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【コパ・デル・レイ】形にならないもどかしさ【準々決勝 ラージョ・バジェカーノ対マジョルカ】

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この記事では、コパ・デル・レイ 準々決勝、ラージョ・バジェカーノ対マジョルカ戦のレビューを書いていきたいと思います。

両チームのスタメンとシステムはこちら。

マジョルカは新戦力のセルヒオ・リコ、ジオバンニ、ムリキをさっそくスタメン起用。

マジョルカは02-03シーズン以来の優勝を目指し、積極的に新戦力であるGKのセルヒオ・リコ、SBのジオバンニ、FWのムリキを絡めた4-4-2でスタメンを組んできました。

それに対してホームのラージョ・バジェカーノは約40年前の準決勝進出が最高成績。
今回はそれと同じところ、若しくは更に上の決勝を目指して、既存戦力をそのまま活かせる4-2-3-1でマジョルカを迎え撃ちます。

・ラージョとマジョルカ、明暗分かれる


ラージョはサイド、マジョルカは長身FWムリキのポストプレーを起点とした攻撃でそれぞれ主導権を握ろうとします。

スピードに乗った攻撃をしようと、マジョルカは中盤を省略してロングボールをどんどん前線へと送り込みます。
マジョルカのゲームモデルとしてはそこからムリキが競り勝ち、落としたボールを中盤が素早く拾ってサイドへ展開…という形に持ち込みたかった、というのは容易に分かりました。

…ですが、実際はGKのセルヒオ・リコ、CBのバリエントとルッソから出てくるロングボールは精度の低いものが多く、ムリキが無理やり収めて何とか展開するという形が目立ちました。
もちろんそんな調子ですから、落とした先の中盤やサイドも始めから難しい局面でボールを貰うことが多く、即時奪回を目指してゲーゲンプレッシングを掛けてくるラージョの守備網に何度も奪われてしまい、ロングボールを追いかける→ボールを取られる→また守備に走る、という悪循環。
普段は久保やセビージャ、ダニ・ロドリゲスを絡めたタレントでショートパスを繋ぎつつSBのマフェオやJ・コスタが攻め上がりクロス、という形を志向しているだけに、ロングボールを使うにしても繋がる確率を高くするためにいつ、どのタイミングでボールを入れるのか、こぼれ球をどう拾うか?拾えなかったらどう守るのか?が明らかに決まっていない、個人の頑張りに依存する形になっていました。

それに対してラージョはゲーゲンプレッシングと超攻撃的プレス、サイド攻撃を志向しており、完成度はマジョルカに対して段違いのものでした。
マジョルカが繰り出すロングボール攻勢に対しても出足の早いゲーゲンプレッシングでこぼれ球を絡めとり、サイド攻撃に転じれば10番のポジショニングをするMFトレホが左右に動いてボールを引き出し、幅を取るSBやマジョルカのCBとSBの間に位置を取るウイングにボールを送り込んでいきます。

システム的には4-2-3-1から3-2-4-1に変形し、上記のトレホを経由する形だけでなくGKを含めて最終ラインからビルドアップする際にはSBからセントラルMFへ斜めに楔のパスをつけ、そこからトレホや直接ウイングへ展開、という形も持っており、完成度はマジョルカの比ではありませんでした。

難があるとすれば、GKのディミトリエフスキがミドルパスが出せない為、場面をひっくり返すことが出来ないことでしょうか。

GKから出るのはロングボールかCBにつけるショートパスの2択になりますが、ショートパスはともかくロングボールに関しては若干精度が低いので、低い位置から繋ぐとなると辛抱強く繋ぐというマインドが必要になると思われます。


・外を捨てたマジョルカ、サンドするラージョ


守りの局面では両チームとも4-4-2のゾーンディフェンス、というのは変わりませんが、ボールを何処で取るか?という部分で違いがありました。

ホームのラージョはサイドハーフ、対するマジョルカは最終ラインでそれぞれ設定されていました。
ただ、ラージョに関してはまずサイドに誘導→サイドハーフにボールが入った時点でラージョのサイドハーフとSBがサンドして取る、という明確な狙いがあったのに対して、マジョルカはラージョに押し込まれたことでボールの取り所が結果として最終ラインになった、という違いがあります。

