にゃろフィルム表紙

空想映画レビュー 第1回『神が死んだ日』

ジャンル:SF
公開日:2020年5月
製作国: 日米合作
配給:22世紀キャット

[登場人物]
ヤマモト:血の気が多い肉体労働派の荒くれ宇宙飛行士。
サカモト:何事も科学的に判断する冷静な理系宇宙飛行士。メガネ男子。
老人:自らを神と名乗る、人類未踏惑星のボロアパートに住むおじいさん。

[ストーリーと解説]
映画の舞台は、超光速宇宙航行が可能になり、人類がその活動範囲を宇宙に広げつつある未来の世界。

宇宙飛行士ヤマモトとサカモトは、人類未踏の惑星にて生命反応を発見し地上に着陸する。
※映像は、砂丘に半分埋まった宇宙船から二人が出てくるシーンから始まり、状況説明は二人の会話から分かってくるという手法を用いている。

二人が砂丘をしばらく歩いていくと、ボロボロなアパートの扉が地面に立っている。
扉を開けると、いきなりボロアパートの狭い部屋で、汚い格好のおじいさんが住んでいた。
※舞台がアパートの中というのは低予算映画ならでは工夫と言えるが、映像的な演出と俳優の演技力のおかげで説得力の高い映像になっている。

この老人は、自分が神だと言う。そして、宇宙中のすべて、過去も未来も、自分の想像通りになってしまうのだと言う。血気盛んなヤマモトは、この老人のイカれた発言にイラ立って、事あるごとに老人を殺そうとするが、冷静なサカモトは、ヤマモトをなだめ、論理的な推察で老人の言ってる事が事実かどうかを検証していく。
※ここからのサカモトの、「仮説を立て巧みに事実を検証していく様子」は、さながら推理映画を見ているような、知的なエンターテイメントとして楽しませてくれる。

そして、老人とのやり取りと様々な思考実験と検証を行った結果、この老人がまぎれもなく、世界を創り上げてる「神」であるとの結論に達した時、(大方の観客の予想を裏切って)サカモトが老人を射殺してしまう。
※このシーンでは、劇中のヤマモトと同様に、観客にとっても何が起こったのか分からないのだが、サカモトの回想シーンで、その理由が明らかになっていく。

普段冷静で合理的なサカモトだったが、実は妹の悲惨な死や家族の崩壊などつらい過去を持ち、世界の不平等と不条理を人一倍憎んでいたのだった。

「神」である老人の死後、まわりがにわかに暗くゆがみはじめ、世界が消滅してしまうんじゃないかとビビるヤマモト。しかし、すぐに世界は正常に戻る。(戻ったように見えた)
世界は滅びなかった。
※ここで、放心状態だったサカモトが何かに気づき、そして、少しニヤっとする表情に注目。

地球への帰還の途につく二人。宇宙船内のレーダーでは、先ほどの惑星はなくなっていた。そして、地球からの対量子通信(距離に関係無くリアルタイム通信が可能な技術)で、(死んだはずの)妹や(離婚してバラバラになったはずの)両親から暖かい声が届く。

※ここは気にしないで見ているとさりげなく進行してしまうが、回想シーンと違う現実に変わっている事に注目。神殺しの業を背負ったサカモトが、次の「神」となって、世界を書き換えていってる事を意味していると思われる。

宇宙空間の中で小さくなっていく宇宙船に重なって、タイトルロゴ「神が死んだ日」が表示され、エンドクレジットが流れ始める。

派手なアクションシーンこそ無いものの、知的好奇心が刺激される、不思議な後味のB級SF映画の名作である。

(上映時間 188分)

注:この映画は実在しません。

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