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【コパ・デル・レイ】アトレティックがバルサを打ち負かす!【4回戦 アトレティック対バルセロナ】

いつもレビューをお読みいただき、ありがとうございます。

今回はスペインのコパ・デル・レイ4回戦 アトレティック対バルセロナの試合を観戦しましたのでレビューを書いていきたいと思います。

ちなみに両チームのスタメンはこちら。

なお、両チームの配置は以下の通りです。

・用意周到だったアトレティック


まず試合が始まると、バルセロナはいつもの通りポゼッションによって試合を支配しようとします。

対するアトレティックは、FWの2人は無闇にプレスなどはせず中盤、特にアンカーのブスケツへのパスを繋がせないように立ち位置を取りました。
CBでパスを交換する分には自由にさせ、SBへのパスを出させるよう誘導します。

シャビ政権のバルセロナは、通常ですと中盤のブスケツからSBや2人居るセントラルMFにボールを供給、前進を図ります。
ブスケツが仮にマークされていた場合、セントラルMFのどちらかがブスケツと同じ高さまで下りてきてボールをもらいに来ます。
ですが今回のアトレティックはGK以外は全てマークをつけて、ひとりたりとも浮いた選手が出ないようにしてしまったことで、パスワークを遮断してしまいました。

SBについては比較的マークが緩くなっていたので、勿論CBとしてはパスをそちらに通して前進を図ろうとします。

ですがSBにパスが通ると、アトレティックはその動きをトリガーにして一気にプレスを掛けに前に出てきます。
この際、サイドハーフとSBの2人でボールを刈り取りに襲い掛かっていきます。
ここのタイミングでウイングはフリーになりますが、今回の試合で言うとダニ・ガルシア、イニゴ・マルティネスが予防的マーキングをしていることからパスが容易に通らなくなっています。

アトレティックは今回の守備から分かるように、かなり用意周到に準備をし、バルセロナを打ち負かそうと虎視眈々と狙っていました。

・電光石火のムニアイン、超絶技巧のフェラン・トーレス


このプレスにパスが通らなくなったバルセロナは左サイドでノッキングを起こし、パスミスを犯します(後述しますが、アルバの衰えすらも見通してこの戦術を採ったように思えました。)。
右サイドを一気に破るとクロスをゴール前に送りますが中には合わず、左へとボールが流れていきましたがそこをアトレティックの10番、ムニアインが見逃しませんでした。

ループ気味にシュートを撃つと、テア・シュテーゲンの上を破り逆サイドのネットに突き刺さり、アトレティックが先制します。
元スペイン代表なだけあり、テクニックは折り紙つきではありましたが、それでも素晴らしいゴールでした。

得点後もムニアインは高いスキルとキープ力を活かして、SBの押し上げを促すだけでなく自身もドリブルで襲い掛かってくるだけに、バルセロナはこの後もかなり手を焼くことになります。
対するバルセロナもそのまま手をこまねく訳でもなく、アブデとフェラン・トーレスの位置を入れ換えるとすぐに反撃に出ます。

なかなかボールが繋げなかったバルセロナはサイドの幅をウイングに取らせ、右サイドのダニ・アウベスにはインナーラップを、左サイドのアルバには偽SBの動きをさせることでポゼッションを回復しました。

そこから反撃を開始したバルセロナは、左ウイングのフェラン・トーレスが意趣返しをするかのような巻いたボールでアトレティックゴールを陥れ、前半20分で試合は振り出しに戻ることとなりました。


・ブスケツを封じたヴェスガ、出色の出来


今回、試合を見ていく中でムニアインは非常に素晴らしい出来を見せていましたが、影のMVPとも言える選手がもうひとり居ました。

それはセントラルMFのヴェスガでした。
攻守に気の効いたポジショニングを取っていましたが、特筆すべきはバルセロナのビルドアップ時のポジショニングでした。
中盤のアンカーや、3バックの中央に入ったりするなど変幻自在の動きを見せるブスケツに今回120分フルにマンマークでついていく動きをしつつ、ボールを奪うとすぐN・ウィリアムズやムニアインに供給していきました。

シャビ政権で正にプレーメーカー、心臓の役割を担う選手にマンマークをつけて消すことで、パス能力とドリブルによる前進に不安のあるアラウホも消し、最終ラインからのビルドアップを実質ピケのひとりだけに担わせる形にしてしまいました。

