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物理チャレンジ JPhO 第一チャレンジ実験優秀賞までの紆余曲折 - 2.実験編

こんにちは、Nyanyanです。いまさらとなってしまいましたがJPhO(物理チャレンジ)の第一チャレンジで実験優秀賞をいただいたことに関して記事にまとめてみようと思います。全3回です。

この記事は実験レポートを書く方々の役に立てたら良いな、と思いながら書きます。

今回は「実験編」として、実際に実験を行う中で気をつけたことなどを記事にまとめます。前回の記事は以下のリンクです。

本記事で解説するレポートと使用したプログラム、実験結果の映像はインターネット上に公開しています。内容はとても細かく量も多いですが、ぜひご覧ください。以下のリンクです。
https://github.com/Nyanyan/Physics-Challenge

1. 準備編: https://note.com/nyanyan_cubetech/n/n9fc0ad577419
2. 実験編: https://note.com/nyanyan_cubetech/n/n4c869fee2d18
3. レポート編: https://note.com/nyanyan_cubetech/n/n4646467a4e4d

実験環境が適切か確認する - 5月上旬

前回の記事までで動画解析プログラムを作りました。ここでは実際に水中を落下する物体を使ってこのプログラムが本当に正しく動いているかを確かめました。使用した物体は(もちろん)です。理由はまさしく以下の通りです。

球体にかかる流体による抗力はすでにモデル化されている!

ということで、とりあえず球体を使って実験しました。結果はこんな感じです(実験した結果の一部です)。

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はい、全部茶色が理論値です。なんかズレてますね…え…でも途中までは理論値に綺麗に沿っているのでプログラムは悪くなさそう…
ということで、やっと例の伏線(前回の記事をご覧ください)回収です。結論から言うと、これは「物体を落とす筒の壁と水による余計な抗力」のせいでした。
これを疑って内径の大きな筒で再実験した結果がこちらです。

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良いですね、とても良いですね。とっても綺麗です。全部で3種類の球体(画像)を使って実験したのですが、どの球体でも速さが大体1.2m/sを超えたあたりからこの余計な抗力が顕著に現れるようでした(この値は球体を落下させる容器の内径に依存すると思います)。

ここで余談です。流体による抗力には速さの1乗に比例するものと2乗に比例するものがあります。今回は2乗に比例するとして理論値を計算したのですが、その根拠を少しだけ書きましょう。流体力学ではレイノルズ数Rという数が活躍するそうです。この数字は物体の動く速さと大きさ、その他流体に関する定数によって決まります。そしてこのレイノルズ数が十分小さいとき(R<1)では1乗に、十分大きい時(10^3<R<10^5)では2乗に比例するそうです。この間は…知りません!(先生によれば色々な考えがあるのだそうです)
で、今回レイノルズ数が1の場合の物体の速さを計算してみたのですが、たとえばグラフにした球体では速さが8.03*10^(-5)m/sでした。速さの1乗に比例する抗力が働くのはこれよりも物体が遅く動く場合です。つまりはグラフに描画できないほど遅い場合ですね。また、レイノルズ数が10^3の場合は8.03*10^(-2)m/sとなり、グラフに描画されている点はこの速さを超えているとして無事、物体にかかる抗力は速さの2乗に比例しているとしました。

実験に使う物体を製作する - 5月上旬

実験では結局、円錐に円柱をくっつけた形の物体(円錐状物体を命名)を使うことにし、この物体を作るための材料を買いました。それがこちら。POMです。

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そしてこの材料をこいつでゴリゴリ削ります。私の相棒CNCフライスちゃんです!

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そして出来上がった物体がこちら!

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合計19個作りました。余談ですが後に追加で2個作ります。
赤い球体は重しとして物体が安定して落下するのをサポートするほか、動画解析プログラムで物体を検出するためのトレーサーとしての役割もあります。
この球体自体にかかる抗力については事前に(プログラムが)計算して実験結果から差し引いています。こういうのができるのも自作プログラムの強みですね。

いざ実験! - 5月中旬

ここには書ききれないいくつもの工夫を重ね(詳細はレポートを読んでください)、ついに実験です!その結果がこちら!(一部)

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あれ、なんか点が少ないですね。はい。なんか水中を落下すると途中で大きく揺れ始めてしまい、実験結果が安定しなかったのです。ですので揺れが起こる前までを実験結果として使いました。

無心で物体19個*各3回=57回(あ、素数!)物体を落下させました。

まとめ - 実験編

実験はとにかく丁寧に、スピーディに(あんまりのろのろやっていると水温などの条件が変化しかねないので)やりました。だんだん実験職人になっていく自分がちょっとかっこよく感じました(は?)
5月中旬までには実験は全部やっておくのをおすすめします。そうしないとレポートを書く中で追加実験をしたくなった場合にできなくなります(それが2018年の私です)



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