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推しを至近距離で見て死んだ話

推しを至近距離で見て死んだ話をします。

端的に言うと「推しが実在したことが分かり、私が死んだ」という一言に尽きるんですけど折角なので限界オタクの備忘録としてここに残しておくことに。

先に言っておくのですが、恐ろしいことにこの記事は魂の独白6,000文字です。ロキノンのインタビュー記事かな?
普段のnoteはいつも30分~1時間くらいでパパッと書き切るのですが、当記事は中断を挟んで3時間かかりました。こっわ。
読み切れた勇者はどうかハートマークでも押して帰ってください…!

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20代以降の私は、特定の「推し」を作らない人生を過ごしていた。ただそれはポリシーとかじゃなくて単にそこまで入れ込める対象がなかったというだけであって、本当はいつだって夢中になれる何かを見つけたいな、と思っていた。

因みに10代の頃はるろ剣の剣心ガチ恋勢だったので学生証に剣心の切り抜きを挟んだり同人誌を作ったりするちょっとあかんタイプのオタクだった。今思い返すと数々の痛々しい言動で自分自身を切り刻んでしまうので記憶の扉を施錠してる。ほんまに開けるの怖い黒歴史なんてもんじゃない。

音楽は元々好きで洋邦問わず気に入ったものをジャンルレスで聴いていた。ライブやフェスも身近だったしあたしゃNO MUSIC,NO LIFEだなと思って生きていたのに、30代になり生活環境が変わってからすっかり遠ざかってしまった。

結婚~出産を経て、エグい産後太りを何とかしたく寝かし付けの後で深夜のジョギングを始めた時に、「どうせなら音楽聴きながら走りたいよな」と今まで触れてなかった音楽のサブスクアプリを活用しはじめて。
そこでたまたま流れてきたある曲に、「おっ良いやん」となったのが彼らとの出会いのきっかけだった。
何曲か聴いて、「あっ全部良い!好きやわ」となった。

それからは彼らの楽曲だけのプレイリストを作って、夜な夜な聴きながら走って、もう何十回何百回とリピートしたけど全く飽きることがなく、いつしか彼らの曲が私の生活の一部となり支えになった。

デビュー時から追っていた訳ではなかったので、バンドの沿革を調べたりインタビュー記事を読み漁ったり、少しずつCDを買い揃えたり、YouTubeを観尽くしたりして少しずつ理解を深めていく作業。

ファン歴の長さで優劣が決まることはないはずだけど、何となく知れることは全部知っておきたいし他のファンに負けたくないという焦りに似た気持ちがあって、必死で空白を埋めようとしていた記憶がある。過去のライブ映像を観る度、なんでこの時に彼らの存在を知らなかったんだろうか…とモヤモヤして悔しくて眠れない夜もあった。

「いつかライブに行きたいな」なんて思いながらも幼子を抱える身ではなかなかアクティブに動けず、気付いたら何故か2人目の子も爆誕しており、子供が散らかし倒して足の踏み場もなくなったリビングを眺めながら「もうライブとかそういう次元じゃねぇよ」な生活を余儀なくされていた。

そんな折、バンドが活動休止期間に入ってしまう。言い知れぬ寂しさを抱え過去の音源をひたすら聴いて咽び泣いた。いつか戻ってきてくれると信じていたからゆっくり待っとこ、と思っていたら何と一部メンバーが脱退。ごめんそれ聞いてない。何で?この時はもうほんとにめちゃくちゃ辛かったしもう無理かもしれんと思った。
その後、推しがソロ活動を始めて「…君、顔ちがくない?」と大爆笑するひと幕もあった。

そして、彼らが編成を変えて戻ってきてくれたのが昨年の話で、骨格は変わらないけどガワのイメージがガラッと変わって帰ってきた。最初は驚きと若干の戸惑いもあったけど、楽曲とパフォーマンスの素晴らしさで消し飛んだ。最高すぎる。

活動再開後は破竹の勢いでリリースが続き、メディアへの露出も派手になり、普段TVを一切観ない私は追うのが大変だった。仕事もしんどい時期だったから、励まされつつ追い立てられるような妙な気分だった。

仕事も家庭も落ち着いたわけではなかったけどある種の開き直りの境地に至ったある日、アリーナツアーの決定を知らされた。大阪城ホール…えっ大阪?大阪来るの…?OSAKA…?我が町…?マジで…???

