読書感想 文章読本

 三島由紀夫の文章読本を読みました。
 自分はいわゆる乱読家であり、あまり読む本を選ばないですし、文章において美しさをもって評価することはありませんでした。
 ある意味においてこの本はそんな自分を批判するような性質もある程度持っているのですが、正直自戒すべきところはあると思っていたところですし、書いていることも一つの筋が通っていて、三島由紀夫の持つ生粋の貴族主義を存分に感じられたので不快感は一切無くむしろ非常に楽しんで読めました。

 この作品内で語られる技法や文章の美しさへの親しみ方は非常に理路生前としてわかりやすいです。
 しかしそれらの技法に関する描写を徹底する無味な本となっているかと言うとそんなことは無くて、一貫した三島由紀夫の貴族主義的な思想によってこの本自体が一種の芸術みたいな様相を呈していて、とても美しいと感じられますし、であればこそこの本で書かれていることは非常に説得力を持っています。
 また、この本は偏見なく美しさを持つあらゆる文章に対してその美しさはどこに宿っているかを丁寧に説明してくれているので、この本一つを読むだけで美しい文章というものへの見識が広がりますし、今まで親しんでこなかった種類の作品などをどう読んで楽しむべきなのかがわかるようになります。

 今日の世の中はこの本の中で三島由紀夫が危惧していた以上に文章にあふれ、猥雑な文章と美しい文章がいっしょくたにされて野にさらされているだろうと思います。
 読んですぐに投げ捨てられる文章も読むこともなく投げ捨てられる文章も多く、腰を据えて一つの文章に取り掛かるということがほとんどなくなってきています。
 そういったこともある程度は仕方のないことだとは思いますが、たまにはじっくりと腰を据えて一つの文章の美しさというものを楽しむという時間も取ろうと思える、そんな本でした。
 とりあえずは今まで読んできたことのなかった戯曲を読んでみようと思います、せっかくなので三島由紀夫のサド侯爵夫人を読みましょうかね。

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