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身につけると心安らぐアクセサリー。心のままに手が紡ぎ出す世界

「かわいい」
この言葉の中にはとてもたくさんの要素が詰まっている。
素材、質感、色の組み合わせ、柄......

今回話をお伺いした瀬戸さんが作るアクセサリーも思わず「かわいい」と言ってしまうものばかり。一見可愛いけど、どことなく懐かしくて繊細で温かい。ひとつひとつ表情が異なり、同じものは一つとない尊さがある。

彼女が作り出す世界観はちょっと天邪鬼。だけど根底にある想いは人を励ますこと。湧き出る言葉を添えて、誰かのお守りになるモノを創作する。「ソワ(sower)」を生み出す瀬戸望さんの世界観をどうぞ。


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自分を着飾るものではなく心を装うアクセサリー 
装心具(そうしんぐ)「ソワ」

──2020年11月にブランドリニューアルしたのを知って、いつかお話聞きたいなとずっと思っていました。早速ですが「ソワ」のことや、何を考えてモノをつくっているかお話し聞いてもいいですか。

そうですねぇ……
1日って24時間ある中で、家にいる時間もあれば、おしゃれして外に出る時もありますよね、私はどこにいても、どんな状態でも、自分の心がいい気分でいられることが人生を楽しむ秘訣だと思っています。アクセサリーでも、置き物でも何でもいいんです。ふとした瞬間に視界に入ってテンション上がったり、そこにあるだけで自分が自分らしくいられる空間になるような、そんな瞬間をつくっていきたいと思っているんですよね。

ブランド名の「ソワ」のスペルは 「sower」で、英語では “種をまく人”という意味があったり、仏教では「ソワカ」という言葉で “幸あれ”っていう意味で使われていたり、そのふたつを掛け合わせて「ソワ」と名付けました。「みんなが幸せになるもの」という思いを込めています。

アクセサリーだけじゃなくて、絵でもいいし、言葉だけでもいいんです。「ソワ」をみたり、身につけたりすることで誰かが幸せになる。そして、私が心を込めてつくりたいと思える物ならなんだっていい。気分や気持ちとか、心に従ってつくるということで「心が芽吹く、装心具(そうしんぐ)」をコンセプトにしました。

──外見だけでなく、心を装うモノなんですね。

昔から、自分がつくるもので誰かに元気を与えられたらいいなっていうのはありました。私、身近な人が「自分なんてだめだ」って落ち込んでいるのを見るが嫌なんです。みんな何かを目指して頑張らなきゃって思う人が多いけど、スタンダードにそまらなくてもいいんだよ、そのままのあなたで大丈夫だよって背中をおせる応援グッズみたいになればいいなって思ってつくっています。


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閉ざしていた感情を蘇らせたのは
薔薇の刺繍

──瀬戸さんがモノづくりを始めたきっかけは?

だいぶ前に人生でめちゃくちゃ落ち込んだ時期があって、普段の私だったらなんでも家の人に話していたんだけど、その時期は実家で「ただいま」も「ごちそうさま」も言わないくらい心閉ざしてた時があったの。なんの感情も感じない無の時期ですね。この状態がこのまま続くと駄目になってしまうんじゃないかと思って、そこから抜け出したくて何かつくろうと思った。

ふと目についた布と針を手にして、薔薇の柄を刺繍した時に出来上がったものを見たら「可愛い」と思えた。その時、閉ざしていた自分の感情が沸き起こるのを感じて、「まだ私、感情忘れてない」「今ならまだ戻れる」って思えて薔薇の刺繍に救われましたね。

そのころ丁度友達が布を染めてお花を作るのを習ったのを聞いて、自分でももう一度染めをやってみようかなと思ったのが染め始めのきっかけかな。もともと芸大の染織専攻を卒業していたので、染めはやっていたし、何かつくったりするのは好きだった。家に材料も揃っていて私でも出来るかもって思って、やってみたらすんなり出来ちゃったんです。

出来たものを友達にあげると喜んでもらえて、それが嬉しくてどんどんつくっていってたら、徐々に調子を取り戻していった感じですね。


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綺麗なだけでは物足りない、
独特の美しさを捉えて表現する

例えば、芍薬(しゃくやく)の花を模した作品をつくるとき、本物の芍薬の花を見ながら染めていきます。はじめは綺麗だなーって思って染めていくんですけど、日に日に枯れていく姿を見て、枯れていくところも綺麗だなぁという思ってたら、それが形になりました。笑
多分私、綺麗なだけでは物足りないんだろうなって思います。

── 瀬戸さんらしい。笑  この茎のかたちはどうやって?