ライブに行きたい行きたいと思ってはいたが、現実問題私には縁遠い話だと思っていた。最後に行ったライブは約10年前だし、そもそも今をときめく売れっ子の推しのライブチケットなんて取れる訳がないのだ。

それでも一縷の望みをかけて、FC先行抽選に申し込んでみた。結果発表日をカレンダーに登録し、ひとまず全てを忘れて生活に没頭する。

運命の結果発表日。2分前からページを開いて待機してリロードボタンに指を構える。
来た、やっべめっちゃページ重い。同じような気持ちでスマホに向かっている人が沢山いるんだろうな。

………

SS席、ひとつ当たってた

…( ゚д゚)

マジで…?

当たる訳がないと9割方諦めていたので、冷や水を浴びせられたかのように固まってしまう。嬉しいという感情はかなり遅れてやってきて、割と長い間、駐輪場でフリーズしていた。吐息が白い。

これが2月のことである。
ライブ当日までの5ヶ月弱、毎日どれだけ辛いことがあっても「私は7月にライブ行けるから」と心の中で唱え続ける。仕事で血反吐吐きそうになっても、家庭でトラブルが発生しても、それだけが生きる糧であり細い細い一筋の光明のように縋り続けた。大袈裟だと思われるだろうが、まさに信仰にも似た思いだった。

無宗教で根無し草の私が、生まれて初めて信仰対象を得て、自分の心の大きな変化に改めて戸惑う。最初は「いい歳をして若い子達に夢中になるのちょっと恥ずかしいな」と感じていた。ジャニーズにも俳優にも特に興味が無く、どんなイケメンを見ても「ほぉ、かっこよろしいなぁ」で終わっていた私が、まさかこんなに他人に夢中になって入れ込むことになるとは思わなかった。
そもそも「推し」って言葉がもうこそばゆくて、こんな歳で「推し」ってな…なんか若ぶってて恥ずかしくない?大丈夫そ?とキョドっていた。今は振り切ったつもりだけど、まだ人前ではちょっと言いづらい。おばさんシャイやねん。

因みにTwitter経由で仲良くなったFFさんもファンだったので、無理やり背中を押してFCに入会させてチケットを申し込ませた(しかもSS席が取れた)(奇跡)
平素、なるべく他人に干渉しないように心掛けている私をこんなにフッ軽にしてしまう推しの力、凄まじい。

心の拠り所にしながらもたまにちょっと忘れたりしつつ慌ただしい毎日を過ごし、気が付いたらライブ前日になっていた。

当日は午前中に香水のイベントセミナーがあり、FFさんと会う予定になっている。
ミジンコ体力の私が丸一日外にいるなんて大丈夫か?と危惧したが、まぁ恐らく大丈夫であろう。問題は「ライブの準備物が何一つ分からない」という初心者特有のアレである。

幸いライブの持ち物情報は色々な方がツイートしてくれていたし、先に参加したFFさんからのアドバイスも受けられたのだが、私は頭がパヤパヤなので事前準備というものができない。なので当日の朝になってもまだわたわたしていた。よくこんなことで社会人や母親がやれているなと思うし、実際全然やれてません!

