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見えなくてもテーブルマナー

盲学校の寮で面白かったイベントの一つに「マナー講座」というのがあった。最終学
年の時、洋食の簡単なコースを食べに行ったのだ。

いやいや、食べるのが目的ではなく、ナイフやフォークの使い方とかを勉強するのが
目的。

そう言えば、自分はどうやってフォークやナイフが使えるようになったのだろうか。

左右に並べられたナイフやフォークは外側から使うというのは食事をしながら誰かに
教えてもらったような気がする。食べ終わったら使ったカトラリーは縦に置くって誰
かが言っていた気がする。横に置くとまだ食事が終わっていないという意味になると
か。
ちなみにフォークの背にご飯を載せるのは邪道らしい。

ちゃんと自分で調べたわけではないので誰かが言っていたのを朧気に記憶しているだ
けだが、真偽のほどはわからない。何となく周りの人の様子を見て真似していたよう
な…。


そうなのだ。見えないとそれができない。人のふりして我がふり直せないのだ!
だから最低限、知識としてちゃんとテーブルマナー的な物をインプットしておかなけ
ればならないのである。
とは言え、学校のテーブルマナー教室では私は皆とご飯を食べたという楽しかった記
憶しかなく、そこで習ったことは全然覚えていないのだけど、まあ皆そんなものかも
しれない(汗)


実際、卒業後盲学校時代の友達の結婚式に参加した時、ナイフとフォークが使えない
から何も食べなかったという全盲の人がいた。
他にも、外食時にはハンバーガーとか丼ものとか鹿食べられないという視覚障碍者も
いた。そんな人は当然外でソフトクリームなんか食べられない。

一方、ステーキ屋などでお店の人が「切りましょうか」と提案してくれても頑なに自
分で切ると言い張る人もいる。

どうして皆こう極端なのか。ナイフとフォークが使えなければお箸を借りるという方
法もある。見えなければサラダのレタスなんかフォークでうまく捕まえられない。私
はレタスと格闘するよりは食事を楽しみたいので、おきて破りではあるけれど、サラ
ダのお皿を持って食べたりもしている。

ステーキの肉も自分で切れない事はないけれど、見えなくなり始めのころ、結婚式で
自分で切ったら大きすぎてリスみたいになっていた所、見える友達が切りなおしてく
れたことがある。それ以来、外では切ってもらう事にしている。


見えなくても、自分でステーキを切ったり納豆に醤油をかけたりコーヒーにミルクや
砂糖を入れたりできなければいけないというのは前提だけど、やはりなんだかんだ失
敗するリスクは高い。見える人と一緒の時はもちろん、一人の時もできれば店員さん
にお願いするのがスマートだしリスクも少ないんじゃないかと私は思う。


一言で視覚障碍者と言っても考え方は十人十色。だから正解と言うものはないが、定
食が食べたいのに、たくさんお皿が並んでいるものは食べられないから親子丼にする
・・みたいなのはいやだし、ソフトクリームも食べたい。

見えないんだから見える人みたいに何でもうまくできるわけはないのは当たり前で、
大抵の人もその辺は生暖かく見守ってくれるだろう。でも周囲を不快にしない程度は
きれいに食べたいものである。

見えない上に食べたいものも食べられないなんてもう二重の障害だと言っても過言で
はない。


最期に先日盲人体験をしたボランティアさん、アイマスクして食事をしたけど、緊張
したこともあって全然味がわからなかったそうだ。

懐石料理やきれいなフランス料理なんかは目で楽しむ部分も大きいから、見えないと
食事も三分の一くらいは損しているような気がする。

でもせめて、食べたいときに食べたい物を選べる盲人に私はなりたい。

・・・そんなこと言っていたら食物アレルギーと言う斜め上からの枷をはめられてし
まいました(泣)

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