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人より時間がかかっても、私は前へ進む

フリーライターになって10ヶ月、書くことの難しさを改めて感じている。

「書いても読んでもらえないのでは・・・」という怖さや、表現や構成の拙さ、企画力や行動力のなさを思い知る機会が増えてきた。「文章書くの得意です」なんてどの口が言うてたんや、と呆れるレベルだ。

ただ、ライターとして生きていくには、自分のなかの怖さや未熟さと戦いながらも、「書き続けるしかない」と思う。たとえすぐ結果が出なくても。

いま、わたしが書き続けるうえで、心の支えにしている言葉がある。

「他人の倍以上努力しないと、何もできるようにはならない」

これは、小学生のころ母からもらった言葉だ。

ハードルを跳ぶとき、胸にしていた言葉との出会い

小学校の放課後の教室。当時10歳くらいの私と幼なじみは、返却されたばかりのテストを「せーの!」で見せ合った。私たちのいつもの恒例行事だ。

私たちは1年生のころから、テストのたびに点数を競うライバルだ。でも最近、私はなかなか勝てずにいた。いつも「今日こそ勝ってやる!」と思うのに、あと一問というところで彼女に及ばないのだ。

ある日、私はリビングで宿題をこなしながら、台所で食器を洗っている母に聞いてみた。

「あの子も同じだけ勉強しているはずなのに、なんで勝てないんだろう?」

すると、母は言った。

「他人が1回やってできることを、自分も1回やったらできると思ったら大間違いやで。自分は他人の倍やって、やっとできるようになる人間やと思って、何でもやってみ。」

「え、他の人と同じだけやっても、私はできるようにならへんの・・・?」

母の言葉は衝撃だった。

確かに、少し前までピアノを習っていたけど、友達が教則本を何冊も終わらせる間、私はずーっと同じ教則本を練習してたよなぁ。(そして5年も経たずにやめた。)

スイミングも、同時期に始めた子は、すぐ楽しそうにプールに飛び込んでいたけど、私は怖くてずっと泣いてたっけ。(そして2ヶ月でやめた。)

逆上がりだってできないし、そういえば走るのもめっちゃ遅いわ。(練習すらしてない。)

「私は人より努力しないと、何もできるようにならんタイプやねんな!」

今までの10年足らずの人生を振り返ると、母の言葉がすこし理解できた。

その日を境に、テスト前日は手が痛くなるくらい、広告の裏に問題を解きまくった。すると、次のテストで久しぶりに彼女に勝てたのだ。

「他の子よりもいっぱい努力したら、勝てるんや・・・!」

その後、高校受験、大学受験、就活というハードルを飛び越えた。どれも周りからは無謀と言われるような高いハードルだったが、何とかギリギリのところで越えられた。

「他人の倍以上努力しないと、何もできるようにはならない」という言葉を胸に。

努力でどうにもならないことがあると知った日

社会人になっても、「周りより努力しなければ、結果は出せない」と思っていた。仕事を覚えるために走り回り、新人として当然怒鳴られながら働いていた。

すると、ある日を境に、だんだんと朝起きられなくなった。「毎日深夜まで働いて疲れているからだ」と思ったが、数日後、疲れているのに全く眠れなくなった。

そしてある日の朝、気付いたら自室でお腹に包丁を向けて立っていた。ふと、母の顔がよぎって事なきを得たが、自分で自分が恐ろしくなり、ついに泣きながら病院に駆け込んだ。

それから2ヶ月休みをもらって、仕事に復帰した。そしてまた遅れを取り戻すために、周りと同じように早朝から夜中まで働き、何回も倒れた。

それでも好きな仕事だったが、結局転職した。体調を崩すたび、「周りには早朝から夜中まで仕事をこなすことができる人もいるのに、どうして私は動けなくなるんだろう」と何度も思った。

努力だけでは、どうにもならないことがあると、社会人1年目ではじめて知った。

今は病院に通うこともなく、すっかり元気だ。薬のお世話にもなっていない。心身を壊してしまう辛さは、二度と味わいたくないと心底思う。だから、もう私は頑張りすぎない。そう決めている。

自分のからだや心の限界を超えてしまう恐ろしさを知っているし、今の私には、家族という守るべき存在があるから、倒れるわけにはいかないのだ。

理想の自分になるのに、人より時間がかかってもいい

いま私はライターとして、インタビューもたくさんしたいし、さまざまな社会問題と自分なりに向き合って、発信したいと思っている。文章だってうまくなりたい。でも現実は、理想の文章やキャリアにほど遠く「書いても読んでもらえないのでは」という怖さで、くじけそうになる日々だ。

そんな時、私を救ってくれるのは、やっぱり「他人の倍以上努力しないと、何もできるようにはならない」という言葉だ。

尊敬する人達も、今のキャリアを築くのに何年もかかっている。凡人どころか、人より頑張らないと何事も成し遂げられないわたしが、たった数ヶ月で理想通りのキャリアにたどり着くわけがない。尊敬する人たちの倍以上、時間がかかるはずなのだ。

かつて倒れたときは、目の前の結果が誰よりも早く欲しくて頑張りすぎたけど、今は誰かと、結果や早さを競う必要もない。

私はこれからも「他人の倍以上努力しないと、何もできるようにはならない」という言葉を胸に、家族と自分を大切にしながら一歩ずつ前へ進む。

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