自然と何も考えず、勝手に手が動いて形づくる感じ。本物のお花の茎はもっとしっかりしていて太いんですけど、太くするのがめちゃ大変やな〜って思って、とりあえず1本付け足したら少し太くなって、真っ直ぐのままだと本物の花みたいだから、それは私らしくないと思ってクルリンって上に曲げてみた。笑
そんな感じで、その時その時でつくっています。だからその時々の気持ちを作品に乗せるって言うか、気持ちがエッセンスになって表現として現れるっていうところがあるかもしれない。


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──そういうのも瀬戸さんなりのルールがありそうですね。

どうなんだろう、手が自然と動く方に身を任せているから、何かを目指して自分を追い詰めることはしてないかも。でもそれは手抜きではなくて、自分が楽しいと思える方に進んでいくのが私らしいことかなと。

作品が完成したら次にインスタグラムにアップするんですけど、その瞬間も楽しい。言葉と作品が組み合わさる瞬間、自分でも作品に対して見る目が変わる時があります。

──言葉と組み合わさって仕上がるんですね。じゃあ、言葉も瀬戸さんにとっては重要な意味がありそうですね。

ひとつの言葉でもいろんな解釈が生まれて色々想像が膨らむから、その感じが楽しい。作品一つ一つ作っている時の想いもあるけれど、インスタでの発信はその時の自分の気持ちを表していることが多く、日々自分の感じたことを作品とともに記録している感じかもしれませんね。

作品に添える言葉は今でも落ち込んでいた時の名残があって、時折言葉が重たかったり、1度読んでも分からないようなことを綴ったりしている。

──おぉ、深いいですね。


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──普段から言葉って意識している?

いろんなことを記憶にとどめることに興味があって、今日あったこととか、その時感じたこととか、感動したこととか、気持ちが動いた瞬間を残しておきたいみたいなのはあります。

──気持ちが動いた瞬間。いいですね。私は結構スルーしているかも。

そう? でもきっと何かを思うじゃないですか、いいな〜だったり、なんか違うな〜だったり、それを意味深な言葉に変換するっていうのが好き。

──意味深。笑

素直に表現するとどう思われるかなって気にする自分もいるし、誰かを傷つける可能性もあるから、あえて意味深にしたくなるのかも。わかりやすい言葉は伝わりやすいけど、伝わりすぎると相手が深読みしてくると思うから。あえて、想像させてそれを楽しんでもらうみたいな。私、天邪鬼なんじゃないですかね。伝えたいけど伝えたくない感じ。笑


〉後編につづく
自分の楽しいと思うモノを表現する、それが瀬戸さんが創る「ソワ」の世界観。後半は「ソワ」の世界観を作り出している瀬戸さんのルーツを探ってみました。



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〈プロフィール〉
瀬戸 望| Nozomi Seto
京都市立芸術大学 染織専攻卒業。服飾雑貨メーカーで商品企画や媒体編集として働く傍らスタートしたアクセサリーブランド「Flying Gallop」を、2020年装心具ブランド「ソワ」にグローアップし、本格的に作家活動を開始。形のない気持ちをとらえることを重要視し、手染めの作品を中心に言葉とともに発表するなど独自の世界観を築いている。手仕事と古物を愛し、国内外問わず収集した品々と作品を組み合わせるスタイリングを行う。

https://s-o-w-e-r.com/
@sower_setonozomi

note:https://note.com/setonozomi
オンラインショップ:https://s-o-w-e-r.stores.jp/



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