もちろんピケだけで最終ラインからボールを捌くことなど不可能ですから、バルセロナはまたもや機能不全に陥ることとなってしまいました。
マルセリーノ・ガルシア・トラル監督の戦略も勿論素晴らしいのですが、それを120分完遂したヴェスガも出色の出来と言う他ありませんでした。

これに対してウイングの位置をまたもや入れ換え、アルバを偽SBの位置で使うことでポゼッション回復を図ろうとしましたが2度目は通じず、逆に32分、44分、45分と3度も決定機を作られてしまい、終始押されながらも何とか前半は終了しました。


・選手交代でリズムを握ろうとするバルセロナ


後半開始時にバルセロナはアブデ↔ニコ、60分に怪我明けのA・ファティ↔ジュグラ、ガビ↔F・デ・ヨングと立て続けに選手を投入してリズムを変えようとしてきます。

また、前線からのプレスに終始手を焼き、ヴェスガに消されていたアラウホとピケの位置も入れ換えて、バルセロナはパスワークを復活させようと試行錯誤してきます。
また、アブデに代えて投入されたニコは右ハーフスペースに位置させ、大外はダニ・アウベスに担当させる形を取るという形も取りました。

しかし流れは大きく変わることなく、中盤は間延びしてしまい、流れはますますアトレティックに傾くこととなりました。
何故かと言えば、アトレティックはバルセロナが第一プレッシャーラインを掻い潜るとすぐにリトリート→4-4-2の陣形にセットしてからのプレスを敢行していました。

対するバルセロナはポゼッションに固執するあまり、アトレティックが陣形をセットする時間を結果として作ってしまっていました。
以上の結果から、バルセロナは安定したポゼッションが出来ないばかりか、ポゼッションしても満を持して跳ね返される、という結果となってしまったのです。
アトレティックは勢いを増し62分、65分、84分と決定機を作られ、86分にムニアインのFKからI・マルティネスが押し込み、遂にバルセロナ万事休すか、と思いきや、92分にダニ・アウベスの折り返しからペドリがダイレクトボレーを叩き込み、激戦は延長戦へと持ち越されることとなりました。


・衰えたアルバがPK献上、バルセロナ散る


延長戦に入ると、雨の中の激戦だったこともありA・ファティとペドリが再度負傷してしまい、交代出場の選手に交代枠を使ってしまいました。
F・デ・ヨング等がイエローカードを貰いつつも何とか、息も絶え絶えに戦っていたバルセロナでしたが、遂に力尽きる時が来てしまいました。

終始アルバを圧倒していたN・ウィリアムズがクロスを上げた際に、アルバの右手に当たってしまい、VARの結果PKとなってしまいました。
2022年1月現在、アルバの代役として同ポジションのDFのガヤ(バレンシア)獲得の噂が上がっていますが、今回のような強度の高い試合ではもうアルバはSBとしてはフル出場は難しい、というシャビとGMであるアレマニーの判断なのでしょう。
そうなると偽SB採用も頷けますし、ウイング獲得にまず動いた移籍市場での選択も、今なら納得、となります。

とはいえ、ガヤ獲得がまだ出来てない以上はアルバに頼らざるを得ない訳で、まだまだチームに問題山積、と言える状態が変わっていない、と分からせるPKでした。

このPKをムニアインがねじ込み、遂にアトレティックがバルセロナを突き放し、その後の追撃も振り切って、勝利を手にすることとなりました。


・おわりに


今回の試合では、闘える選手とそうでない選手がハッキリと、色濃く分かれました。

デストやブライスワイテは、出場はしたものの何をしていたのか、何のタスクを負っていたのか、我々に分からせるような動きは最もフレッシュな状態にも関わらず、一切出来ていませんでした。
ファティも9番の位置に入ってはいましたが、ペドリやフェラン・トーレスのように攻撃で決定的なクオリティを見せることは出来ていませんでした。

カップ戦は敗れましたが、リーグ戦はまだまだ続きます。
この激戦のショックを乗り越え、闘える選手と、そうでない選手をふるい分ける意味では最高の一戦だったのではないか、そう考えるしかない、と思えるほど、バルセロナにとっては重い、重い敗戦でした。

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