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空想映画レビュー 第2回『妄想ダンス』

ジャンル:恋愛
公開日:2018年9月
製作国: 日本
配給:東猫

[登場人物]
スグル:ピアニストに憧れる若いサラリーマン。内気で夢見がちな性格。
ケーコ:少女漫画家になる事を夢見る女子大生。極度の恥ずかしがり屋。

[ストーリーと解説]
映画の舞台は、現代の東京。
ピアニストに憧れるサラリーマン「スグル」は、内気で夢見がちな性格。
いつかピアニストになろうと夢見ているが、会社を辞めてまで音楽の道に進む勇気はなく、会社では先輩からも後輩からも叱られ、からかわれるだけの毎日である。
しかし、妄想の中でだけ、スグルは有名ピアニストになることができた。
(※可愛い女子社員をピアノで魅了してモテモテになる妄想シーンや、新企画のプレゼンでピアノを弾き、社長や重役たちに拍手喝采され企画が採用されてしまうという妄想シーンがコミカルに描かれる。)

少女漫画家になる事を夢見る女子大生「ケーコ」は、漫画家になるという夢を持っているが、極度の恥ずかしがり屋のため、自分の描いた漫画の絵を誰にも見せることができない。
現実でうまく行かない事があっても、自分の描いた漫画の中へ入って、妄想の中で満足してしまっている。
(※ケーコが漫画を描くと、漫画の中の自分が動き出して、素敵なイケメンとラブラブになったり、花畑の中で結婚式をあげる妄想シーンがメルヘンチックに描かれる。)

そんな似た者同士の二人だが、よくニアミスを起こすことがあり、お互いに気になる存在ではあったが、直接話しかける勇気はなかった。

(※実現したい夢があっても、踏み出せずに妄想の中だけで満足してしまう二人だったが、その創造性に満ちた妄想はとても美しく、映像的な見どころにもなっている。そして、妄想シーンの後にいつも冴えない現実のシーンへ突き落とされる、そのギャップもとても面白い。)

ある日二人は、人通りの多い道で自分の対面から歩いてくるお互いの姿を見つける。お互い同じ方向に避け続けてしまって、距離がどんどん近くなっていく。

(※このシーンは、誰しも身に覚えがあると思うが、歩いているとたまに対面から来る相手と同じ方向に避け続けてしまって、結局ぶつかりそうになる事があるが、この時は二人がそういう状況で対面する。このシーン、二人が似た者同士だからシンクロ率が高いという事もうまく表現している。)

二人の距離が0になったところで、二人は手を取り合ってダンスをはじめる。
(※ここから実は妄想シーンであり、二人の妄想が合体したようなシーンになっている。映像にはケーコの妄想と同じようにメルヘンチックな花が舞っているし、スグルの服装は明らかにいつも妄想の中で着ているタキシードで、BGMはいつも弾いているピアノ曲である。そして妄想の中の二人は積極的である。)

周りの通行人が二人を囲み、二人のダンスのうまさに見とれている。
ダンスの最後に二人がポーズを決めると、拍手喝采。なぜか結婚式のような祝福の歓声も。
しかし、ここで妄想が終わり、そのまますれ違って別方向へ去っていく現実の二人。

その後はしばらく、それぞれの切ない日常が淡々と描かれる。
スグルは会社で説教されピアニストの夢をあきらめようと思いはじめてた。
一方、ケーコも新人賞応募のために徹夜で描いた漫画原稿を同級生のイタズラで捨てられ、さらに漫画家になりたい夢を打ち明けた教授にも現実を直視しろと諭され、漫画家になる夢をあきらめようとしていた。

そんな絶望状態の二人が偶然、曲がり角でぶつかって、たまたま二人はダンスの組み手になってしまう。
妄想の中でやったように、華麗にダンスをはじめる二人。
気持ちも通じあってる表情。
最後の決めポーズで、今のが妄想じゃなくて現実だったと気がつく二人。
照れ笑いしつつ運命の相手に出会えて幸せそうな二人だった。

照れくさそうに手をつないで一緒に街路を歩いていく二人の背中が小さくなるまで、カメラは見送り続ける。

ここで映画本編は終わるが、エンドロールで二人のその後のシーンがいくつも映し出される。
それは、心を通じ合えるパートナーを得た二人が、勇気を出して夢に向かい、夢を実現しているシーンの数々である。

そして、それらはもはや妄想では無く、現実の風景なのだ。

リアルな現実と幻想的な妄想の美しい映像の対比が印象的で、心がつながる相手がいる事の嬉しさを表現した、小粒ながら暖かい気持ちにさせてくれる秀作映画である。

(上映時間 15分)

注:この映画は実在しません。

#恋愛 #映画 #コラム #実在しない映画のレビュー

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