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こんにちは!Next Wisdom Foundation第2期研究員プロジェクトフェローの佐藤絵里子です。

<プロフィール>
1990年生まれ。東京藝術大学デザイン科に3浪を経て入学、2018年に大学院修了。新卒でNPO法人ミラツクに入社し、質的研究の手法について学ぶ。2020年からはexpresserとして様々な社内外の成果資料のアウトプットのディレクションに携わる。退職後、5ヶ月間の無職期間を経て、2022年2月よりNWFにて研究員プロジェクトフェローとして活動。
子どものための居場所づくりを実現するため、地元の地域振興課の勉強会などに参加しながら事業計画と研究を行う。有志による勉強会『デザインの話』主宰、アートプロジェクト『yadorigi』ではアーティストとして活動を行う。

なぜNext Wisdom Foundation(以下、NWF)で働きたいと思ったか?

まず前職のミラツクでNWFと一緒に仕事をした際に、NWFのメンバー全員に魅力的な個性を感じ、ぜひ一緒に仕事をしてみたいと思ったからです。そして、「地球を思い、自然を尊び、歴史に学ぼう。」から始まるNWFのビジョンステートメントが大好きだからです。

https://nextwisdom.org/about/

◎研究員として最初の記事を公開しました!
『場を整えることでコミュニケーションは変わるー「非モテ」男性は本当にモテないからつらいのか?【A piece of PEACE】男性研究/臨床心理士・西井開さんインタビュー』
https://nextwisdom.org/article/4905/

NWF研究員から佐藤さんへ質問
Q1. 今まで興味を持って取り組んできたテーマについて教えてください

<テーマ1>生命とは何か
<テーマ2>人が場において「大切にされている」感覚はどのように実装できるのか

Q2. そのテーマに関心を持つようになったきっかけ(出会いや出来事など)を教えてください

<テーマ1>生命とは何かについて

藝大で学部3年の時に「LIFE」という実技課題が出されました。その時に「生命とは何か」「生命の起源」といった切り口から作品を制作したいと思い、生命史や細胞生物学について調べることからはじめました。それ以前にも「藝大虫部」を設立したり、その中で生き物が生まれて死んでいく不思議さをテーマに活動していたのですが、課題でのリサーチを経て、自分の興味の解像度が上がったと思います。

※その時の参考図書
『動的平衡2』『動的平衡』『エッジエフェクト 界面作用』『やわらかな生命』『生物と無生物のあいだ』(ここまですべて福岡伸一著)田原総一郎、中村儀一『RNAルネッサンス 遺伝子新革命』江島洋介『これだけは知っておきたい図解細胞生物学』レイチェル・カーソン『センス・オブ・ワンダー』『沈黙の春』など

特に、国立科学博物館の地球館一階の常設展示「地球史ナビゲーター/地球の多様な生き物たち」で表現されている世界観は、自分が生命に対して感じている驚異やわくわく感をそのまま展示作品として実体化しているように感じました。そういった展示物、ひいてはミュージアムとの出会いに感銘を受け、「人が生きるとはどういうことか」ということを生命史の大きな流れの中で伝えていくことに可能性があると確信し、それ以降、ミュージアムなどのような様々な人にひらかれた施設・場所での総体的な展示ディレクションをすることが私の将来的な目標になりました。

東京藝術大学上野校地「藝大保存林」

その後4年ほど取り組んでいた「藝大保存林」での活動では、武蔵野在来の100種類以上の苗木を植えました。これは長年の放置で極相化した藝大上野校地に本来の保存林の多様性を取り戻すことがねらいでした。実務的な作業と並行して、保存林を学内・学外の人に知ってもらうためにロゴの作成、SNSの運用、リーフレット・季報の作成、ワークショップの開催といったブランディング活動を行ないました。また、その時の経験を生かして2017年には東京国立博物館にて東京国立博物館敷地内にある庭園の植栽調査や手入れのためのガイドラインの作成を行いました。

前職のミラツクでは個人テーマとして、これからの人とロボットの関係性についての研究「Another Sense Lab」に取り組んでいましたが、これは上記にある生命史への興味関心の延長線上にある取り組みだと自分では考えています。