マジョルカは特に左サイドを何度も切り崩され、サイドの守備に関しては捨てていた節があります。
具体的に言うと、まずラージョの右サイドハーフのイシがマジョルカのCBルッソとSBのJ・コスタの間に立ち、最終ラインを固定、ピン止めしに掛かります。
そこへSBのバリウが攻め上がってくるとひとつのエラー、迷いがマジョルカ守備陣に生まれます。

『サイドハーフとSB、どちらにマークにいけばいい?』

迷った挙げ句、マジョルカ守備陣としては『サイドを切り離し、高さのある中央で跳ね返す』という選択をしました。
よって、サイドを捨てたような形になってしまった、と考えられます。

イシが上図のポジショニングをすることで、CBとSBをピン止めしつつ、間受けをする形を作ることが出来る。


・ルイス・ガルシアは堅守速攻が好き?


これだけ結果として不利になってようやく、マジョルカのルイス・ガルシア監督はダニ・ロドリゲスとセビージャを56分に、久保に至っては76分に投入していつものように足元で繋ぐサッカーへと移行を図ります。

特にダニ・ロドリゲスについては相手につかれていてもボールを前進させられることもあってか若干ながらマジョルカが盛り返します。
しかしながら、逆転するには時間が足りず、前半に与えたPKによる1点を守りきったラージョが準決勝進出を決めました。

ダニ・ロドリゲスやセビージャ、久保が入ってからのマジョルカはいつものペースを取り戻して攻め始めただけに、あまりにも痛い敗戦でした。
しかも、クラブとしてはカップ戦準決勝進出が掛かっていた試合で新戦力を3人ともぶっつけ本番で使い、挙げ句の果てには慌てて主力を投入して負ける、という最悪の負け方。
責任問題に発展してもおかしくない敗戦なだけに、あまりにも、あまりにもダメージの残る敗戦となりました。

余談ではありますが、今回の采配から見ても本来は堅守速攻が好きな監督なのだろうな、とルイス・ガルシア監督を見ていて感じました。
何故なら、イ・ガンインや久保、ダニ・ロドリゲスの3人同時のスタメンは今まで1度もなく、また今回右サイドハーフに元来DF登録のジオバンニを起用しています。
カップ戦の1発勝負だっただけに、守備から入ったとも言えますが、そのあとの交代も含めてあまりに稚拙だった、と私個人は感じました。

ただ、ボールホルダーへのプレッシングについては強度も高くいけていただけに、ぶっつけ本番の布陣だったにしてはしっかりと浸透していた部分であり、この試合の数少ない光明ともなりました。
短い準備期間でプレッシングを教え込める指導力も考えると、やはり元々は堅守速攻が好きな監督なのだろうな、ゲーゲンプレッシングを軸に守備からリズムを掴みたい、クロップ監督時代の往年のドルトムントのようなチームを作りたいのだろうな、と感じてしまうのです。

ダニ・ロドリゲス、久保、イ・ガンインの起用法を見ても、頑ななまでに久保とイ・ガンインはローテーションさせたり、セビージャにしてもフルでは使わない(セビージャに関しては体力的なものが大きいとは思いますが、それを差し引いても、出場させないデメリットの方が大きい…)と、フィジカル的側面で選ぼうとする傾向がある、と感じます。

以上のことから、堅守速攻が元々やりたい監督なのだろうな、と思うのですが、今回の負けを鑑みると、中盤にボールプレイヤーを並べて、SBの攻め上がりを引き出してクロス→ムリキ等の長身FWで勝負、というのが最もプリメーラ残留に当たって無難な戦術ではないだろうか、と感じてしまいます。。


・おわりに


ルイス・ガルシア監督の戦術的志向でも触れましたが、マジョルカがカップ戦敗退したことをうけて、今季の目標はプリメーラ残留になっていくと思われます。

そこに向かっていく為には、少なくとも今季は久保達ボールプレイヤーの力は絶対に必要になってくると思われます。
イ・ガンインにしろダニ・ロドリゲスにしろ、4-2-3-1の3のポジションであればどこでも出来る選手達が揃っていますし、マフェオのような攻め上がりに特色がある選手もいます。
ボールを握って攻める、失ったらゲーゲンプレッシングを掛けて即時奪回を目指すチームならば今のチームのスカッドを活かしつつ監督の得意な戦術を落とし込む、という形に持っていくことが出来ます。

久保が来季もプリメーラで闘う姿を見たい我々としては、ルイス・ガルシア監督のここからの采配は注目していきたいと思います!

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