ハワード・マークスの投資法、投資哲学

ハワード・マークスは、ハイイールド債やジャンク債投資を得意とするヘッジファンド、オークツリー・キャピタルの会長。


運用資産は8兆円。
株式やその他の投資にも通じるサイクル投資やバリュー投資、リスクコントロールに関して学ぶことが非常に多い。

私は最近まで詳しくは知らなかったが、著書を2冊読んで自分の手法とも似ている部分が多く、学びが多かった。


ハワード・マークス著
投資で一番大切な20の教え
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市場サイクルを極める
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20の教え

1,二次的思考をめぐらす
2,市場の効率性とその限界を理解する
3,バリュー投資を行う
4,価格と価値の関係性に目を向ける
5,リスクを理解する
6,リスクを認識する
7,リスクをコントロールする
8,サイクルに注意を向ける
9,振り子を意識する
10,心理的要因の悪影響をかわす
11,逆張りをする
12,掘り出し物を見つける
13,我慢強くチャンスを待つ
14,無知を知る
15,今どこにいるのか感じ取る
16,運の影響力を認識する
17,ディフェンシブに投資する
18,落とし穴を避ける
19,付加価値を生み出す
20,すべての極意をまとめて実戦する

以上が本のトピックにもなっている20の教え。
順番に見ていく。
『』部分は著書からの引用部。

1,二次的思考をめぐらす

『二次的思考とは。
「これは良い企業だから、株を買おう」というのが一次的思考。
一方、「これは良い企業だ。ただ、周りは良い企業と見ているが、実際は層ではない。この株は過大評価されていて割高だから売ろう」というのが二次的思考。

一次的思考とは単純で底が浅く、誰にでもできることである。
二次的思考は奥が深く、複雑で入り組んでいる。』


2,市場の効率性とその限界を理解する
『市場は基本的には効率的である。
それは「市場は動きが迅速で、即座に情報を織り込むという意味であって、正しいという意味ではない。」
理論をあくまで決断の手がかりとすべきであり、理論そのものに支配されてはならない。』


3,バリュー投資を行う
投資の基本となるのは割安な資産を買うバリュー投資である。


4,価格と価値の関係性に目を向ける
『資本を本質的価値を下回る価格で買う、これこそがカネ儲けをするうえで最も信頼性の高い方法だ。』


5,リスクを理解する
『資本市場理論を構築した学者らによれば、リスクとはすなわちボラティリティである。ボラティリティは投資の不確実性を示すからだ。
このリスクの定義について私は異論を唱える。
(中略)
リスクとは何よりもまず、資金を失う可能性のことである。』


6,リスクを認識する
『リスクが生じる主因の一つは「リスクが低い」場合によっては「リスクが全くなくなってしまった」という思い込みである。』

『投資家が強気になるほど懸念すべき材料は増える。
反対に、投資家が不安を募らせ、リスク回避の姿勢を強めれば、リスク・プレミアムが拡大するとともにリスクは低下する。私はこれを「リスクのあまのじゃく現象」と呼んでいる。』


7,リスクをコントロールする
『リスクコントロールとリスク回避の間に重要な違いがあることを明確にしておきたい。
リスクコントロールとは、損失回避に最適の手段である。
一方、リスク回避は結果として利益回避にもなる可能性がある。』

『オークツリーの投資哲学では「リスクコントロールの重要性」が第一の基本理念となっているが、これはリスク回避とは,全く別のことである。
十分な見返りが得られるときにリスク(特に他の者が極度に嫌うリスク)をとることで、我々は顧客に付加価値を提供しようと努めている』


8,サイクルに注意を向ける
『ほとんどすべてのものにはサイクルがある、と肝に銘じることが必要不可欠だと思う。
原則その1、ほとんどの物事にはサイクルがあることがやがて判明する。
原則その2,利益や損失を生み出す大きな機会は、周りの者が原則その1を忘れたときに生じることがある』


9,振り子を意識する
『サイクルと振り子の振動という表現の間に基本的な違いはない。
(中略)
だが私は1991年の顧客向けレターではじめてこの概念を取り上げた際に、感情・心理の「振り子」という表現をどういうわけか使ったのだった。
それから26年経った今も「振り子」という表現を避ける理由は見つかっておらず、引き続き用いるつもりである。』

「市場サイクルを極める」より、一部省略して引用。


10,心理的要因の悪影響をかわす
『投資家の努力を台無しにする感情の第一は「金銭欲」である。
とりわけ金銭欲が強欲へと姿を変えると大きな影響が生じる。

強欲の対局は恐怖であり、これが第二に考慮すべき心理的要因である。

三番目に論じたい心理的要因は、論理、過去、そして伝統的な規範を無視してしまう人々の性向である。

投資家の過ちを引き起こす四番目の心理的要因は、たとえ明らかにおかしいところがあったとしても「多数派の見方に(逆らうよりも)同調する傾向」である。

五番目の心理的要因は嫉妬だ。人々を「もっともっと」と駆り立てつづける強欲の負の力は、他人と自分を比べることによって、さらに強大になる。

六番目の心理的要因はうぬぼれである。
以下のような状況において、客観性と冷静さを保つことは極めて難しいとされる。
投資パフォーマンスは短期で評価され、比較される。
相場がよい時期にはまちがった判断に基づいて追加的なリスクをとった者が最も高いリターンを上げる。
リターンが高ければ、それだけうぬぼれも強くなる。』

勝率を高めるためにオークツリーで実戦していること
・本質的価値を強く意識する
・価格が本質的価値から乖離したときにとるべき行動にこだわる
・過去のサイクルに関する知識を深め、粋すぎた相場が最終的に報われるのではなく、停滞打撃を受けることを心得る
・誤った水準にある相場がさらに誤った方向へ動いているときには、たいていの場合、その通りであることを肝に銘じる