※その時の参考図書
江間有沙『AI社会の歩き方』リサ・フェルドマン・バレット『情動はこうしてつくられる』R.S.コーワン『お母さんは忙しくなるばかり』アンディ・クラーク『現れる存在ー脳と身体と世界の再統合』など

<テーマ2>「人が場において「大切にされている」感覚はどのように実装できるのか」について
デザインを学ぶ中で、デザインという多岐に渡る領域、表現手法の中から「すでにある世の中の様々な知見、現象、作品、事実に目を向ける」ことの重要さと、それによって「誰もがクリエイティビティをもちうる」ということに気がつき、そのような価値観が広がるような発信のあり方や、場所をつくることを仕事にしたいと考え始めました。
その中でも、ミュージアムのもつポテンシャルと社会的役割(例えば、国立・公立博物館は税金を払っている市民の所有物としての側面を忘れられがちな点が非常にもったいないと感じています)に可能性を感じ、2015年には東京都美術館と東京藝術大学が共催するアート・コミュニケーション事業「とびらプロジェクト」では実際にアート・コミュニケーターとしての活動を行いながら来館者のアクセシビリティやそこで起こるべきコミュニケーションについて学びました。

鑑賞のコツを伝えるカード「自分のペースでゆっくり観よう」

特に、「美術館で美術品が大切に展示されていることによって、鑑賞者にとっては鑑賞者自身が大切にされているような感覚をももたらす」という話が印象的です。そういった経験から、私自身の関心領域が「誰もに安全に開かれた情報のあり方」や「そこに行くことが生きる糧となるサードプレイス」というように言語化されていきました。

そのような意味で、上述した「藝大保存林」での「武蔵野在来の100種類以上の若木を植える」という行為も、そこにある動植物の生態系保全を主な目的にしながら、それを見る、そこにいる人々を大切にする行為でもあると考えています。
例えば、小学校の校庭の周縁や裏庭では多様な木々が植えられていることが多いように思います。果実のなる木や針葉樹、秋になったら紅葉する木、触るとかぶれる木など……それらは自然にそこに生えていたのではなく、意図をもって植えられているのだとすれば、それは確かに「教育」の一環であるとも言えるのですが、エーリッヒ・フロムのいう「人の成長を願う」という意味での愛の形でもあるのではないかと思います。

様々な樹木が植えられる小学校の裏庭

自分自身の幼少期をふりかえった際に、なんとなくそういった文脈で周囲から「大切にされている」感覚を常に感じてきたように思います。だからこそ、それを感じられずに育つ子どもたちや、精神的な安心感のない環境に身を置いている人たちが安心して生きてゆけて、健やかに育っていける場所づくりってどうすれば実現できるんだろう? というのが、私が今最も取り組みたいテーマです。

Q3.「a piece of PEACE」平和とは何か? というNWF財団テーマにどのような切り口で踏み込みたいですか?

平和というと漠然として難しいテーマのように思えますが、実際には誰もが個人的な文脈に引き寄せて考えられるテーマだと思います。
あらゆるハラスメントはそもそもなぜ発生してしまうのか、人が人を攻撃する背景には何があるのか。私自身、恐らくこれまでに幾度となく人に傷つけられたことや人を傷つけたことがあると思います。

私は「世界の平和は一人ひとりの個人の平和の上に成り立つ」という仮説から、まず「個人の思想や尊厳が脅かされることなく、周囲と調和している状態」が個人を起点とした平和の礎であると考えました。ではそれが脅かされるのは、いったいどのような時でしょう?
『モテないけど生きてます』に登場する「非モテ」男性たちは、自分の過去に受けたからかいやいじりという傷、そして同時に女性に対して行なってしまった加害行動について向き合いながら、自らの行動原理を相対化によって客観的に分析します。今回、「僕らの非モテ研究会」主宰で男性学・臨床社会学を研究する西井開さんにインタビューを行い、非モテ男性について、また彼らを取り巻く環境や社会についてお話を伺いました。ぜひ、インタビューも読んでいただけたらと思います。

それではどうぞ、よろしくお願いします!


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