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ホスト動画にハマっていたあの頃

一時期、YouTubeでホストの動画を狂ったように見ていた。YouTubeにはホストのチャンネルが乱立していて、彼らの日常が見やすく編集されている。Abemaの番組にもでている「軍神」などが有名だろうか。

これらの動画は、ホストクラブに通う女の子に向けたものというよりかは、ホストという仕事の裏側を見せてくれるものだ。(それが回り回って女の子向けのアピールにもなっているのかもしれないが)
かたすぎないドキュメンタリー的な側面もあるし、ホスト志望者へのリクルート的な意味合いもあるのかもしれない。成功するための努力や、失敗談など、成長物語として楽しめるものも多い。

私はホストクラブに行ったことがないし、行く予定もない。ただ、ホストという特殊な職業が何を考え、どうして女の子たちが彼らに大金をつぎこむのかが気になって、動画を見始めた。たくさん見て満足したところでほとんど見なくなってしまったが。

ホスト動画を見続けてわかったことを軽くまとめてみたい。
まず、ホストには女の子のモチベーションをスイッチさせる時期があるということだ。最初、女の子たちはホストにちやほやしてもらえるからホストクラブに行く。つまり、顔のいい男が楽しませてくれるからお金を出すという段階がある。そして、ある程度ホストと女の子が親密になってくると、ホストは自分がどれだけ「ホストとして上に行きたいか」という目標を女の子と共有する。これがスイッチだ。

すると、女の子にとってホストは、単に自分を気持ちよくしてくれる見た目のいい男から、目標を持っていて応援してあげたい人に変わっていく。売上を上げる、順位を上げるという目標を女の子にも共有することで、ホストにお金を使うことの意味も変わってくる。ホストに注ぎ込む金は、ふたりでトップを目指して、夢を追いかけるために必要なものなのである。「君を甲子園に連れて行くよ! だからたくさん稼いで、たくさんお金をつかってくれ!」てな具合だろうか。女性は恋人の男性のステータスでポケモンバトルをする、なんて話もあるが、自分が愛する男の格を上げさせたいという欲望も働いているのかもしれない。

ホストクラブの露骨に順位をつけるシステムや「主任」だのなんだのの役職制度は、ホスト同士の競争意識を高める意味ももちろんあるのだろうが、女の子たちに目標を共有しやすくする効果があるのだろう。

そして、ホストの世界は、あまりにもホモソーシャルだ。ホストたちはホストクラブという競争社会の中で売上(=地位)を上げるために女の子と親密になる。つまり男女間の関係においては打算と金が主な力学なのだが、男同士、ホスト同士の関係には、驚くほど爽やかな瞬間がある。トップクラスのホストになると、店の経営層に近づいていき、後輩への指導業務も増えるが、「お前が本気で売れたいと思ってるんならさ、俺はいくらでも付き合うから」「お前はやればできるよ。やれること全部やってないだけ」というような、今日日少年漫画でしか聞かないような熱いセリフが交わされるのである。女の子にいかに効率的に不安と安心を与え、金を払ってもらうか。そういう行為を同じくするものとして、彼らホストの連帯がある。

ホストクラブでトップになる人は、普通の仕事でも成功しただろうと思えるほど努力するし、戦略的にもクレバーだ。とくに人心掌握に優れている。それだけに、彼らがホストの世界で、情緒不安定な女の子たちをある意味では喰い物にしているのがもったいないな~と思うことはたくさんあるし、社会的な損失だと感じることもある。でも、彼らもどこか欠けているところがあって、その欠損とホストクラブという世界の相性がよかったということなのかもしれない。

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