11,逆張りをする
『逆張り投資家として、(中略)本質的価値に対する考えを維持し、周りがみな売っているときに買うことができれば、それこそが最も少ないリスクで最も高い利益を上げる方法なのである。』


12,掘り出し物を見つける
『賢明なるポートフォリオ構築のプロセスは
1,投資先候補のリスト
2,それらの本質的価値の選定
3,それらの価値が本質的価値と比べてどうなのかという感覚
4,それぞれの投資にともなうリスクと、それらを組み入れることによるポートフォリオへの影響に対する理解
である。』

13,我慢強くチャンスを待つ
『売り手が積極的に売ろうとしているものの中から買うものを選んだ方が、自分で「これが欲しい」と決めたリストに基づいて投資するよりも、高いリターンが得られる傾向があるのだ。』


14,無知を知る
『私は、
1,マクロ経済が将来どうなるかを知ることは難しい
2,未来に関するすぐれた知見を持ち、それを継続的に投資する債の強みにできる者はほとんどいない
ということを強く確信している。
ただし、例外的な点として二つ挙げたい。
・より狭い範囲のことに特化するなら、知見を強みとして発揮できる可能性は高まる。
(中略)だから私は「知りうることを知るよう心がけなさい」と呼びかけている。
・投資家は今現在サイクルや振り子のどこの地点にいるのかを見いだす努力をすべきだ。
そうすれば将来の動きが予測できるわけではないが、起こりそうな事態に備える手助けにはなる。』


15,今どこにいるのか感じ取る
未来の予測にいっそう力を注ぐ、未来は知り得ないことを受け入れ、サイクルの存在をただただ無視するという選択肢もある(要約)。

『ただしもう一つ考えられる答えがあり、これが圧倒的に正しいものだと考えている。
それは、ただ単に自分が今サイクルのどの位置に立っているのか、そして、どのような行動を起こすべきなのかをつきとめようとする、である。』


16,運の影響力を認識する
『短期での投資の成功は、たいていの場合、しかるべきタイミングでしかるべき場所にいたことによってなされうる。
しかるべきタイミングで積極果敢になれる者なら、スキルはそれほど必要ではないのだ。』


17,ディフェンシブに投資する
プロテニスは相手が打ち返せない早くて正確なショットをどれだけ決められるかの「勝者のゲーム」である。
対してアマチュアのテニスはミスが少なかった方が勝つ「敗者のゲーム」である。
これを投資に当てはめて考えると、勝つことと負けないこと、攻めと守りのどっちを重視するのかに正解はない。
オークツリーは「損失を回避することが自ずと全体の収益率を高める」と考えている。


18,落とし穴を避ける
危機から学んだ11の教訓
1,資金調達が容易すぎると、カネは間違ったところへと流入する


2,ふさわしくないところに資金が投じられると、悪いことが起きる


3,資金が過剰に供給されると、投資家は低いリターンと狭い「誤りの許容範囲」を受け入れて、投資先を奪い合う

※誤りの許容範囲は安全域とも呼ばれ、バリュー投資などで有名な概念。
理論価格が100で現在価格が70だとすると、30の安全域があるというイメージ。
解散価値と現在価値の差額。


4,リスク軽視の傾向が広がると、より大きなリスクが生じる


5,不十分な精査が投資損失をもたらす


6,市場が熱狂に包まれると資金は革新的な投資商品へと集中するが、その多くは時の試練に耐えることができない


7,ポートフォリオの中にある見えない断層線によって、無関係に見える資産の価格が連動する可能性がある
追証がきたら関係ないものも売られるということ。


8,心理的要因やテクニカル要因が、ファンダメンタルズよりも強い影響力を発揮することがある
長期的にはファンダメンタルズに向かうが、短期では需給や投資家心理、テクニカル要因に左右される。


9,市場が変化し、従来のモデルが通用しなくなる


10,レバレッジは結果の度合いを増幅させるが、価値の増大にはつながらない


11,行きすぎた状態は修正される

これら11の教訓のほとんどは一つの言い方でまとめられる。
「投資可能な資金の需給バランスや投資意欲がどうなっているのか、身の回りに常に注意をむけよ」

2007年12月17日の顧客向けレター「今回も違わない」より。


19,付加価値を生み出す
『オークツリーが理想とするパフォーマンスとはどのようなものか。
(中略)
相場がよいときには市場と同等のパフォーマンスを、相場が悪いときには市場を上回るパフォーマンスをあげることだ。』


20,すべての極意をまとめて実戦する


以上が簡単な要約とまとめである。

ハワード・マークスのヘッジファンドであるオークツリーの基本はバリュー投資である。
本質的価値を下回る価格で資産を買うことが利益につながる。
それには二次的思考をめぐらせ、深いところまで読む必要がある。

そして重要なのがリスクの概念。


一般に投資のリスクとはボラティリティという認識をされている。
しかしボラティリティなんてなんのリスクでもない。


リスクはお金が減る可能性と考えるべきだ。


これがポイント。


逆張りであり、ディフェンシブな投資であり、そのために必要なのが市場サイクルの理解である。


サイクルの下の方、価格が安いところ、投資家の心理の振り子が恐怖に振れたときこそが投資する最善の機会である。

これを基本にして、技術を高めていくことが大事だという教えである。

考え方としては自分とすごく似ていて、有益な本だったので紹介と要約をまとめた。

「市場サイクルを極める」のほうでは、景気、企業利益、投資家心理、リスクに対する姿勢、信用、ディストレスト・デット、不動産のサイクルをまとめて市場サイクルとして分析。


それに基づいたポジショニングなどが紹介されている。



今回の記事は以上です。
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