映画『行き止まりの世界に生まれて』

行き止まりの世界に生まれて

【映画】
Minding the Gap(原題)
2018年 アメリカ
ドキュメンタリー


サックリ観れる映画かと思ったら全然そんなことなくてかなり濃くて深かった。

1時間半くらいの作品なんだが体感的には2時間以上ある気がした。終わって時計を見たけどやっぱり1時間半だった。この作品がそれほど濃かったということか。

ただのスケートボードやってバカ騒ぎして…っていう内容かと思ってたのに。


日常化している家庭内暴力、人種差別、貧困。これらの問題を少年らを通して、またその家族を通して、赤裸々にインタビュー形式で語られていく。

ビン・リューはこの作品の監督だが、ザック、キアーとは昔からスケボー仲間で友達だ。きっと最初はスケボーするところを撮っていただけだったはず。でも歳を重ねるにつれ、色んな出来事が起きてくる。自然と仲間の変化も映し出していくことになったんだと思う。

仲間だからこそ、演技でもない取り繕ってもいない、素直な感情や表情がカメラを通して映し出される。ナイーブな部分までもかなり斬り込んでくる。


イリノイ州ロックフォードという土地を知らないから分からないけど、“ラストベルト(錆びついた工業地帯)”と言われているところから何となく想像は出来る。

そんな中で育った3人。ビン、ザック、キアー。

ビンは、中国系の移民。ザックは、ビンより年上?かと思ったけどあれ?ビンが一番年上か??白人で目立つハジけた存在。キアーは、黒人で一番年下で笑顔が素敵。


ザックは彼女ニナとの間に子供が産まれ、共働きで代わる代わる子育てに奮闘する。
GED高卒認定試験も受け、屋根職人として頑張って働く。
ニナはバーで働く。
しかし、そのうちお互いにストレスで言い争いが始まり、ついにはザックはニナへの暴力まで振るうように。

そんなニナにカメラを向けながらも優しい言葉を投げかけるビン。
「なぜ暴力を振るうのか聞いてみようか?」
「せっかく今うまくいってるのに台無しになる」と返すニナ。
んー。

一方、キアーは父親が厳しく、時に暴力を振るわれていた。
その苦しみから逃れるようにスケボーに打ち込む。

キアーの印象的な言葉
「ある意味ドラッグだ。精神的に追い詰められてもスケボーさえできればそれだけでいい。」
お父さんの言ってた言葉も印象的で“生まれ変わるならまた黒人になれ”
とかね。

この映画には、本当に色んないい言葉もたくさん出てきて、ちょいちょい出てくる看板に書かれてる言葉も面白い。


登場する人たちだいたいが皆んな何かしら問題を抱えているってところがね。でもこれが現実っていうね。
うちも色々あったなぁなんて思い出すよ。


ビン自身も最終的に、自分と向き合わなければいけない場面がきた。
母親の再婚相手に日常的に暴力を振るわれていたのだ。
話を聞くべく母親のもとを訪ねる。
母親は知らなかったと言って、自分も暴力を振るわれていたとも。
それでも17年も一緒にいた。
それは、ニナとザックの関係にも言えるけど、暴力を振るわれてもなお一緒にいようと思う気持ちは…どうなんだろう。分からない。
まさにI don't know.…


最後は、それぞれ自分を見つめ直す。

それぞれ別の道を歩みつつもずーっとスケボーやってる姿が本当にいいなぁ。


寂れた町なんて言っても、車が全然通ってなくて人気もないんだけど何故だか汚くはなくて、比較的キレイな町なのが不思議。
人も車もほとんど通ってない町のビルや駐車場、道路をスケボーで走り抜ける映像が最高に爽快!!

まぁ何よりもキアーの純粋さに心を打たれる。
あとザックとニナの子供が可愛いのよ。男の子なんだけど。

皆んなそれぞれ今も悪戦苦闘頑張ってるのかなぁ。なんてドキュメンタリーだけに変な親近感湧いちゃって、思いを巡らせちゃうよね。


いやぁ、これは本当にいい映画でした。
同じスケボー映画の『mid 90s』とは全く別物の映画でした。

とてもいいドキュメンタリー映画なのでかなりオススメです!!
星4.5!!★★★★

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