脳振盪の危険性は何度でも言おう
特にコンタクトスポーツではしばしばその言葉が話題となる脳振盪(Wikipediaでは脳震盪と表記されますが、どちらも使われているようです。「振」の方がよりイメージしやすいですかね)。最近では大相撲初場所の取組で、頭から激しくぶつかった力士が立ち会い不成立となった後、ふらついて一度土俵下に降り、取組続行の意思を見せたため、再度取り直しをしたということがありました。
(閲覧注意。かなり激しく当たってます)
ここで脳振盪のことを説明すると長くなりますし、実際に対応する経験もコンタクトスポーツで活動するトレーナーさんに比べると語るに値しないのですが、それでも啓蒙活動の一つとして、スポーツ医学に詳しくない皆さんにもわかるように伝えることはトレーナーの役割だと思っています。
どちらも少し古い記事ですが、基本的なことを理解するために読みやすく書いています。脳振盪ってどういうもの?という方は一度目を通してもらえればと思います。
さて、話は戻るのですが、この後の日本相撲協会審判部の決定は「脳振盪の力士は相撲を取らせない。不戦敗にする」というものでした。ちなみにニュースだと読みやすさを考慮して「脳しんとう」という表記ですね。
そしてその翌日にJリーグでも脳振盪による選手への健康リスクを考えた交代枠の追加が発表されていました。
どちらも脳振盪によるリスクを考えた予防策ではありますが、大事なことは誰が脳振盪と判断し、競技続行の可否を決定するのかということ。
Jリーグではチームドクターがガイドラインに基づいて選手が脳しんとうか否かを判断している
ガイドラインが整備されているということはリスク管理の面で非常に大きいと思います。ワタシたちアスレティックトレーナー、トレーニングコーチなど特に選手たちをフィジカル面から支える指導者としては脳振盪の評価として「スポーツによる脳振盪評価ツール」(Sports Concussion Assessment Tool:SCAT)を用いることを基本としますが、かなり専門的な内容も含まれているので、指導者の方は日本臨床スポーツ医学会脳神経外科部会がまとめている「頭部外傷10ヶ条の提言」を見てもらえるとわかりやすいと思います(ダウンロードもできます)。
さらにこの分野ではかなり教育啓蒙活動に力を入れている日本ラグビーフットボール協会のウェブサイトも参考になります。選手たちを脳振盪から守るという強い思いが至るところに見られます←感動するレベルです。こちらのページは夏季練習・合宿に対してのアナウンスですが、やるべき行動がよくまとまっていてわかりやすいです。
先述の大相撲の場合はガイドラインをきちんと作成し、ルールに基づいて運営していくことが大切になってくるでしょう。「脳振盪を起こした選手は競技復帰させない」ということは選手を守る意味では大切なことですが、脳振盪=不戦敗になってしまうと、それによって成績が大きく変わってしまいますし、判断のガイドラインが曖昧だと今回のケースのように「力士ができますと言ったら続行する」と言ったことにもなりかねません(選手に判断を委ねると「やります」と言うことが多い)。今まで明確なガイドラインを持っていなかったがビックリな感じもしますが、そこはひとまず置いといて、この先を見据えて迅速な対応をしていただければと思います。
実は本来書こうと思ってたトピックからかなりズレました(笑)。脳振盪にまつわる時事ニュースを見たこともあり、大事なことは何度でもいわねば!とトレーナー的使命感に促されて書き残しておきたいと思います。そのうち本来書こうと思っていた話も書きますね。
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