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「飛ぶのは恥だが役に立つ」2021年3月10日水曜日

・よく晴れた日だった。

・仕事で数千万単位の契約が取れて気分が良い。この案件の成否が職場の今期の業績に直結するため、退職時期を今月まで引き伸ばされたのは想定外だった。

・退職により、一生ゴルフをせずにすむ身分になると思っていたら、同僚の厚意により送別ゴルフコンペを開いて頂くことになった為、退勤後、重い腰を動かしてゴルフの練習に行った。練習場は客がまばらで、その殆どが顔見知りらしく、すごい方言を飛び交わせておしゃべりしていた。古いスピーカーから昭和の歌謡曲が流れていた。グリーンネットの向こうの空は薄水色と橙色で淡いグラデーションが描かれていて、ボールだらけの芝生を抜ける風が少しだけ肌寒かった。

・ボールの貸出機に百円玉を入れると、排出口から二十球ほどのボールが吐き出された。備付けの籠は片方の付け根が取れていた。百円ごとにボールを買えるシステムには好感が持てた。五百円単位でボールを買うと、必ず途中で飽きるから。

・部屋に帰ったら、掃除中だった筈のルンバが、床に落ちたイヤホンコードと壮絶な戦いを繰り広げた結果、ベッドの脇に停止していた。コードによってかんじがらめにされたルンバの姿は、えっちなラブコメのドジっ子メイドを想起させた。イヤホンを解いて再起動させると、寂しかったのか何なのか矢鱈と足に纏わりついてきた。ブラシでぺろぺろしてくるのだった。

・仕事中、一番仲の良い同期と電話した。職場で先日行われた、昇格試験についての話題が持ち上がった。自分以外の同期の殆どは、一斉にその試験を受けており、この試験の合否で、今後の出世レースの雌雄が決まる、そういう類のものだった。同期は、その試験で誰が受かった誰が落ちたという話や、今後の昇進の如何を多少なりとも気にしていた。入社後間もなかった頃には考えもしなかった、そうした話題がするりと出てくるあたりに、自分と同期との間に流れた時の長さを否応なしに感じさせられた。

・また、尊敬していた上司の最後の昇進チャンスが失われた。何度も見てきた光景だし、出世が全てではないと分かっていながらも、評価されるべき人が評価されないのは面白くない。

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・ふるさと納税で届いた肉を焼いた。

❤︎今日のお言葉:飛び恥

・午後遊びにきていた社長との雑談の中で出てきた。ヨーロッパの若者を中心に流行っている言葉で、えっちな言葉ではない。

・EUの試算では、航空機が排出する温室効果ガスは鉄道の20倍と、環境への負担が大きいということで、それを受け、移動手段に飛行機を使わず鉄道を使っていこう生活洋式が持て囃されている。「飛び恥」とはそういう意味の言葉だという事である。

・サステナブルな社会への参画が新しい用語を生み出すあたりに、ヨーロッパの若者たちの関心の高さ、心の余裕が伺える。

・今の日本人の若者にはそんな心の余裕はない。私たちも昔は余裕があったので、オゾン層の心配をしていたけれど、今は目に付く範囲の生活の心配ばかりである。

・この差はどこから生まれてくるのか。それとも、日本人も外人からすれば「何を悠長な」と言われるような心配をしていて、その方向性の違いだけなのか。

・日本人の興味関心はどこにあろうか。

・私は今、ど田舎のアパートに世界中の酒を置き、カルヴァドスを飲みながら、ベランダのいちごの花を眺めている。

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