すずめの戸締り 感想

 すずめの戸締りの映画を観てきました。
 二か月前に小説版を読んで楽しみに待ちながら今日と言う日を迎えたわけですが、待ち遠しかったのにあっという間のような不思議な感じです。
 かなり好きになれた作品だったので当時も感想の記事を書いたのですが、改めて映画で観ると割と感じるものも変わってきたので一度記事を消して改めて感想記事を書きなおすことにしました。
 めちゃくちゃにネタバレ有りで書き連ねるので未視聴の方はご注意ください。

 個人的に映像で見てみたいと思っていたシーンが全部自分の妄想していた以上のクオリティで描かれていてすごい満足でした。
 ミミズは小説版だとかなり恐ろしく不気味な雰囲気が強く感じたのですけど、映像になると恐ろしく不気味であるのはそのままにどこか超自然的な美しさも加わっていて、映像表現ってすごいなーと思いましたね。
 家族の関係だとか災害と言ったテーマは重たいものでしたけど、コミカルなシーンが多く物語が進むので笑いながら楽しんで映画を観れたのはとても良かったです。
 天気の子では世界のために誰かが犠牲になる必要なんて無い!そんなことやらなくても世界はきっと大丈夫だ!ってメッセージを謳っていましたが、すずめの戸締まりで本当にそれで良いの?って言うのを改めて掘り下げた感じであり、天気の子に続く物語としても良い作品だったなと思いました。

 ダイジンについて、草太さんが要石となった時の状況って言うのが映像で観れたことでダイジンが今までどういう状況に居たのかということへの解像度が上がって、本当にすずめにうちの子になる?と聞かれたのがあの小さな神様にとっては何よりの救いだったんだなと改めて思えましたね。
 そこに関してすずめは無責任な救いを与えてしまったと解釈することも可能ではありますけど、ダイジンは最後には納得ずくで要石に戻ることを選択したと思っているので、彼を可哀そうと扱ってしまうのは個人的にはしたくないなと思います、ただ凄くいいキャラクターだったなと。
 好きな女の子のために報われないとわかっていても頑張るキャラクター、個人的にはすごい好きなんですよね。
 ダイジンは多分すずめに嫌いって言われて一度は別れたのに車に乗ってきた時点では自分が要石に戻る覚悟を決めていたと思いますし、サダイジンがあのタイミングで出てきたのってダイジンに対してお前が要石になって守ろうとしている子は他の男の名前呼んでいるけどお前はそれで良いのか?って問いに来たんだと思うんですよね。
 それでダイジンとサダイジンが一回キャットファイト(文字通り)して、その上でサダイジンも一緒に来ることになったのはきっとダイジンは言葉では語られずとも何かサダイジンに答えを返したんだと思います。
 ダイジンはすずめの気持ちについて誤って捉えてしまって、その結果として大きな間違いを犯してしまったわけですけど、最後にはちゃんとその過ちを解消してあるべき場所に還ったわけで、過ちと向き合うというのもこの作品で描かれていたテーマの一つだったなぁと思います。

 すずめちゃんに関して、映画になって表情とか声がつくと改めて余裕が無い少女なんだなぁというのが感じられて良かったです。
 小説だとどうしても語り部にはある程度理性が求められてしまうところがあり、それでちょっとすずめちゃんのことを見誤ってしまっていたところがあったのですが、映画だと本当に等身大の余裕が無い少女って言う雰囲気が出ていて良かったなと。
 特に芹澤さんとすずめの景色に対して抱く認識の違い、そこに籠っている感情なんかは映画の方がよりダイレクトに伝わって来るような雰囲気がありました。
 原菜乃華さんの演技本当に良かったな~って思います。

 草太さん、落ち着いていて大人びている誠実ですごく優しい青年って言う結構難しそうなキャラクターを完璧に描かれていたのはすごいなと思います。
 もうちょっと個性的にした方がわかりやすいしキャラも立つわけですけど、あえてそのままの属性でしっかりキャラを立たせてきたのが本当に上手かったなと。
 椅子に徹するべき状況でも子供たちの食べ物を落とさないことを優先してしまう姿が誠実で可愛らしくて、あのシーンがとても好きです。

 芹澤さん、個人的に小説読んでいたころはチャラい男なのはただのキャラ付け程度に思っていたのですが、映画で観るとチャラかったのは必然なことがわかりました。
 くっそ重くて厄介な家族とともに車で移動するシーンがコミカルで楽しめるものになっていたのは完全に彼のおかげだったんだなと、ある種可哀そうであるようなシーンもコミカルになっていたのは本当にこのキャラクターに救われたなって感じがします。
 そういえば2万円に関して、聞いた対象の違いも無論あるわけですけど、すずめはその話を草太さんから聞いたときにやっぱり芹澤さんは先生に向いていないんじゃと思って、環さんからはやっぱり君は先生に向いているってなったの、大人と子供の視点の違いみたいなの出ていて面白かったなと思います。
 というか草太さんきちんと覚えていたって言う。

 環さんはとても頼りになって、愛情深い方でしたけど、だからこそそれがすずめにとって重荷になっているところがある人でした。
 心のうちで少し思っていても絶対に吐き出さないようにしていた胸の内を吐くことでむしろすずめと改めて強い絆を結ぶことが出来ていたのはとても良かったなと思います。
 大人だって過ちは犯しますし、それは消して取返しのつかないものじゃないということなんだなと。
 そしてあるいは、正しいと思って続けていた善き行いこそが過ちであることもまたあるのだな、とも。

 自分は震災の当時まだ子供でしたし、関東のあまり大きな影響を受けなかった場所に住んでいたので、正直なところこの映画の震災に関しての込められたメッセージと言うのはあまりしっかりと受け取れていないだろうなと思います。
 表面的なものならば受け取れるのかもしれませんが、震災の前後で取返しがつかないほど変わってしまったものだとか、そういうものに関してはあまりしっかりと認知することが出来ず、自分にとってまともに認識出来ているこの国は基本的に震災の後のものなんですよね。
 ただ、それでもちゃんと楽しめて、何かを受け取れた作品だなと思いますし、やはり素晴らしい作品だったなと思います。
 おかえりなさいで〆られる作品、名作なことが多い気がする。


PS そういえばすずめが東京の後ろ戸があった場所に関して皇居ってつぶやくの、流石に匂わせは良くても断定はNGですってなったのかセリフ無かったですね。
 若干気になっていたシーンだけどまあそうなるよなって感じでした()

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