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和歌山県庁での事業評価「廃止」事件を考える

和歌山県で事業評価が廃止されていたというニュース。朝日新聞の伊藤秀樹記者の記事をSAKISIRU新田哲史編集長がTweetして、この問題を知りました。

SAKISIRU読者や「減税派」にとってはお馴染みの「事業評価」を和歌山県がやめていた事実を知って非常に驚きました。まず事業評価に関しては、渡瀬氏の動画での説明をご参照ください。(ナイス減税会様参考になりますありがとうございます)

私も、行政や地方自治はズブの素人ですが、SAKISIRUなど読んだり、渡瀬裕哉氏や減税派の方々に触発されて関心を持ちました。

企業だと事業内容を売上やコストを算出して評価するのが日常なだけに、驚愕と言うほかありません。和歌山県の事業評価廃止は「事件」と表現するべきレベルだと感じました。行政は監視が無いと「怠ける・隠す・逃げる」の典型的な事例だと思います。

先日話題になったColabo問題でも行政の杜撰さ無駄使いも浮彫になり関心も高いです。私自身は、和歌山県ではありませんが、他の県だとしても似たようなことはありえますので、無関心でもいられません。この「事件」を契機に考えるべきことは多いと思いました。そこで知事、県庁部局、県議会、総務省、マスコミの5つの立場に整理して、ツッコミ・検証が必要と思いました

県知事

(1)岸本周平知事「初めて知った」

2022年11月に県知事に当選し12月に就任するまでは、野党の衆議院議員でした。この件を記者会見で就任して初めて知ったと述べています。きっしーさんが会見動画抜粋作成しています。

知事:私が県庁に入らせていただいて半年近く経ちますが、最初に驚いたのは、県庁の仕事が、いわゆるPDCAサイクルが回っていない。チェックが全くないとこの場でも申し上げたと思いますが、監査の結果をいただいて初めて分かりました。事業評価をしていなかった。事業評価をしなかったら、PDCAサイクルが回らない。何で事業評価をやめたのか、私にはよく分かりません

4月25日岸本知事会見抜粋

驚きました。批判や検証、監視が本来の役割とされる野党で、国政が仕事とは言っても地元行政について知らなかったこと自体信じられません。事業評価はネットでわかるはずです。野党議員は本当にこんな程度なのでしょうか。岸本知事も無能とは到底思えません。気がついてはいたが、周囲との軋轢になってもということで、黙っていて「初めて知った」ことにしてるとしか思えません。この動機が気になります。今後、他の県でも国会議員が県知事に立候補する場合に問い質すべきポイントと思います。

なお事業評価についての知事「絶対に必要」と言う強い意志を持った言い回しが気になります。「あって当然」ではないからです。強い反対や何かがあるというニオイを私は感じました。新田編集長も「何かある感」を示唆しています。

なお、和歌山県民も、岸本さんにツイッターで事務事業評価について選挙で要望しています。多忙で無視してしまったのか、残念です。

(2)仁坂吉伸前知事は何してたのか

事業評価廃止についてどう考えだったのか、問われるべきです。仁坂前知事も言い分はあると思います。

前任の木村知事の談合事件辞職を踏まえての就任で公共調達制度改革の実績もあっただけに非常に残念です。

仁坂前知事も退任会見で実績を資料用意しています。立派な資料には敬意を表したいところです。こうした資料を他県の知事も退任に当たって作成させるべきだし、選挙ごとに有権者の信を問う際に作成すべき思います。

仁坂知事も確かに素晴らしい実績で、もっと高く評価されるべきと思います。しかし、コスパの評価の部分がやっぱりダメです。数字が少なすぎます。ついでに記者の質問は、もっとダメです。ネクタイの色がどうとかレベル低すぎで、資料を踏まえた質問が一つもありませんでした。

事業評価をやめた理由について、岸本知事が推測していますが、これが本当なのかどうか。


単に書類仕事を増やすような評価はつまらないからやめましょう、ということで一度おやめになったのかもしれないが、きちんとした評価は絶対に必要だ。

4月25日岸本知事会見抜粋

県庁部局

(3)どこの部局が廃止を起案したのか

事業評価をやめよう」起案はどこの部局から出たのか。起案から決定に至る過程の検証が必要です。そこでの廃止理由を県庁内の会議の書類にあるはずです。担当者は言い分もあり、善として提案したのだから胸を張って取材に応じて当然です。

