見出し画像

「死にたい」の奥にある想いにつながる - 一般社団法人リヴオン 【NVC大学未来ダイアローグ】


「いかしあう社会」のいま、そしてこれからを考えよう- NVC大学未来ダイアローグ


NVC (Nonviolent Communication)は、自分も、人も大切にするコミュニケーション。「正誤」「べき・ねばならない」をめぐる「力をめぐる争い」のかわりに、「何が人生を豊かにするか」を軸に「たがいをいかしあう」社会をつくる視点を育むアプローチです。

私たちはつながりの中で生きています。そのいのちのつながりに想いを馳せ、いのちが尊ばれる社会をつくるために、何ができるのでしょうか。

そんな問いをもとに、ゲストをお招きし、ともに学びあい、つながりを深める場「NVC大学未来ダイアローグ」、第2回目は、一般社団法人リヴオンの代表 尾角光美(おかく てるみ)さんをお招きし「"死にたい"の奥にある想いにつながる」というテーマで2024年4月9日に開催しました。

グリーフケア・サポートがあたりまえにある社会を


一般社団法人リヴオンは、光美さんが19歳の時に母親を自殺で亡くしたことをきっかけに、あしなが育英会の遺児支援活動を経て立ち上げた団体です。Live on(リヴオン)とは「生き続ける」という意味です。何が生き続けるのか 亡くなった人たちのいのち 私たちのいのちが生き続けるという願いがこもっています。

リヴオンが目指すのは「いつ、どこで、どのような形で喪失に直面しても、必要なサポートにつながる社会の実現」です。グリーフとは、あらゆる喪失の経験から生まれるもの。グリーフケア・サポートがあたりまえにある社会を実現したい、とリヴオンでは「自死遺児の支援」や、死因にかかわらず喪失を体験した人たちのグリーフケアの場の開催、僧侶のためのグリーフケア講座や、ファシリテーター養成、いのちの授業や、グリーフケアに関連する出版事業など、幅広い活動を展開しています。

「いのちの授業」を届けるプロジェクト

そんなリヴオンが今回挑戦しているのは、「子どもの自殺予防教育」と「自殺により死別経験した子へのサポート」両輪で届けるクラウドファンディングです。

それまで「個人の問題」と捉えられていた「自殺」が、「社会」という観点から認識されるようになる契機となった自殺対策基本法が施行されたのが2006年。

しかし現状は小中高生の自殺者数が過去最高を記録し、国の調査によると3人に1人の若者たちが死にたいと考えたことがあるとのこと。そして、そこまでいかなくとも「生きているのつらいな」と感じている人たちはたくさんいます。

自殺対策基本法の施行以降、国の予算がつくようになり、自殺予防教育も行われるようになりましたが、その多くがフォーカスしているのは「SOSの出し方」
。リヴオンでは「死にたい」の奥にある想いがうけとめられる場の大切さに
着目し、そこに重きをおいて活動を展開しています。

「いのちの授業」で伝えていること

クラウドファンディングには「自殺により身近な人を亡くした子を支えること
」「自殺予防教育の担い手を育成する」という2つのことを届けていきたいという
願いがありますが、クラウドファンディングは苦戦しているとのこと。

その背景には、メンタルヘルス、とりわけ自殺というのは「その人個人の問題」と捉えられがちであるという現状があるのではないか、とのこと。

プロジェクトが届けたいこと

「苦しみ」とともにあることができる社会へ


「死にたい」という言葉を「いけないこと」だと捉えると、それを遠ざけたいと考えるのかもしれない。かわりに「そういう気持ちがわいてくるのも自然なことなのだな」と受けとめていくことが、声をあげやすい社会につながるのではないか。

小学校などで、いわれて嬉しくなる「ふわふわ言葉」と、人を傷つける「ちくちく言葉」があり、「ちくちく言葉がよくない」とされているけれど、そういう捉え方が「死にたいなんて思っちゃいけないんだ」という気持ちを強めていないだろうか。ダメ、というかわりに、そういう気持ちがうけとめてもらえる居場所があるってことが、大事なのではないか・・・。

対話の場では、そんな声が交わされました。

Compassionate  Community


リヴオンは、「誰もが立場をこえてつながり、死と死別の苦を共にし、支えあ
えるコミュニティ:Compassionate Community」をつくることを目指しているといいます。Comは(一緒に)、Passion は(苦しむこと)という意味。Compassionate Communityというのは、苦しみとともにあることのできるコミュニティといえます。

「心の中で葛藤を抱えていることを社会のなかで声にすることの難しさ」は普遍的なテーマといえるでしょう。どんな些細なことも、等身大の声として出しても大丈夫なのだという体験ができる場を、社会の中に少しずつでも広げていくことが大事なのではないか。気軽さ、素でいていいのだという感覚を、どうしたら、少しずつでも広げていけるのか….。そんな問いを胸にいだきながらお話を伺う時間でした。

「ままに」気持ちをうけとめる


リヴオンで大事にしている考えに「ままに」があります。死にたいと言われたら、「死にたいのだなあ」と、その「ままに」うけとめる。「そんなこといわないで」と否定したりするかわりに、大事なものが「ままに」聴かれるように。小さい頃
、いのちを守るために必死に、「ままー!」と、いのちを守ってくれる人をもとめたように。

大人になるにつれてどんどん「頼っちゃだめだ、自分でがんばらなくては」と考えるようになっていく。「こうしちゃだめだ」とジャッジを重ねていくことで、どんどん生きづらくなっていく。そのかわりに「ままに」と受けとめることができるし、それが力をくれる。この捉え方は、NVCのいう共感 = その人なかに息づいているものをありのままをうけとめていくこと、に通じると思いました。

こころを寄せるということ


光美さんはあるお坊さんから「SOSの出し方教育?SOSは、からだで出しているじゃないか」という言葉をうけとったことがあるそうです。それはたとえば「朝ごはんを食べて、おいしいと感じているか」。そういうことにもあるのだろうと。「SOSと言いなさい」の前に「SOSがでているのではないか」ということに気づいていくこと。

「傾聴」や「共感」が大事と言われているけれど、もしも関係性ができていれば、相手を大切に想う気持ちからでてきた言葉であれば、こころに響くのではないか。

「死にたい」と言ってきた人がいたら、「何故自分に、この言葉を、届けてくれているのだろう」といったことにも、想いを馳せることもできるのではないか。

手を伸ばす先にあるものに辿り着く上でのハードルを、少しずつでも低くしていくことができたら・・・。そんな願いがあるのだと感じた時間でした。

誰もが大切にされ、生きていることに尊厳を感じられる社会をつくるために、私たちができること。これからも、対話を重ねて、得た気づきをいかして、活動に結びつけてゆきたいと考えています。

ナビゲーターの今井とゲストの尾角光美(てるみん)さん


NVC大学ナビゲーター / CNVC認定トレーナー:今井麻希子

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?