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ショッピングモールのデベロッパーの種類

ショッピングモールのデベロッパーには様々な成り立ちがあります。日本のショッピングモールは小売業から派生したものがその走りとして代表的です。
2020年時点で、ショッピングモールのデベロッパーを分類するとどうなるか?という整理をしてみます。
(※最初から逃げを書いてしまうのも何ですが、知識の偏りがあるので、間違いや不足があれば是非コメントなどで教えて下さい…)

1.小売業発祥

日本のショッピングモールの代表的なデベロッパーは、小売業発祥のデベロッパーです。小売業発祥のデベロッパーは、自らの店舗に付属する専門店街が大きくなり、ショッピングモールを形成したというのがおおよその成り立ちです。
現代において代表的なのはイオン(8267)子会社のイオンモール(8905)(屋号は「イオンモール」)です。GMS(総合スーパー)のイオンが核店舗として入っているのが特徴です。日本と中国、アセアンで約200施設を運営しています。(※今回整理していて気付きましたが、ショッピングモールをメインにするデベロッパーで唯一の上場会社でしょうか?)
イオンモールの少し特殊なところはその来歴です。かつてダイヤモンドシティというイオン(ジャスコ)と三菱商事の合弁会社があり、その会社と、イオンモール(旧名イオン興産、イオン独資)が合併して今のイオンモールが成り立っているという経緯があります。また、イオンリテールが開発していた一部の施設もイオンモールに運営が統合されています。そのせいか、イオンモールは施設の雰囲気が何種類かあるように感じられます。
この他イオンの子会社ではイオンタウンOPAイオンリテール(自ら小売も運営)といったデベロッパーが存在します。イオンタウンは大和ハウス系列の会社との合弁を子会社化し、OPAはダイエーグループのファッションビル運営会社を子会社化したという、それぞれグループ外に発祥があるのも特徴的です。

この他の小売業発祥のデベロッパーには、
・セブン&アイホールディングス(3382)子会社のセブン&アイクリエイトリンク(屋号は「ARIO(アリオ)」など、イトーヨーカドーが核店舗)
・イズミ(8273 自ら小売も行い、屋号は「ゆめタウン」等)
・パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532 ドン・キホーテ、長崎屋等)の日本商業開発日本アセットマーケティングユニー(屋号は「ウォーク」など)
・高島屋(8233)子会社の東神開発(玉川高島屋SCが代表的)
といった企業が、いずれも多くの施設を有して展開しています。

2.鉄道発祥

都市部の商業施設として代表的なのが、百貨店と並んで鉄道系の駅ビル・ショッピングモールです。
中でもJR東日本(9020)のルミネアトレJR東日本都市開発が代表的で、東京におけるルミネのブランド力は圧倒的で特筆に値します。好立地を武器に有名ブランドを集積、中小規模のブランドにはそのブランドの看板になる店舗を誘致し、新陳代謝が活発なショッピングモールの構築に成功しています。最近は乗降客数の多い駅ビルのみならず、駅を離れた場所(ルミネ有楽町、アトレ竹芝)にも展開をしています。その他のJRグループでも同様の子会社展開をしています。

私鉄が展開しているショッピングモールも多くあります。代表的なのは、
・東急(9005)子会社の東急モールズデベロップメント(屋号は「東急スクエア」など)
・阪急阪神ホールディングス(9042)子会社の阪急阪神ビルマネジメント(「阪急西宮ガーデンズ」など)
です。
JRの子会社は、既に幹線とそれに付随する不動産を持っている前提で、自社不動産の有効活用という視点でのショッピングモール展開が強いように思われますが、これら私鉄は、鉄道事業の拡大のためにショッピングモールのデベロッパー機能を有するに至っている(=乗降客数の拡大や地域住民の増加のためにショッピングモールの開発を進めてきた)という点で性格が異なると考えられます。
もっとも、私鉄の商業施設は百貨店を中心の展開がより代表的と言うべきかもしれません。これは日本の商業施設の歴史が百貨店に始まっていることの影響もあると考えます。

