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『TENET テネット』が楽しみ過ぎるので クリストファー・ノーランについてあれこれ語る

 お久しぶりです。

 夏バテ気味で更新を怠っていました。

 コロナ、コロナで新作映画の公開延期が続く中、映画館の救世主『TENET テネット』の公開が間近に迫っており、最近はもっぱら、「『TENET テネット』ってどんな映画かな?(ワクワク)」と頭の中を巡らせる次第でございます。

 監督は今や説明不要のヒットメーカー、クリストファー・ノーラン。

 クリストファー・ノーランとの出会いは思い返す事約20年程前。『インソムニア』というサスペンス映画なのですが、その時、彼の出世作『メメント』は観ておらず、クリストファー・ノーランの名前すら知りませんでした。僕の目的はこの2人。

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 アル・パチーノとロビン・ウィリアムズです。特にロビン・ウィリアムズは『ジュマンジ』や『フック』に出ているファニーなおじさんという印象が強かったので、本作でサイコな殺人鬼役を演じるのは意外性があり、当時話題を呼びました。

 白夜の田舎町で不眠症の刑事、アル・パチーノが殺人鬼のロビン・ウィリアムズと戦う話、という事だけ覚えているのですが、あまり印象に残っておらず、本作はリメイク作品で尚且つノーランの脚本ではないという事もあり、作家性は鳴りを潜めていたのかもしれません。

 その次に観たのが『バットマン ビギンズ』です。かつてティム・バートンが映画化したバットマンシリーズをリアル路線でリブートした本作は、正直退屈で途中、寝てしまいました。

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 この辺りで『メメント』も観たと思うのですが、パズルのような作風で辻褄を考えながら観る事にあまり関心がなく、2度、3度と観るまで、あまり好意的ではありませんでした。(今は、結構好きです。)

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 こうして振り返ると当初僕はクリストファー・ノーランと相性が悪かったようです。それどころか彼の名前を意識する事はありませんでした。

 ところがある作品でクリストファー・ノーランという名前を意識せざるを得なくなるどころか、彼を世界的な巨匠に押し上げるきっかけとなった巨烈な1本が、当時、僕が大学1年生だった頃に公開されます。

 そう、『ダークナイト』です!

 Twitterで、「にわか映画ファンが好きな映画」と言われているリストを見つけたのですが...

 ・ショーシャンクの空に
 ・ レオン
 ・ パルプフィクション
 ・グラントリノ
 ・フォレストガンプ
 ・プライベートライアン
 ・ダークナイト
 ・ファイトクラブ
 ・バタフライエフェクト

 うるせー!『パルプフィクション』も『グラントリノ』も『プライベートライアン』も『ダークナイト』も『ファイトクラブ』も人類史上、最高の映画じゃねえかぁ!

 今や好きだと言うと、にわか扱いされる『ダークナイト』ですが、公開当時、日本ではそれほど当たっていなかった印象があります。(アメリカでは記録的大ヒット)

 僕はその頃、大学の映画部に所属しており、同じ映画部の同級生の友人と先輩、その先輩の友人、4人で『ダークナイト』を四日市市の映画館で観たのですが、それが、何かと印象深い映画体験になりました。

 その先輩2人が少々厄介な人達でして...

 1人は映画部に所属している先輩で丸坊主のギョロっとした目つき、終始ハイテンションで奇抜なキャラクターの人でした。

 彼は『バッファロー'66』のファンで、僕が監督志望と聞き『バッファロー'66』の監督兼主演、ヴィンセント・ギャロの名前からとって「ギャロ」というニックネームをつけてくれました。

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 同級生の友人は「シャーク」というニックネームをつけられていましたが由来はよく分かりません。

 当時、僕は映画部で制作する短編の脚本を書いていました。そんなある日、家に麻薬中毒者の筆跡の様な宛名の封筒が届きました。その封筒には写真が何十枚も入っており、それはギョロ目の先輩が津市の刑務所まで短編のロケハンへ行き撮影した写真でした。不法侵入したのか、周辺を撮っただけなのかは、よく分からなかったのですが(夜中に撮影された物だったので)中には悪戯っぽい事をした様な物もあり肝を冷やしました。

 変な人でしたが、彼自身は悪い人ではありませんでした。

 問題は彼の友人で『メメント』よろしく全身にタトゥーを入れた「マーシングバンド」という、これまた謎のニックネームを持つ人物だったのですが、映画部に所属していないにも関わらず、毎回、部活動に顔を出しては、ギョロ目の先輩を焚きつけて悪ノリが発生し、僕と友人はそれに辟易する日々でした。

 特に同級生の友人は彼らと家が近所だったせいで大変な被害を被っており(家の自室を生クリームだらけにされる等)後に彼らとは決別する事になるのですが、そんなリアルジョーカー達と観に行った『ダークナイト』は4人とも大変感動していたのを、今でも覚えています。映画を観る前の駐車場にて、アクセル全開でバックし、駐車スペースギリギリの所で急ブレーキするゲームを始めた時は命の危険を感じましたが、そんな事も吹き飛ぶ大傑作をリアルタイムで観れた事の喜びは凄まじい物でした。

 後に『ダークナイト トリロジー』と呼ばれるこの三部作の最終章に当たる『ダークナイト ライジング』が『バットマン ビギンズ』同様、退屈な作品だったのですが、本作『ダークナイト』が傑作なのは、やはり映画史に刻まれる名悪役、ヒース・レジャー版ジョーカーの存在が大きかった様に思います。

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 ジョーカーの魅力については映画評論家の町山智浩さんが論じたダークナイト論が素晴らし過ぎるので是非ご一聴ください。

 ミルトンの『失楽園』に登場するサタンが、ジョーカーのキャラクターの下敷きになっている事を、『ダーティハリー』、『時計仕掛けのオレンジ』、石原慎太郎の『完全な遊戯』等と交えて解説しています。因みにこの解説は、諫山創さんが『進撃の巨人』を描く際に、大変影響を受けたそうです。

 大好きな『インセプション』や『インターステラー 』の話もしたいのですが、新作の『TENET テネット』は「時間」がテーマのSFなので、この2作品は大きく関係してくると推測されます。ですので次回、『TENET テネット』を観たら、一緒に絡めてお話し出来たらなと思います。

・『ドゥードゥルバグ』

↑クリストファー・ノーランが大学時代に16 mmフィルムで撮影した、不条理な短編。

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