役所は会議と書類をこよなく愛しているだけに、当然これらを検証することも重要に思います。ところが都合が悪くなると「書類が無い」とか「海苔弁公開」になるオチも想定されます。

(4)「予算審議の作業内容と重なる部分」

朝日の記事で気になったのはココです。「予算審議の作業内容」ということは、これに相当する書類もあるはずで、無いはずがありません。これを出して下さい。予算審議と一体で実施なら「和歌山方式」として注目浴びるぐらいですが、そんなことはありえません。検討は一切していなくて無いか、噴飯もののナンチャッテ書類が提示されるだけでしょう。少なくとも今回問題になった事業で、相当する書類を出せと執拗に迫る必要があります。

県議会

(5)県議会での議論と賛否が確認できない

事業評価廃止について県議会HPを見てみましたが、わかりませんでした。(探し方が悪いだけかもしれませんが)
①県議会への提案はどのような形でされたのか(されてなかったらこれ自体が大問題で、議会無視・民主主義愚弄もいいところです)
②県議会での反対討論はあったのか。議論内容が知りたいですがわかりません。賛成討論あったならそれも確認したいです。
③県議会での賛成者と反対者が確認できないです。

なお、和歌山県議会の議事録検索は探しにくくて仕方ありません。もしわかったら教えて欲しいところです。

総務省

(6)地方交付税で総務省は何をしていたのか

和歌山県の財政を見てみましょう。自主財源が41.5%依存財源は58.5%です。
地方交付税(27.8%相当1,701億円です)を出している総務省は何をやってたのでしょうか。総務省から出向させた人材もいたはずです。

黙って見ていただけですか。黙ってみているだけなら今後は総務省からの出向は不要です。政策評価は総務省でも力入れてたはずです。

事業評価も無いのなら、地方交付税の交付金額の削減は当然です。そもそも地方交付税の算定基準自体が不明確ですが、少なくとも事業評価のレベルに応じて交付税交付を削減すべきです。

都市部の納税者も地方交付税の観点か沈黙すべきではない理由がここにあります。

(7)地元選出の石田真敏元総務相はどうお考えなのか

和歌山県選出の石田真敏氏がちょうど2018年秋に総務大臣就任しています。

市長も経験され地方行政の実務にも詳しい(はず)の石田氏もどうお考えなのか、聞くべきだと思います。地元の行政について「知りませんでした。把握していません。」はあり得ません。

マスコミ

(8)ナマイキに「権力の監視」言う資格なし

メディアの使命として、「権力の監視」が語られます。しかしこの案件を見ると権力の監視ができていたとは到底言えません。詳細は牧野洋氏の著作でも書きましたが、権力と距離も置かず「聞かざる・言わざる・書かざる」が蔓延していると言えます。

見ざる・言わざる・聞かざるの三猿主義

(9)地方紙は何をしていたのか

いわゆる県紙が県庁の都合悪いことは書かないことは疑問でも何でもありません。紀伊民報だけではありませんが、県庁の広告費を勘案すると批判などできようはずもありません。なお、和歌山県では読売新聞が最大だそうで紀伊民報が「県紙」と言えるかは別です。

地方紙の衰退によって政治腐敗が進んだとする米国の事例はメディア関係者が好んで取り上げています。

今回の件を見るとそんなもの大嘘で逆だとわかります。地方紙がグルになって隠蔽していると考える方が妥当です。

(10)朝日新聞の「権力の監視」の自負は?

朝日新聞は、特に「権力の監視」を自負してきたはずです。

今回は伊藤秀樹記者が取材していますが2017年ごろからの和歌山支局は何してきたのでしょうか?「朝日新聞として取材し報じるべき件を怠った」という観点が必要です。和歌山支局長の県庁との関係が適切だったのか(金品授受で書かなかった)特別監察必要なレベルです。単に間抜けで書かなかったのなら、さらに問題です。

朝日新聞に、具体的に提案しましょう。歴代の和歌山支局長は2023年夏賞与を3割削減。その分を伊藤秀樹記者にまわす。歴代支局長も嫌なら退職されれば朝日としても(たぶん)ありがたいし、若手記者が同じように取材活動頑張るからいいと思います。

ということで、つらつら書きましたが今後の展開に注目したいと思います。

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