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天皇

🔹天皇の地位

大日本帝国憲法(明治憲法)では、天皇は国政に関する最終的な決定権限を有する主権者とされていました。
そのため、大日本帝国憲法の下では天皇が一番偉かったといえ、これを天皇主権と言います。

しかし、日本国憲法1条では、
「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。」
と制定して、天皇は象徴としての地位にとどまるものとしています。
したがって、日本国憲法の下では、一番偉いのは国民であり、天皇ではありません。
日本国憲法では主権者は国民とされています。

🔹皇位継承

日本国憲法2条
「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」
世襲制は、国民の意志とかかわりなく天皇の血縁者に皇位を継承させる制度なので、民主主義の理念及び平等原則に反するものといえますが、憲法では天皇制を存続させるために必要と考えられて例外的に皇位は世襲のものと規定しています。

具体的な継承順位等については皇室典範というルールで定められています。
憲法上、皇位の継承については世襲制が規定されているのみで、女子の天皇即位は禁止されていません。
しかし、皇室典範によって、女子の天皇即位は禁止されています。

🔹天皇の権能

(1)範囲
天皇は、憲法の定める国事行為のみを行い、国政に関する権能はありません。(4条1項)
国事行為は形式的、儀式的な行為です。
国事行為は6条と7条に書かれています。

6条
①国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命。
②内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命。

7条
天皇は、内閣の助言と承認(3条)により以下の国事行為を行います。
①憲法改正、法律、政令及び条約を公布。
②国会を召集。
③衆議院を解散。
④国会議員の総選挙の施行を公示。
⑤国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証。
⑥大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証。
⑦栄典を授与する。
⑧批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証する。
⑨外国の大使及び公使を接受する。
⑩儀式を行う。

(2)代行
①摂政
天皇が成年に達しない場合や、精神、身体の重患又は重大な事故により自ら国事行為が出来ない場合、天皇の権能は摂政が代行することになっています。
(皇室典範16条)
この場合、摂政は天皇の名で国事行為を行います。

5条
「皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。」

②国事行為の委任
摂政を置くほどではないけど、天皇が国事行為を行うことが出来ない場合(例えば、海外旅行や病気の場合)に天皇は、国事行為を他の人に委任することが出来ます。(4条2項)

🔹皇室の財政授受の議決

8条
「皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。」

皇室へ財産が集中することや、皇室が特定の個人や団体と特別な関係を結ぶことで不当な支配力を持つことを防ぐために、皇室の財政授受については国会の議決が必要と決められています。

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