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EP04 ポジティブ心理学とは?


このnoteは2020年6月3日に収録した音声を文字起こししたものです。

こんにちは。ニューヨークから松村亜里です。幸せを科学的に研究するポジティブ心理学を分かりやすく伝える活動をしています。

今日は「ポジティブ心理学とは何か」についてお話したいと思います。ポジティブ心理学はウェルビーイング研究とも言われています。

心理学の目的が変わってきた

現在コロナによってポジティブ心理学の役割は、少し変わってきていて、これまで私が大事にしていたこと以外にも伝えることがあるんじゃないかと考えています。今回は本当に簡単な話をします。

心理学は最近、目的が変わってきたと言われています。とても悲しかったり心の病気があったりする状態を-3の状態、普通の状態(悲しくもないし鬱でもないけど、幸せでもない状態)を0、とても幸せな状態を+3とするとしたら、従来の心理学は−3を0にすることをやってきました。

もともとは、戦争で傷ついた兵士やトラウマ抱えた兵士たちが戦争から戻ってきた後、社会に復帰させることが大事だったので、アメリカでは国が研究費を出したり、心理学者を増やしたりするなど心理学の促進にお金を出していました。そのうちに病気にならないよう、予防するものも大事になってきましたが、より幸せになることについては誰も着手してこなかったんです。

1998年に鬱病の治療を長年していたセリグマン博士という方が、「患者が治っても+3にはなっていない。鬱を治して0の状態にするだけでなく、患者に幸せになってほしいから、+3にいく方法も科学的にきちんと研究しよう」ということで、この分野の研究が始まりました。

幸せの遺伝の影響は何割?

幸せがずっと研究されなかった理由に、「遺伝で決まってるんじゃないか」というような考え方や「今幸せな人はずっと幸せだし、今不幸な人はずっと不幸で、変えられるものじゃないんじゃないか」という考え方がありました。もし、遺伝で決まってしまうなら心理学を研究する意味がないですよね。

そこである学者が「どのくらいが遺伝と関係しているのだろう」ということを調べたんです。まず「一卵性の双子は遺伝子も環境も100%一緒」という特徴を生かして、一緒に育った双子と別々のお家に引き取られた一卵性の双子の幸福度を調べるところから始めました。そして遺伝の影響は4割〜5割ぐらいということがわかりました。遺伝の影響はそのくらいなのです。

例えば、「どのくらい幸せですか」と聞かれて、私は「7点ぐらいです」、私の隣の人「私は9点ぐらいです」と言ったら2点の差があります。この2点の差のうち、4割から5割は遺伝と関係していて、実は環境(どのくらいお金を持ってるとか、どんな家に住んでるとか、どんな仕事を持ってるなど)が1割しか関係していないんです。そして残りの4割〜5割は、その人の活動や行動から幸せが作られるとわかりました。つまり幸せにのために変えられる部分があるということです。そして「どういう行動が幸せに繋がるのか」という研究につながっていったのです。

幸せな人と不幸な人の行動の違い

まず調べたのは「幸せな人と不幸な人って何が違うんだろう」ということで、どんな行動をそれぞれがしていて、何が違うのかをこと調べると、大きな違いがありました。

例えば幸せな人達というのは、よく感謝を表していたり、友達関係を大事にしていたり、人に親切にしていたり、運動をしていたりします。こういうことを発表すると、研究者に新聞記者の方が、「感謝すれば幸せになれるんですね」と聞くんですよね。しかし研究者は「それは違うな」と思うわけです。なぜかと言うと「幸せだから感謝してるのかそれとも感謝してるから幸せなとか」というのは、相関研究と言い、幸せな人が何をして、不幸な人は何してるって言うのを一時期に比べるだけでは分からないんですよね。どちらがどちらを引き起こしているかが分からないわけです。卵と鶏みたいな感じですね。

原因と結果を調べる方法

そこで介入研究という研究をしてみます。これは、たくさんの人をランダムに2つのグループに分けて、1つのグループには感謝をしてもらい、もう1つのグループにはしてもらわないという研究です。

例えば1,000人の人を集めたら、半数の500人には「今日から一週間夜寝る前に良かったことを3つ書き出してください」と伝え、もう半分の500人には「今日から1週間寝る前に今日あったことを3つ書いてください」と伝えるんです。すると、良かったことを見つけ出した前者の人達はすごく幸せになって、最長6ヶ月間その幸せが続くっていう結果が出ました。こうなると「感謝をすれば幸せになれる」って言えますよね。

こんなふうに介入研究という研究で見つかった幸せになる行動習慣は、現在、15個〜20個ぐらいあります。

私は子育て後の小さい子ども達をワンオペしてた時代の後に、ポジティブ心理学を勉強して、それまで10年とかで20年かけて−3から0になったのが、数ヶ月ですごく幸せを感じられるんだったんです。−10とかですごく低かったのが、数ヶ月の間に+10とか+100とかになったんですよね。私はカウンセリングもしていたので「これを伝えるとたくさんの人がもっと幸せなんじゃないかな」という思いもあり活動しています。

なぜ環境が1割??

不思議なのは何で環境が1割しか関係ないかということですよね。
私たちは多くの人が、いい学校に行っていい会社に入ってお金持ちになると、幸せになれると思って、受験戦争とか色々なことがあるわけですけど、実は幸せと全然関係が無いんです。今幸せだっていう人は、成功する確率が高いんですが、成功したからといって幸せなる訳じゃないんです。

では、「なぜモノが人を幸せにしないのか」ということについて、です。

「人は何にでも慣れる」っていう性質があるからです。これは人間が生き延びるためにあり、どんな辛い環境にでも慣れるようにできているため、辛いことだけでなく良いことにも起こります。

大きな家を持っている人とか素敵なカバンを持っている人とか、さらに教養が高い人とかって幸せな気がしますよね。でも、大きい家に住んでもしばらく経つともっと大きな家に住みたくなるわけです。人って何かを得るまで、何かを目指してモノを得る直前まで、ドーパミンという短期的に幸せを感じるホルモンが出るんです。

でも、モノを得た瞬間にそれは消えてしまいます。またそのモノを得られるという期待に対してホルモンが出るので、トレッドミル(ランニングマシーン)と呼ばれる現象が起きます。これは手に入れたら次のモノを求めなきゃいけないという感情が働く現象で、ハムスターがゴロゴロと同じところ走ってるような、いつまでも幸せがそこにあるようでなかなか届かない、ということです。

それとは違って、毎日自分が何をするかとか、健康とか、そういうものはそのこと自体が人を幸せにし、幸せになるものではないので、人を長期的に幸せにすると言われています。

ポジティブ心理学はどんなところに応用できる?

ポジティブ心理学は今、いろんな分野で応用されています。

ポジティブ心理学を活かして社員の幸せを高めることを目的とする学問を「ポジティブ組織心理学」と言いますし、幸せになる方法を子ども達に集団で教えていくことを「ポジティブ教育」といいますね。ポジティブ教育とかはすごくエビデンスがあり、介入すると勉強を教えた時よりも幸せになるのはもちろん、成績も高くなることが分かっています。

また、鬱の患者さんなどに幸せになる行動習慣を教えると、抗鬱薬を飲むよりも、今までの普通のカウンセリングをするよりも、治療効果があったという研究もあります。健康の分野でポジティブ心理学を入れて予防すること「ポジティブヘルス」といます。-3から0を目指すよりも-3から+3にする方がすごく効果が高くて早く結果が出るというのが私の感覚ですし、エビデンスにも出ています。是非興味がありましたらその行動習慣を学んで、実践してみてください。

今日はここで終わりにします。良い1日をお過ごしください!


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