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#100文字の世界

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2021/3/22〜4/5で集めた100文字ぴったりの投稿と、ニャークスのヤマダが作る #100文字の世界 掲載マガジン。https://note.com/nyarks/n/n6… もっと読む
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#言葉

神の真名

月夜見に創造された光が 静かな闇を照らしていく 天の陽が眠っている間だけ 世の陰をそっと開いて 閉じる時には秘密の扉に 鍵をかけ陽の輪に隠す 眩くて誰も見つけられない 陰陽に護られた世界の謎 神の真名も伝わることなく ---- 100文字の世界。想像の神話。たまにこんなことを考える夜もあったり。

見えない星に向かって

星が瞬いているとしても きっと今は何も見えない 湿気を帯びた重い空気が 渇いた仮面のヒビを潤す 時計が止まったとしても 外が暗いなら今日はもう 眠れない夜と逢ったなら 朝まで歌っていればいい 見えない星たちに向かって ---- 100文字の世界。梅雨ですな。

不確かな忘却

此岸の端に座ったまま 黄金色に輝く雲を見て 世界を解ったつもりになった 瓦解するの誰かの夢と 再構築される光のなか 隙間なく並ぶ花に名をつけた 悠然と在るそれだけで 尊いという想いは消せず 儚さの欠片を樹の下に埋める

煙に巻く

心臓の音に耳を傾けながら 輪っかになる白い煙を見ていた 今日を生き切ったのはたまたま そんなことを思う日もある 嘘の感情を貼り付けたまま 一点に留まり光も求めない 不確かなまま気配を感じ続け ただ静かに目覚めを待つ --100文字の世界-- 心臓の音が聞こえる 輪を成す煙見て 陽は落ち伏せたら よもや黒い朝へ 二度目待つ揺れぬ火 しんぞうのねがきこえる わをなすけむりみて ひはおちふせたら よもやくろいあさへ にどめまつゆれぬほ --アナグラム詩/いろは歌(仮名46音

花溜まりの上では

近所の公園にある桜はほとんど散った 小さな花びらがどれだけ舞ったのか 地面には花溜まりがいくつもいくつも 俯瞰して見たらどんな柄に見えるのか そう思い見上げた空に烏が泳いでいた 黒い翼を広げて風の中をすいすいと

無邪気な細胞

ベッドのふちに腰掛けて 雨音を聞きながらうつらうつら このまま電気を消したら 雨音も聞こえない深いところへ コーヒーを飲んでも眠い 朝6時に目が覚めたせいだろう 土曜日で体が喜んだのか 無邪気な細胞に操られ制御不能

野生の残香

黒猫が少し先を横切って その目線からは高さの検討も 難しいであろうブロック塀を しなやかな跳躍で何事もなく 飛び越えて真っ暗闇になった 何度も見てきた光景なのに 日常に潜む野生に本能が呼応し 今夜だけは残香を探した

supernova

捨てられていた時間を拾った このままだと光は消えない 命の火は勢いを増し燃え盛る 止められそうもないなら 感情も経験もためこみ最後まで 遠くで超新星爆発を起こして すべてを覆う一瞬の光になり やがて静かに消えていく

散って迷い人

目的地があるわけでもなく 歩みを散らすから「散歩」 ぷらぷらしながらふと思う 「散歩がてら」とは何か 最終的な到着地点が明確で おそらくそこに向かうはず 帰りもきっと真っすぐ家に 思考を散らした結果 着地点を見失った

アオイカレイドスコープ

海が手のひらにすっぽり入るくらい 空が目のなかにまるっと入るくらい そんな小さな世界にひろがっている 青も碧も蒼も鏡のなかに全部いれて 覗きこんで回したら何が見えるかな アオイロだらけのカレイドスコープ 鏡の夢幻

ストレリチアの秘密

色彩豊かに四方へと 己の生を当然のように 主張するストレリチア 憂鬱さのカケラもなく 周りの光を集めるように 陽を浴びて広がる羽衣 いつでも飛び立てるのに 忘れられたくないから 永い時間を閉じこめて 極楽鳥は花になった

そんな夜

眠れなくなる毒を思いきり吸い込んで 夜空に散らばった星を数えていたら 途中で分からなくなってやめた タバコの煙を吸ったら毒が中和された 寝転んだ芝生がベッドに思えてきて 枕を探すのも面倒になり眠った そんな春の夜

砂上に落ちる影

薄灰色の砂の上 小指の爪にも満たない影 彷徨っているような蟻の歩み その真っ黒な体に降り注ぐ 容赦ない太陽の熱光線 陽だまりの心地好さか 灼熱の地獄にいる感覚か ほんの60秒だけ蟻になりたい 思考はいつも自分勝手

朱色の鳥居の先

稲荷神社と書かれた幟 それよりも小さな朱色の鳥居 奥には小屋のような社が 夜の神社に人はいない 何の気無しに鳥居をくぐる 稲荷蔵と目が合ったまま数秒 突然風が吹き木々がバサバサと鳴る 両手を広げたらすっと風が止んだ --- 「100文字の世界」ということで詩を書いたけど、ただの日記になった。