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にゃるらが最近読んだ本 10選 2024年 3月4月

↑前回の。

 ここ数ヶ月の多忙で遅れに遅れたうえで2ヶ月分まとめました。5,6月分の更新も急ぐぜ。


■3月分

・生き延びるためのラカン

 精神医学へ興味のある、特にいわゆるオタク系の方々への優しい解説本を書き続けてきた斎藤環先生の哲学入門書。表紙は荒木飛呂彦ですね。
 斎藤環先生は、つねに「優しく」、人が生きるための手引きができるよう複雑な問題を語ってきた。今回の本も非常に複雑なラカンの概念を、できるかぎり柔らかく、そして何より「生き延びるために」考え方を授けてくれる。
 ラカンについて解説するのは、こんな短い尺で僕なんかができるわけないので割愛するものの、本書のくだけ方は入門としての読者へ丁寧に寄り添ってくれている。哲学入門書なんて、入門と言いつつ、入門書の解説書が必要なほどたいへんだったりする。本書では、なぜ哲学書があんなに複雑になるのか、その場合の初心者はなにを気をつけて向き合えばいいかまでも書かれている。「複雑なことをシンプルに伝えることができる人こそ賢い」なんて言説がありますが(その信憑性はともかく)、仮にその条件だとすれば、本書はあまりに優しく、賢い。

・押井守のサブぃカルチャー70年 YouTubeの巻

 すごい。70代のおじいちゃんから見たYoutube評。
 といっても、世界的映画監督かつ、オタクと呼ぶにはあまりに始祖に近い存在から見た現代のインターネット。その理解度。

 世界的な有名アニメ監督は、日本に数名存在しますが、60代以降の彼らのなかで、きちんと「Vにハマっている」オタクは押井監督だけじゃないだろうか。押井監督はメタ的なネタの多いVにハマり、それを「本質」とまで評している。要するに、「俺はこの子好きだな」と推している。
 もう、この事実だけで嬉しいよ。70代だってVtuberを観ながら「本質だな~」とニコニコ語っても良い。この国には、そういったことを自然と口に出せるアニメ監督が居る。

・ニュートン式 超図解 最強に面白い!!睡眠

 3.4月は多忙でたいへんで、こういった本を多数読んだ。ポケモンスリープの監修を担当している睡眠学者の本どころか出演番組を録画したりもしたぜ。
 まあ、わかったこととしては結局シンプルにたくさん寝ることしかないのですが、一応改めてみなさんにも共有。

・眠るときに急に真っ暗にするより、眠る少し前から暗めにしておくのもいい。→ちょっと暗くして読書するとか良さそう。
・日本人の平均睡眠時間短すぎ→7時間以上寝たいよね。
・効率の良い寝具やスタイルを気にしすぎているが、そんなことよりただ眠ることが大事。→たくさん眠る方が拘りより優先される。
・温度はつねに適温。へんにエアコンケチらない方がいいよ。→よりよい睡眠ができたほうがエアコンこまめに切るより得するだろう。
・無限に眠ることはありえないので、それでも過眠をしてしまう場合は、それだけ体が睡眠を望んでいる。→寝不足や過労での睡眠負債が溜まっている。素直にたくさん寝よう。人は「限界以上に眠る」ことは不可能なのだ。

・黒猫を飼い始めた

 講談社の会報誌にて連載されている、同じ書き出しから始まるショートショート集。この本の場合は、「黒猫を飼い始めた」から物語が続く。3000字くらいでね。参加作家たちが大物だぜ。

 なにを隠そう、僕も参加している。自分のテーマは「だから捨ててと言ったのに」から始まっている。いずれ、このショートショートも書籍になって収録されたらいいな。その際はぜひ読んでみてね。

・プルーフ・オブ・ヘヴン―― 脳神経外科医が見た死後の世界

 臨死体験を経験した脳神経外科医の実録レポ。
 正直、臨死体験がどうといった内容よりも、その語り口があまりに洋画の言い回しすぎて面白い。翻訳の癖なんでしょうけど。そればかりに集中したせいで内容より洋画らしい小粋な表現ばかりが印象に残った。
 臨死体験、死を見た際の脳みその働きには興味がありますが、それはまた別の本を購入したので、そちらで堪能してみよう。
 「一冊かけて言い回しの勉強をした」というものレアな読書体験だ。


