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【小説8050】いじめ加害者にも被害者にもしない子育てとは


1.小説8050から


 今話題になっている、林真理子の「小説8050」を読了しました。タイトルの通り、引きこもりをテーマにした話ですが、引きこもりの背景としていじめ問題や、中高一貫校についても触れられています。まだ読まれていない方に、あらすじを以下簡単にお伝えします。

 主人公は父の代から続く歯科医の二代目、大澤正樹。
彼には専業主婦の妻・節子と、早稲田を卒業して大手損保会社で働く娘・由依と、父の勧めで医学部を目指して中学受験をし、都内の私立中高一貫校に通うも中学一年からのいじめが原因で中学二年で不登校、その後7年間自室に引きこもっている息子・翔太がいる。

 由依が婚約することになり、家族が頭を悩ませたのが弟・翔太の存在を相手方家族にどう伝えるかということだった。幸い、相手家族には翔太は医学部浪人の末に引きこもりになっているという設定のもと、一定の理解が得られたものの、突然の相手方家族の訪問で激昂した翔太の激しい暴力により、破談の危機に追い込まれる。

 精神の病気を疑った正樹に対し、翔太の友人から翔太が当時凄惨ないじめにあっていたことを知る正樹。翔太の口から、いじめの首謀者であった三人の名前が上がる。

 今だに過去に苦しみ、前に進むことが出来ない翔太と、一人の人間を立ち上がれないほどに傷つけておきながら、そんな過去はなかったかのように医学部や難関大学に進学し、青春を謳歌する加害者たち。

 やりきれない思いを胸に、七年前のいじめについて加害者を訴えることを持ちかける正樹に、翔太もこれを承諾するが・・

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