見出し画像

劇場版メイドインアビス-深き魂の黎明-4DXを父と初体験してきたレビュー※ネタバレ注意

「4DX見に行かないか。」
LINEの通知で父親から連絡が来た。
僕は1度劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明を父親と一緒に見に行ったことがある。その頃はアニメ知識のみでまだ原作も未研修だった為あまりの衝撃に圧倒されていた事を覚えている。父親はガンダムを中心としたロボや最近は鬼滅の刃、映像研には手を出すななんかも履修している僕よりよっぽどアニメに詳しい人間だが、さすがに「ここまでグロいとは思わなかった」との事。けどそれ以上に心惹かれるものがあり、翌日僕がメイドインアビスの最新8巻まで揃えたのは言うまでもない。そんな時から数日。父親から「4DXを見に行かないか?」と誘いを受けた。
「プルシュカの中身がかかりそう……怖……」
等と返事をしつつ普段あまり外に出ない僕であるがたまには親孝行をしようと朝早くから家を出た為、その時の感想をお伝えしたい。

4DXの揺れ、仕組みを初体験

色々あって上映ギリギリになったものの無事に映画館へ入ることに成功。元々僕は三半規管が弱いので不安が高鳴る。なんとなく前情報として得ていた4DXであるが序盤の揺れや独特の強いハーブティーのような香りがする風、耳元で起こる風等最初はギミック自体に驚いてしまった。世はコロナ対策の為座席は1列ずつ空けて見る形を取っていた。人の頭が目の前に見えないのは快適で良いな、と思いつつ人の少ない時間だから良いが、多い時は僕が驚く衝撃と動きで他人を驚かせてしまいそうな為見るのはしんどいかもしれないと思った。

モヤ、風、揺れ、背中の衝撃、シャボン玉まで出る!

アビスの世界観的に霧に包まれたシーンが幾つかあるがスモークマシーンから少量のスモークが出ていた。但し今回見ていたのは後方席。スモークの煙は真ん中手前へ向けて放出される為、直後の画面が少々見づらくなる。それもまたその空気を実感できるという意味では面白い試みだ。
風の匂いだけはどうにかならないだろうかと少し思ったが、後半戦闘シーンに入ってしまえば耳の横へ掛かる風圧表現の風にも慣れていった。今回は2度目の視聴ということである程度衝撃に備えることも出来たことが良かったと思われる。ボンドルドの武器の風か……となかなか胸が熱くなった。
父親は虫汁や体液が水として飛んでくるシーンや腹や背を叩きつけられるシーンで背中へドスリと感覚があったのが酷くお気に召したようだった。

最後のエンディングシーンで六層へ降りていく描写の中シャボン玉が飛んでいたのがとても印象的だった。プルシュカの冒険へ行きたい、憧れの心や父親たるボンドルドを想って儚く散っていった彼女を想う事が出来る良い演出であったと思った。

祈手(アンブラハンズ)のマントの下服装は全員同じか

ここからは4DXではなく物語上で気になった点をいくつか上げていきたい。途中ボンドルドがヘルメットをすげ替えるシーンが有るがよくよく見るとそれ以前から祈手はほぼ同じ様な服装をしているなと思った。彼らは全ていつでもボンドルドになれる様になっているのだろうと思われる。彼らがいかにして集められたのかは分からないが適合しているのは全て黒笛。かなり高い能力を有していると思われるがその彼らを簡単に切り捨てあまつさえ残機のように扱う。それに対して彼らは何を思うのか。それとも何も思わないのか。

"ご同行願います"はどちらの言葉か

レグが自意識を取り戻した直後四手の祈手によって拉致され六層まで共に落とされてしまうシーン。
今回ボンドルドにすげ変わる場合はボンドルド固定の声に変わっていたが、"ご同行願います"の声は祈手の物だった。それは隷属機で動かされていたのか、彼がボンドルドの指示を受け自分で行ったのかは定かではない。ただもし、指示を受け己自身の決定であの行為を行っていた場合。ボンドルド卿への圧倒的な信仰心でもある様な感覚だ。彼の願いは自分の願い。神への供物であれば喜んで、そんな感覚だ。そこまでの意志を持たせられるボンドルドという人間は、ある意味であの場所の神なのかもしれないと感じた。人間としての感受性を失わなかった事を誉とされたナナチがいることからもあの過酷な環境では精神崩壊や感受性の喪失をしても無理は無いだろう。その中で唯一残るのが精神隷属機で繋がるボンドルドの存在。生かすも殺すも彼次第。そんな状態であればやはり彼は祈手とあの場所の神なのかもしれないと感じた。

探究心の為に人間性を捨てた男

人間性や倫理観を全てかなぐり捨てた様な存在のボンドルドだが、彼には悪意は無い。ただただ探究心の元、意図も容易く行われる所業の数々がいかれているだけなのだ。彼にとってはどの人間も平等に実験材料であり素体なのだろうと思う。そんな彼の祝福と賛美は酷く優しいものであった。もし彼が人の道を外れる事がなかったとしたら、きっとプルシュカや子供達と楽しく暮らす事も出来たのかもしれない。そんな夢の様な話でしかないものの、それはとても幸せな事だと思った。

夜明けの花

プルシュカの仲直りと共に旅に出る、という祈りは彼女自身が笛となりナナチの目を通してボンドルドが共にあるという時点で、かなり人間性を逸脱してはいるが、達成しているとは言える。この先にある闇もまた深いものだがあの夜明けの花があれば、彼らは乗り越えていけるのかもしれない。

少なくとも彼女にとっては死の手前で己を救いあげ幾度となく愛を与えてくれた、自身の言葉で復活を遂げた様に見えた彼を、彼女自身の身体で呪いを防ぐ事が出来たそんな彼をそれでも尚"パパ"と呼ぶのだから。

猫缶代、いつでも待ってます。