陸上競技の危機管理と安全対策
タイトルの件について、過去にまとめた情報や資料をご紹介します。
陸上競技の活動上のリスク
陸上競技は他のスポーツ種目に比べ、比較的、傷害や事故の発生率が低い特徴があります。そのため一般には、主催者も参加者も、危機管理や安全対策について、高い意識を持って活動に臨むことは少ないように思われます。
しかし、死亡や後遺症障害など含む、いわゆる「重大事故」の発生は、陸上競技でも存在します。そうした重大事故や、骨折など軽度の事故を防ぐための取組について、各地域の競技団体、学校、クラブ等で組織的かつ継続的に展開していただくことを願います。
過去の事例から、陸上競技の重大事故は「選手の衝突」「投てき物の直撃」「跳躍・ハードル試技の失敗に伴う転倒」「熱中症」の4パターンがあります。それらの発生を予防するための措置をどのように講じるか。またほかにも、雷の被災や、移動中の事故なども懸案事項です。活動に関わる方々は、こうした事故や事案を適切に回避するための取り組みについて、細やかに準備対応することが求められます。
危機管理は「空振りは何度でもOK。しかし見逃しは許されない。」といいます。万一の事態、そして予見されるあらゆるリスクに備え、準備対応する必要があります。経験則だけに頼ることなく、競技団体や専門機関等が示す内容を十分に理解して、活動していただきたいと願います。
日本陸連「安全対策ガイドブック」について
日本陸連では、2013年に「陸上競技安全対策ガイドブック」を作成し、全国の中学・高校、陸上競技部のある大学、実業団などに配布しました。また、動画「陸上競技安全ガイド」も公開されました。それぞれ、内容は長年競技に取り組み精通してきた方々でも関心を持って視聴でき、様々な学びを得ることができるものだと思います。各都道府県陸協では、ホームページ等でこの啓発資料の周知に努めています。
筆者が暮らす、栃木県における活用状況を調べた事例をご紹介します。2018年に筆者が栃木県内陸上競技大会に参加する高校生533名に対し実施したアンケート調査では、このガイドブックの存在を知っていた割合は4割程度。貴重なコンテンツではありますが、活用されている状況は限定的でした。組織的かつ体系的に、周知・啓発を推進するための具体的な取り組みが必要といえるでしょう。
例えば、各中学・高校・クラブ等で、新年度の新入部員・クラブ員オリエンテーションを催すなどの際に、安全ガイドの動画上映を行ったり、「ふりかえりシート」を活用した研修機会を設けることも、とても有効な手立てになると思います。
この記事は、以上です。後日改めて、保険や補償のことについて記したいと思います。