3.不動産業発祥

小売・鉄道と並んで施設数が多いのが不動産業発祥の施設です。
三井不動産(8801 屋号は「ららぽーと」「三井アウトレットパーク」、運営は子会社の三井不動産商業マネジメント=旧ららぽーとマネジメント)や、三菱地所(8802)子会社の三菱地所リテールマネジメント(「MARK IS」など)、三菱地所・サイモン(「プレミアムアウトレット」)といった企業が代表的です。

不動産業発祥のデベロッパーは、小売業発祥のデベロッパーと異なり核店舗に特定の店舗を誘導するという必要がないこと、鉄道発祥のデベロッパーと異なり自社の鉄道路線沿線といった特定の立地に拘る必要がない点で、自由な商業施設の展開をしているのが特徴的と言えます。
上に挙げた代表的な2社では、郊外に作らざるを得ないアウトレットモールをグループ内に擁しているのも特徴的で、これはアウトレットモールは一定以上都市から離れたところに作らなければいけない(定価販売の売場から離すため)一方、都市から離れたところでは小売業発祥であったり鉄道発祥のデベロッパーでは開発がしにくいだろうこととも一定の関係があるのかもしれません。
また、マンションやオフィスなどとの複合開発にショッピングモールを付属させている例も多くあります。こういった開発の場合、メインはマンションやオフィスであり、それらの販売促進のために商業機能を充実させているという側面もあるようで、全体的に高品質・高感度な施設づくりに注力している印象があります。

この春には住友不動産(8830)が大規模なショッピングモール事業に初めて進出するということで個人的に注目していましたが(有明ガーデン羽田エアポートガーデン)、新型コロナウイルスの影響で延期になってしまったのがとても残念です。

4.商社発祥

三菱商事(8058)は、先に挙げたダイヤモンドシティ(イオン(ジャスコ)と三菱商事の合弁)の他に、三菱商事都市開発を通じてショッピングモール事業を行っています。
住友商事(8053)は住商アーバン開発(屋号は「テラスモール」など)、双日(2768)は双日商業開発(屋号は「モラージュ」など)を擁しています。
一方で三井物産(8031)や伊藤忠商事(8001)、丸紅(8002)、豊田通商(8015)には目立ったショッピングモールの事業がありません。(私が知らないだけで出資とかしている会社ありましたっけ…)

商社発祥のショッピングモールは、あまり共通した特徴がないように思います。(三菱商事系列は都市部の小規模が多く、住友商事は郊外高感度、双日は郊外、など…)
ダイヤモンドシティが合弁のまま残っていたら商社系列のショッピングモールデベロッパーの代表格、となっていたかもしれません。

5.跡地活用発祥

工場跡地などをショッピングモールとして有効活用するパターンのデベロッパーも数多くあります。
この類型のデベロッパーは、大抵は単独店舗のみである(運営会社が複数施設を管理することが少ない)ことが特徴です。積極的に土地を確保して施設を開業する、というよりは、遊休不動産の有効活用、というのが先に立つためでしょうか。
Independent Shopping Center(ISC)という独立系ショッピングモールの連携団体がありますが、この団体は製造業などの子会社でデベロッパーを行っている企業の施設が連携しているという点で、この類型の代表的存在と言えるかもしれません。

最近は日本郵便(6178)が「KITTE」の屋号で展開を始めたのがこの累計の新しい動きですが、これは、駅前の大規模郵便局が遊休地になり、その活用を進めていることもあるようです。

6.商店街・商工会など小規模事業者の集合体発祥

主に地方において、商店街や商工会といった、小規模小売業者が連携してショッピングモールを設立し、核店舗としてGMSや百貨店を誘致する、という動きも過去にはありました。また、第三セクターで自治体の資本も入っている例もあります。

青森県五所川原市の「エルム」はその好例です。かつてイオンモール(当時のイオン興産)が隣接自治体に進出した際に、五所川原の地元商業者が五所川原街づくり株式会社という第三セクターを設立し、イトーヨーカドーを誘致したショッピングモールです。
私も一度訪れたことがありますが、失礼ながら青森のあの立地には不釣り合いなぐらいの良いテナント構成で驚きました。

大まかな分類は上記のようになると考えますが、ここの類型ごとのより詳細な分析や、企業毎のショッピングモールの特徴といった分析も進めてみたいと思います。
かなり長くなってしまいましたが、一旦の類型整理はここまで…

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