物理チャレンジ JPhO 第一チャレンジ実験優秀賞までの紆余曲折 - 1.準備編
こんにちは、Nyanyanです。いまさらとなってしまいましたがJPhO(物理チャレンジ)の第一チャレンジで実験優秀賞をいただいたことに関して記事にまとめてみようと思います。全3回です。
この記事は実験レポートを書く方々の役に立てたら良いな、と思いながら書きます。
今回は「準備編」として、実験を始めるまでの思考過程、準備の内容を記事にしたいと思います。
本記事で解説するレポートと使用したプログラム、実験結果の映像はインターネット上に公開しています。内容はとても細かく量も多いですが、ぜひご覧ください。以下のリンクです。
https://github.com/Nyanyan/Physics-Challenge
1. 準備編: https://note.com/nyanyan_cubetech/n/n9fc0ad577419
2. 実験編: https://note.com/nyanyan_cubetech/n/n4c869fee2d18
3. レポート編: https://note.com/nyanyan_cubetech/n/n4646467a4e4d
JPhO 物理チャレンジとは
主に高校生向けの「全国物理コンテスト」です。詳細は以下のページをご覧ください。
http://www.jpho.jp/
このコンテストで上位入賞をした人の一部は色々あった後に国際大会へ日本代表として出場することもあります。
このコンテストは第一チャレンジと第二チャレンジに分けられ、第一チャレンジは実験レポートと筆記試験(マーク式)、第二チャレンジは実験試験と筆記試験で構成されています。今回私が記事に主に書くのは太字で示した第一チャレンジの実験レポートです。
どんな課題が?
課題はとてもシンプルです。つまり自分で「何をするか」を考えて実験する必要があります。私が出場した2019年の実験課題を見てみましょう。
「水中を落下する物体の終端速度を測ってみよう」
「終端速度は、物体が同じ形であっても、大きさや密度によって変わりま
す。どのように変わるのか調べてみましょう。」
終端速度という言葉は高校物理の教科書にも登場する言葉ですが、教科書ではさらっと流されているため、実際に終端速度についての実験をすることは(普通に高校生活を送っていては)まずありません。偉そうに言いますが、とても良い課題ですよね…
まずやったこと - 4月上旬
まず私は学校にある実験設備について先生に聞きました。そうすると、写真のような筒があることがわかりました。
とりあえずこれを水で満たしてものを落とせば実験できそうです。
最初に考えた実験方針 - 4月上旬
さて、筒の中で物体を落下させると、当然ながら水は物体に押しのけられ、物体と筒の壁の間の(比較的)狭い隙間を通ることになります。このとき、物体には水による純粋な抗力だけでなく、水を筒の壁が生み出す余計な抗力もかかるのではないかと考えました。
実験設備の関係上このような筒状の入れ物を使うしか方法がないため、上記の抗力をモデル化することで物体の正確な終端速度を算出しようと思いました。
が、モデル化に必要なデータを集めるほどたくさんの内径の筒はないし、買うにしてもかなりのお金がかかってしまいます。断念。
余談ですがこれは後々の実験方針にも関係する寄り道でした。続きを読んでいくと綺麗に伏線回収すると思うのでご覧ください(?)
最終的な実験方針 - 4月中旬
じゃあもう筒の壁と水による抗力は無視できるほど小さな(小さいと私が思う)物体でしか実験しないことにしましょう。
じゃあなんの実験をしようかと考えると、私にはこれしか浮かびませんでした。
「変な形の物体を落として抗力をモデル化すれば面白いんじゃないか」
まず実験課題は「終端速度を測ってみよう」というものなので「抗力をモデル化」なんてあまりにもオーバーキルですね。でも私はモデル化大好き人間なのでこの方針で決定しました。
どのように測定するか - 4月中旬-下旬
ここでプログラマーの血が騒ぎました。
「動画解析で全部済むんじゃね」
物体を落下させる動画を撮影して、それを自分で書いたプログラムに投げると自動で位置、速度(符号付きの速さ)、加速度を出してくれるようにすればとても楽なんじゃないか。と。しかも時間的に連続した値がいっぱい(それはもう、いっぱい)取れるのでとっても良いではないか!
そして自分でプログラムを書くなら以下のような細々したことにも気を使えるのではないか、と思いました。
・水による屈折の考慮
・外れ値の除外
・データの平滑化
具体的なプログラムの内容はこの記事では書きません。気になる方は本記事冒頭で紹介した私のGitHubをご覧ください。
プログラムを書いたあとは、空気中で物体を落下させて重力加速度を求める実験をすることでプログラムの動作を検証しました。また、平滑化などの処理に関する定数を決めました。
準備編まとめ
少なくともゴールデンウィークには実験を開始しないと間に合いません。新学期が始まったらすぐに(始まる前でも)実験方針とそれに必要な材料を揃えましょう。
ただ今年は話が別ですね……
では、また次回の記事でお会いしましょう。次は実験編を書く予定です。
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