まず、ハンカチとティッシュを忘れた。(酷い)

念の為の双眼鏡…と思っていたのに買いそびれ、子供のハッピーセットのおもちゃの双眼鏡を何故か持って行くはめになった。(これも酷い)

一応2倍くらいの大きさで見えるが恥ずかしくて
バッグから取り出せない、という致命的な弱点があるブツ

100均で光る棒と腕輪を買ったが、「それは持って行かない方が良いかも」とアドバイスを受け涙を飲む。

聞けば、会場で腕時計型のライトが売っているらしい。演出と連動して勝手に色んな色に光るようだ。何というテクノロジー…私が音楽から離れている間にこんなハイテクなことになっていたのか。

香水のセミナーでお土産をいただき、FFさんからもお土産をいただき、家人に頼まれていた買い物もし、ライブ前だというのにすっかり大荷物になってしまった。

おまけに直前にバリウム検査を受けたため毎日下剤を飲んでおり、案の定お腹がギュルンギュルンである。多分この人は馬鹿。

カフェでスマホをフル充電し、コインロッカーに荷物を預け、トイレでめちゃくちゃ気合い入れて全てを出し切り、すっきりした表情で大阪城公園駅に向かう。

なぁ…ところで大阪城公園駅って、どうやって行くの…?

これである。下調べをしない私は案の定行き方が分からない。その手にあるスマホで調べると、どうやらJRに乗れば良いようだ。

普段JRに乗らない暮らしをしているので環状線の外回りだ内回りだと言われてもピンと来ない。
家人にLINEすると、「どっち回りに乗ってもいつかは着くであろう」と壮大な返信が返ってきた。ほんまや、環状線やもんな…

とはいえ何とか正しい行先の電車に乗り込み、やって来ました大阪城公園駅。開演まで2時間近くあるのに、もう人でごった返している。

やはり若い男女が多く、みな物販のTシャツとバスタオル、トートバッグ、キーホルダー等で武装している。戦国時代に敵兵の首級をぶら下げるが如くである。
私はと言えば「今日は大阪城公園に散歩しに来ました」みたいなごく普通のラフな服装で、とてもSS席チケットを持っている女には見えない。何だか急に気後れして泣きたいような気持ちになった。

円陣を組んで喝を入れ合う気合いの入ったグループ、ラブラブカップル、双子コーデの女子2人組、微笑ましい親子連れなど様々なファンを尻目にいそいそとひとり、入場口へ向かう。

席種によって入口が分かれており、SS席の入場口へ進むにつれ少しずつ人が減っていく。やはり私は運が良かったのか…選ばれし民のような気持ちになってちょっと背筋が伸びる。

遂に来てしまった感が高まる

辿り着いた。これを目の前にして、やっと実感が湧いてきた。
とりあえず自席を確認しよう。
ライブに本当に疎いので、席番が分かっても果たしてどの辺なのか全くピンと来ない。
FFさんからは「神席ですよ!」と言われたが、本当にそうなのだろうか。私は視力が悪い上に何故か裸眼で来てしまったので、下手すりゃ豆粒大にしか見えないのではないだろうか。
本当にSS席足りうる位置で観られるんだろうか。

不安に駆られ迷子になりながらアリーナ席側に降り立ち、ガイドを見ながら自席を探し、見つけた。

イメージ図

死ぬほど神席だった。


いや、これもうほぼ最前列ですよね…?
どんなVIP席だよと思った。すぐ前にドラムセットとマイクスタンドが見える。この位置なら普通に裸眼で顔が見える。嬉しさより動揺が先に立って、始まる前から情緒がめちゃくちゃになってしまう。

距離感で言うと、学校の教室の一番後ろの席から先生までの距離+5mくらい。改めて、とんでもない席が当たってしまったと思った。

そこからはもうそわそわしちゃって急に尿意に襲われてはトイレに行き、廊下をウロウロ歩き回ったりまたトイレ。FFさんに「どないしよめっちゃ近い」ってLINEしたりしてひたすらずっと動揺しまくっていた。

