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夢科学 #04:フロイトの「夢判断」、#02(上巻を読破)

夢科学の研究の一環としてフロイトの「夢判断」の上巻を読んでいたのですが、無事読み終わりました。今回学習したことをまとめ終わったら次はユングの「人間と象徴」を読み込んでみようと思います。

5、夢における歪曲

願望充足の欲求は、夢においては歪曲を経て表現される。フロイトの例では、学術会における友人であり教授職を争うライバルが、かつて金銭トラブルで逮捕された自分の叔父と同じ風評を与えられる(「友人には足りないところがあるんだよ」という話を聞かされる。フロイトは叔父が逮捕された時に同じ常套句を父親に聞かされ印象に残ったという)という夢を見た。これをフロイトは「自分は教授職に就きたいので、心の奥底でライバルを出し抜けるかつての叔父のような風評が広まるのを望んでいた」とかな〜り理屈っぽく分析する。
個人的には「そんな理屈っぽい夢をこの人は見るのか?」と驚いている。私は夢の中では直情的になっていることが多いので、このフロイトの夢解釈はあまりに屁理屈っぽくて共感できない。

このようにして夢では願望充足の欲求が異なる形で現れることを、フロイトは文書検閲に例えている。夢の内容を決定する・あるいは歪曲する脳、あるいは心上の部位をフロイトは「心的検問所」と読んでいる。フロイトは心的検問所はまず無意識に一箇所、無意識と意識の境界にもう一箇所あると想定している。まず夢の潜在内容が第一の心的検問所で生まれ、次に第二の心的検問所で意識できる形に歪曲され夢の顕在内容になるとフロイトは考える。

フロイトの精神分析の実例には、小宮Buchseが女性器の隠語であるという話が登場する。Buchseの発音は英語で箱Boxに似ている。このことから、夢における小宮や箱とは女性器や子宮を表すというそれっぽいこじつけ(笑)が展開される。夢においては箱の中の人は妊娠や胎児を、その中の人が死体や骨である場合は死産を表すという。

フロイトは願望充足説に反するような苦痛夢・不安夢の実例も分析している。苦痛夢や不安夢もまた願望充足の歪んだ形の再現であり、特にサドマゾ的性癖のある人はこのような夢を見やすいという。苦痛夢・不安夢の実例が願望充足説に反しない実例はのちの書籍でさらに実例を挙げるという。

「夢はある抑圧・排斥された願望の歪曲された充足である」

6、夢の材料・源泉

フロイトによると、夢の材料となる主要な経験はその前日にあった出来事である。夢を解釈したいなら、まずは前日の事件や出来事に注目すると良いらしい。
また、ホールの統計的な調査によると1日前の出来事はその日の夢にほぼ影響を及ぼすほか、1週間後に視聴した映画の影響を受けた夢を見る人・そうでない人の2グループに大きく分かれるという。今日からNetflixの映画をきっかり2時間見てどのような夢を見るか実験してみる予定。

7、典型夢の分析


多くの人に共通するような意味があると考えられるような夢を、フロイトは「典型夢」と命名している。ここでは3タイプの典型夢の分析が行われている。

①裸で困惑する夢(裸体夢)

自分自身が裸、もしくは半裸の状態で恥や困惑するという舞台設定の夢。フロイトによると、この裸体夢ではむしろ夢に登場する他者が裸・半裸であることを気に留めないケースが多いという。これは私が一度だけ見た裸体夢にも当てはまっている。

裸体夢はフロイトによると幼児期にふざけて裸を見せびらかしたり、あるいは他人を窃視しようとした時代の幼児願望が夢の潜在内容だという。裸体夢の願望充足が目指しているのは、恥という概念が薄かった幼児期の願望を満たすこと、あるいは身体や容姿のコンプレックスを何らかの形で発散することであると考えられる。自分の体を他人に見せびらかしたい、と少しでも思うことがある人であれば裸体夢を見る可能性があると考えられる。

②近親者が死ぬ夢(死亡夢)

