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映画感想「シング・ストリート」~いじめ対応のみちしるべ~

2015年 アイルランド・英・米合作 
監督 ジョン・カーニー

音楽がイイ。兄貴がイイ。すばらしい青春映画。
は他でさんざん言われているので、そこはもう深くは語りません。
僕が特筆したいのは主人公コナーのいじめに対する対応です。
冒頭で荒れた公立校に転校した主人公コナーは、結構ないじめにあうんです。
いきなり個室に連れ込まれてどつかれたり、
校長から茶色の靴は校則違反だからと脱がされたり。
しかし、本人はどこ吹く風と顔を上げて堂々と校内を歩き、果敢に女の子に声をかけ、恋をして、バンドを組んで、PVを作り、と青春を謳歌するんです。
大抵、こういういじめにあう話では、最後は克服するにしても、もう少し苦しんだり、悩んだりしてるところを描くものでしょう?
実際にこのようないじめにあったことのある人が見たら「え?そんな簡単じゃないだろ」と違和感を感じるのではないでしょうか。

しかし僕は、この映画の感じよくわかるんです。「そうそう、そうなんだよ!」と心の中で拍手喝采してしまいました。
僕も学生時代、結構ないじめにあったことがありました。
ある日、登校して下駄箱を開けたら上履きがカッターで切り刻まれていたんです。
仕方なく裸足のまま教室に入り席に着いたら、椅子の上に画びょうが並べられていたりして。
その画びょうを取り払って席に座り、ホームルームが始まると担任の先生が僕の裸足に気が付いて「なんで裸足なんだ」て言われたんで、正直に言ったんです「下駄箱開けたら上履きが切り刻まれていましたから」と。
すると担任の教師「なら購買行って新しいの買えよ!」
で、クラスメイトら大爆笑でした。
その後も、いじめ的なことは多々ありましたが、僕は特に気にせず、毎日ちゃんと登校しそれなりに青春を謳歌しました。
バンドはやりませんでしたが、ビリヤードによく行ったり。
色恋の1つや2つもありました。
今考えればあの担任の言葉はひどいもんですが、当時の僕はあの担任の言葉に救われたところあるんです。
 あの担任が熱血教師で、魔女狩り的なことやられたら、もう立ち上がれないほどツラかっただろうと思いますよ。
あのサイテーな言葉だったから、その後もほとんどそのことに触れず無視されたから、僕は顔を上げて立ち上がることができたんです。
あの担任教師や上履きをカッターで切り刻んだ奴より僕は、少なくとも人として劣っているとは思わなかったから。

デリケートな問題ですし、一概なことは言えませんが・・・。
人それぞれ、ケースバイケースで対応策も違うと思います。
されど
この映画は今、いじめに悩む若者たちにとって、一つの対応策を指し示す道しるべにもなるんじゃないでしょうか。

終盤、文化祭みたいな舞台で演奏したとき、「ホモやろー」とヤジられて
「そんなヤジつまんないよ」
毅然と言い放って、空気も気にせず、盛り上がらないバラードを歌いだしたコナーの姿は圧巻でした。
最近の日本の学生さんたちは、空気読むこと、周りの視線に神経すり減らしすぎてる気がします。

自分をしっかりもてれば、人を小ばかにして喜んでるようなちっちゃい人間に劣ることはないんだよ。
という映画だと思います。これは。

2019・5・4