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評価混じりのポジティブ・フィードバックをNVCで言い換えてみる

NVC(非暴力コミュニケーション)においては、たとえポジティブな内容であっても、相手を評価することはジャッカル語とされています。

「あなたのそういうところが素敵ですね」とか「先日のドキュメントは素晴らしい内容だと思いました」という(いっけん何の問題も無さそうに思える)言い方であっても同様です。
そのなかに道徳的に相手を評価する意思を包含していると「わたしは物事の(絶対的な)優劣を知っている」という潜在的な考えが、人生を豊かにすることを拒む場面を生むこともあるのです。

ポジティブな評価が人生を豊かにすることを拒むことがある

このようなポジティブな評価は、たいてい「良かれと思ってやっている」ので、それが「人生を豊かにすることを拒む場面を生むこともある」といわれると困惑するかもしれません。
もし過去を振り返って、相手から何かしらの評価混じりのポジティブなフィードバックを受けた際に「これは嫌味で言われているのではないかな?」とか「自分ではそんなに良いものだとは思ってないのに…」というような思いを抱いたことがあれば、道徳的に相手を評価することの弊害も想像できるでしょう。

わたしたちは普段の生活において、良かれと思って、つい相手を評価するポジティブなフィードバックを伝えることがあります。
そんなとき、どのように言い換えるとよいのでしょうか。

すべての道徳的な評価はニーズの表現

前提として知っておきたいことは「すべての道徳的な評価はニーズの表現」ということです。

たとえばあなたが誰かに対し、相手にネガティブな評価を含んだフィードバックを送った場合は、あなたのなかに「満たされてないニーズがある」ということです。
反対に、相手にポジティブな評価を含んだフィードバックを送った場合は、(もしあなたが無理やり褒めようとしているのではなく、心からその言葉が発せられたということであれば)あなたのなかの「何らかのニーズが満たされた」ということを伝えています。

念のため説明すると、ここでいうニーズはあくまでNVCでいうニーズ(Universal Human Needs)であり、ひとが普遍的にもっているニーズです。「〜〜をしたい」という場合、それはニーズではなく(ニーズを満たすための)手段ということが往々にしてありますので、しっかりと自分(相手)の中のニーズを聴く(Listen for needs)ことが重要です。

ポジティブなフィードバックをするときは、自分の中のどんなニーズが満たされたかを伝えていく

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ポジティブなフィードバックを伝えるときは、まず自分の中のどんなニーズが満たされたのかを見出し、相手には「わたしのこのニーズが満たされた」と伝えると相手にあなたの伝えたいことが伝わりやすくなります。

🐺 「作ってくれたドキュメントはとても良くできていますね!」
🦒 「ドキュメントを読んで満足しています。お客さんに貢献できることを大切にしているので、すぐにご案内できますね。作ってくれてありがとう」

ジャッカルの例も悪くないと思ったかもしれません(ちなみにこの「いい/悪い」も評価です)

本当に伝えたいことを伝える

それよりも、相手に対し「自分のニーズが満たされたこと」を伝えるほうが、あなたの本当に伝えたいことに近いと思いませんでしょうか。

わたしたちは小さい頃から「本当に伝えたいこと」よりも「評価的な言葉」を伝えてしまうことを習慣化してきました。
もしかしたら大人になってからは「相手を気分よくさせる」ことを目的として、心とは裏腹な言葉を伝えていたりするかもしれません。
相手がいつでも気分が良くなるのであれば問題ないですが、ときおりそれがかないません。ジャッカルは、言葉の裏にある意味を推測するゲームを楽しんでいるのです。「またこうやってその気にさせておいて、本当に伝えたいことはこれじゃないんだよな(早くそれを伝えてほしい)」というところまで分かっている相手もいるでしょう。

NVCであればそのような心配はいりません。「わたしのニーズが満たされた」ということを伝えているので、相手の「相手に貢献したい」というニーズが満たされたことを知って「それを聞いて嬉しい」という感情を抱きやすくなるでしょう。

もちろんそれを否定するひともいます。NVCを使えばかならずあなたにとって都合の良い結果につながるとは限りません。あくまであなたの伝えたいことが伝わりやすくなるのです。
過去のあなたの言動や、もしくはこれまで聞いてきたたくさんの他の人の言動により、直ちに言葉通りに捉えてくれるかどうかはわかりません。その場合であっても、評価的な言い方よりニーズを満たしたという言い方のほうが伝わりやすいのです。

満たされたニーズを伝えよう

というわけで、評価混じりのポジティブ・フィードバックをしたくなったときは、自分自身の満たされたニーズを確認し、ニーズが満たされたことを伝えましょう。
言われた相手は「貢献したい」というニーズが満たされたことをしってポジティブな感情を抱く可能性が高まります。

実践してみてください

あなたが自分の心に正直に相手に投げかけられるよう、よろしければ過去の評価的な言い方を思い出して「どんなふうな言い換えができるだろうか」と書き出してみてくださいませ。

参考

自分が抱いた感情がなにか、その感情のきっかけとなったニーズはなにか、というのを知りたいときは「感情とニーズの一覧(PDF 有)」を眺めると見つけやすくなります。

NVCについての基本は、こちらの記事でひととおり知ることができます。
よろしければぜひご一読くださいませ。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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