大切な近親者や友人など、大切な人が死ぬ夢を仮に死亡夢を名付けておく。フロイトによると「近親者は別の何かを象徴しており…」といったこじつけはなくこの際「ホントにその人に死んでもらうこと」が夢の潜在内容であるという。

死亡夢は夢から覚めて全く悲しんでいない薄情な自分を訝しむという「薄情」のパターン、夢を見ながら実際に泣くほどの感情の昂りを感じる「激情」の2パターンがあるという。
このような死亡夢は“今現在“その人に対して強い憎しみを抱いていなくても、死やその他些細な不幸など少しでも悪しき願望を抱いた過去にあればその人が死ぬ夢を見る可能性があるという。

死亡夢は私の場合好きなキャラクターが銃で撃たれて死ぬという最悪の形で見たことがある。「好きな人が死んで悲しむという、絶対に見たくない夢を見たのは何故だろう?」と不思議に思っていたが、「この人は好きなキャラだからもっといろんな所で戦わせたいな」という身勝手な願望が「戦って、よしんば死んでもらおう」という連想によって死亡夢となったのかもしれない。

③学業の試験の夢(試験夢)

フロイトによると、ギムナジウム(高等中学校)や大学での学位取得試験の夢が不安をともなってしつこく現れるという。私もかつて大嫌いなセンター試験・大学受験を何とか生き延びたが(笑)今のところ試験夢は全く見たことがない。フロイトは試験の日を詩的に「かの日は怒りの日なり」(笑)と表現している。

フロイトによると、試験夢は特に試験に合格した後の日に実は合格していなかった、あるいはすでに通学・開業しているのに合格していないことになっていたという過去の反実仮想の形で現れるという。逆に試験に落ちてしまうと、試験夢を見ることはほとんどないという。私の場合正直にいうと大学受験は失敗で(笑)社会人になってからの資格取得は100%成功しているのだが、どちらもくだらないので夢に見るほどのショックはなかったらしい。

試験夢を見るという人の実例を訊けたのだが、不安を感じると「試験で成績が落ちる」という連想から自分が階段で滑って転がり落ちる夢を見ることがあるらしい。これも歪曲された試験夢であると解釈できる。

8、夢の作業

フロイトによると、先に挙げた検閲によって夢の潜在内容は顕在内容となる際に大幅な検閲と加工が加えられる。

①圧縮

夢の顕在内容は大幅に圧縮されている。例えば半ページほどの内容でもその解釈に6-12ページのこじつけが必要となる場合がある。
私が見た良い圧縮の例だと、白いイヌに変身する女の子の例がある。女の子はイヌになる前に紫色のイヌのパペットを持っていた。白いイヌと女の子は何か2つ以上の潜在内容を指しているはずである。
奇妙な圧縮が起こった例として、ショッピングモールに靴屋や自分の仕事場があるという都合の良い舞台設定となったケースがある。「近くに〇〇があれば…」と少しでも思っていると、このように圧縮で建物が合体する夢を見るのかもしれない。

②移動

夢においては、個々の要素の移動が行われる。要素の移動が行われる際に、その重要度や価値(心的強度)の移動も発生するという。
移動が起こった私の夢の例としてはこれがあるかもしれない。私は萌え系の絵を描くのが趣味なのだが、夢で高齢の脚本家の女性・かつアメコミ風のヴィジュアルノベルを描いたという人を称賛する夢を見た。これは私自身の芸術的な技術がもっと向上したらという願望充足夢だと思うのだが、称賛される人は私自身ではなく高齢の脚本家、画風はアメコミという“ズレ”が起こった内容となっている。

③奇妙な造語・単語の形成

夢では言葉が奇妙な形で組み合わさる、あるいはくだらない“だじゃれ“や“こじつけ“がイメージを伴って現れるということがある。
今更気づいたのだが、赤いシャツの正反対の思想の男に襲われるという夢は「赤の他人」というくだらないだじゃれ(笑)となっている。そのほかにも、「駄菓子屋・Oripacy」という衝撃的な名前の駄菓子屋が夢に出たりした。これは圧縮・移動によってこのような言語の組み合わせやイメージ化が起こると考えられる


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