところではお絵描きロジックが代表例です。時々見ます。塗り絵などと同様に、特に色鉛筆を使うような公演だと相性が良いですが、盤面に文字を入れにくいので、どうしても使いにくい印象です。
絵系の場合には、お絵描きロジックなどよりも、イラストをふんだんに使ったワード系の方が圧倒的に使いやすいです。この系統の代表例がいわゆる荒浪パズルです。

以上、謎解きに出てくるパズルについてまとめてみました。
最後の方はちょっと時間切れ気味になってしまったので、タイミングを見て加筆修正しようと思います。

※1)2作目のInfinityの依頼は既に来ていました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?