■4月分

・心療内科医が教える本当の休み方

 3月の睡眠に関わる本といい、この時期の僕は藁にも縋る思いで、休息の方法を探して必死だ。かわいそうに。
 本書の内容で特に気になったのは「過剰適応」だ。僕は数年前に半月間の適応障害になっている。この3.4月も、また極度に脳みそが動かなくなるのではないかと不安で堪らなかった。
 過剰適応。過酷な仕事に耐えるため、過剰に責任を負う。「それも自分がやりますよ」「これも巻き取ればいいんでしょう」みたいな、自暴自棄というか自罰的というか。もはや休みたいと相談する思考も回らなくて、とにかく自分が手を動かす方が楽に感じてしまう。過酷さに適応してしまう症状。
 二ディガの総監修、いまはアニメの監督的な立場で並行して動いている立場なので、近しいことは多数思い当たる。自分が現場に飛んで意思決定をしたら解決することも少なくないので、とにかく現場や打ち合わせへ飛び回ったりしてヘトヘト。
 とはいえ、それくらいの地獄を抜けないかぎり集団製作なんて成功しないのだろう。誰かの犠牲の上でしか奇跡は起きない。なぜか奇跡というギャンブルにしか夢中になれないバカたちが茨の道を進んでいく。
 まあ、さすがに夏は暑すぎてゆっくり休みたいけどもね。

・ゴダール/映画誌

 ゴダールを追い続けてきたライターによる映画評のまとめ。

 ゴダールの映画を観ているものにとっては、各作品に対しての、製作環境やゴダール本人の内情などが掲載されていて非常に助かる。ゴダール作品は時代に対する政治的意見がふんだんに組み込まれているので、時代背景をセットで知らなければ内容へ迫れないのだ。
 順を追って本や作品を追っていくとわかるが、ゴダールはどんどん商業が嫌になって尖り続けた。その結果、途中からシネフィルの著者ですらついていけなくなっている。よくゴダール作品で語られているのも多くは比較的初期の作品である。
 映画の本質を誰より捉えた結果、真の意味で誰もついていけなくなった。それが幸か不幸かは、安楽死を選んだゴダール本人しか知らぬままだ。


・エックハルト説教集

 宗教の文化や歴史についての本は結構読んできたので、そもそも説教集に手を出してみるかと、引用されることも多いキリスト神学者エックハルトの説教集を買ってみた。
 うーん、すごい。仏陀の説法集は好きで読んでいたのですが、仏教はありがたいお話というより「生きるための攻略法」な面も強い。余計なこと考えずに瞑想しろ! といった教えも、たしかに生きるための思考の役に立つ。
 一方、キリスト教の場合は神ありきである。一神教だからね。こちらは日本人にはなかなかピンとこない。「神が見ているから」「神に恥ずかしくないように」生きていくには、唯一の神様を信仰してなければならない。
 なので、説教集は「こうして神に身を捧げた立派な者が実在したのだ」とファンタジーのような読み方をした。すごいことだ。あまりに世界が違いすぎて、ただただ立派な態度に圧倒される。
 信ずるものは救われる。それは生きるための大きな希望だ。


・新版-エルメスの道

 製作中のアニメのために、ファッションについてもゆったり調べたり、実際にお店へ足を運んだり、アクセサリーをつけたりしている。中でもエルメスの深緑はたいへん好きだ。というわけで本でも、その思想を追ってみようと購入。

 まさか中身が漫画形式だったとは……!
 図書館の歴史解説漫画のように、エルメスがいかにしてエルメスとなったかが優雅に描かれていく。少女漫画タッチで、ヨーロッパ圏の歴史から導入が始まるのも、積み上げてきた実績そのものの重みを感じて素晴らしい。そのようなブランドが日本を気に入って銀座に大きな建物をたてたこと、こうして作家を指定してまでコミカライズを依頼していること、光栄ですね。
 なぜハイブランドがハイブランド足り得るのか。数万、数十万のアイテムたちはどのような素材、デザイン性があって、その格調を保っているのか。
 こうして追ってみると「布だぜ」に収まらない、ファッション……服装で表現する生き様の重要性がわかってくる。


・MBの偏愛ブランド図鑑

 続けてファッション関連の本。メンズファッションの第一人者・MBさんの著書。それも本人が特別好きなブランドをひたすら語っていく、まさしく「偏愛」図鑑である。
 いいですね。ファッションはどこまでいっても個性の演出なのだから、自我がなければつまらない。「俺はこういう理由でこのブランドが好きだぜ!」と語られていく様子は、服に限らずなんでも気持ちがいい。
 そういえば、なかなかブランドを図鑑的に網羅している本ってないよね。ファッションのジャンルでまとめている本は多々あれども。
 そう考えると貴重なニッチ本でしょう。

 みんなも楽しく自己表現ができるといいですね。ネット民はすぐ他人にケチつけるぞ。

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nyalra
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