動揺しながら事前決済していた物販を受け取りに行き、バスタオルを羽織ってライトを腕に装着する。何かこう、いよいよ感が凄い。本当に私は来てしまったのだ。

トイレで大苦戦しながら装着したブツ

開演時間はちょっと押すだろうなぁと思っていたらやはりきっかり10分遅れた。
30分ほど無の心で静かに座っていたが、どうしても浮き足立つというか、夢心地というか、現実感がない。無心になろうとするも、ふわふわした雑念が押し寄せてどうしようもない。まだ何も始まっていないのに、手汗と脇汗がえげつない。こんなんで私大丈夫か。始まったら死ぬんじゃないか。

ふとBGMが消え、照明が落ちた。

遂に始まってしまった。

そして、終わった。

肝心のライブの内容は、残念ながらネタバレ厳禁なので何も書けない。
ただ、2時間半一度も我に返ることなく、最高で最強の夢を見させてもらった。
絶対私泣くだろうなと覚悟していたが意外にも涙は流れず(隣の席の女の子はめちゃくちゃ泣いてた)、ただただこの宇宙に私と推ししかいないような濃密な時間を過ごした。

本当はセトリもMCも全部つぶさに覚えて持ち帰りたかったのに、それすら許されなかった。
「今」「この瞬間」を秒刻みに積み重ね、心と体に全てを染み込ませて無心で堪能した結果、細かいことは全部忘れた。
ただただ、最高に楽しかった。もうそれでええわ、十分やわ。

驚いたことに、というか当たり前のことだが、推しは実在していた。立って座って踊って弾いて歌って喋る生身の人間だった。

これまでメディア越しでしか触れられなかった推し、私にとっては神にも等しい推し、果たして本当に同じ人間なのか?と懐疑的だった。
それが、20m先に存在していた。表情も見えるし、生歌もビシバシ届く。花道を駆け回る姿も見える。ピチピチの尻がめちゃくちゃ良かった(尻…?)

ギターを弾く推しに至っては完全に真正面にいたので腕の血管まで見える。足なっが!ギターうっま!写真でもう既にかっこいいけど実物かっこよすぎてどうしたら良いか分からない。

キーボードを弾く推しは反対側だったけどめちゃくちゃこっち側に走ってきてくれたのであの天使みたいな笑顔が堪能できた。髪色がいつも可愛いね。全身から滲み出る良い人オーラで浄化されてしまうのよ。

そして、歌う推しはもう「神」だった。
縦横無尽に動き回りながらほぼノンストップで20曲以上を歌い上げ、それでも息一つ切らさない。
生歌がすげぇのは分かっていたけど、すげぇなんてもんじゃなくて私の肌がずっと粟立っていた。
あと、いちいち色気の振り撒きがアカン過ぎる。「カッコイイ」「可愛い」「美しい」が万華鏡のように毎秒入り乱れて片時も目が離せない。
あぁこれが天性のエンターテイナーでありパフォーマーなんだなと腑に落ちた。凄いな、カリスマってほんとにいるんだ。それがこの人だ。

あまりに神席だったので、金テープは顔にバサーッとかぶさってきたし、火花が散る演出は普通に熱かった。
ずっと腕を振り上げていたので左腕がめちゃくちゃ痛い。どうか一生筋肉痛のままでいい、そしたら「これはあの時振り上げた拳の痛みなんだな」って一生覚えておける。そういう気持ち悪いことまで考えてしまった。

情緒が完全に死んだ私は終演から帰宅までの記憶がほぼ無く、ずっと3cm浮いたようなふわふわした気持ちで家に着いた。
子供はもう寝ていて、家人は「おう」とだけ言葉を発して、いつもと何一つ変わらない日常がそこにあった。
あ、夢から覚めて現実に戻ってきたんだ、とめちゃくちゃ寂しくなってまた情緒が掻き乱された。

一日経ち、二日経ち、そして今日になっても私はまだふわふわしている。
多分、まだもう少しの間ふわふわしながら現実との折り合いをつけていく。


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