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"振り込め詐欺"の国際化と手口の一例

自分に詐欺の電話が掛かってきて、30分前後、話を伺ったので記すことにしました。某SNSに投稿したものの改編版。

詐欺のような電話等に対して、多くの人が怪しければ一切、応じないというようにアクションを採ることができるかもしれませんが、そうでない方もおいでと思います。そして(英語圏で)生活する上での予備知識として適しているかなと思っています。少しでもお役に立てばと思っています。

よくNoteの仕組みが解りませんが・・タグをつけて流行りのテーマに乗る仕組みがあるようで、 #いま私にできること #最近の学び というタグで掲載しました。私にできるのはこの記事の紹介、そして最近の学びとは振り込め詐欺の一端ですね。

参考にしている情報はイギリスの税務署のウェブサイト(HMRC)、およびアメリカNew York Timesの記事カナダのCBCの記事 他、関連した報告やニュース等です。New York TimesとCBCの記事は簡単に訳したものも最下部に記しています。

”振り込め詐欺”は国際犯罪化

英語圏のアメリカ、イギリス、カナダの被害に関するニュースに共通するのは、"振り込め詐欺" はインドや中東から行われている国際的な犯罪ということです。イギリスのHMRCによると、インドの組織犯罪から英国では2020年の1~9月で40万件弱の詐欺の電話/メールがあったようです。そして同様の手口でアメリカではある1つの組織由来で20億円弱の損害が出たと推定されています。

インドでは、詐欺行為を行うのに、数十人、数百人の従業員(詐欺師)を抱えるコールセンターが存在し、そこに職を探す若い世代が雇われ、少なくとも英語圏の国々の住民に対して詐欺行為を繰り返している様子です。

複数の国が絡む犯罪で警察は苦労しているようです(New York Times, CBCの記事より)。インド警察にとってはインド国民に被害やクレームの報告もなく動きが遅れがちになりがちのようです。鎮圧には国家間の協力が必要となり時間を要する構図ができあがってしまっています。

雑感なのですが・・発展途上国、あるいは大都市の貧困層の人が「経済難のために犯罪に手を染める」という構図はよくある話と思います。ただ、その犯罪のターゲットが自分にもなりうるとは想像もしていませんでした。

その一端を体験することができまして、それを記しておこうというのがこのNoteです。

"振り込め詐欺"電話の概要

イギリス政府によると、詐欺の事例として
・Email経由の事例
・テキストメッセージの事例
・電話の事例
・SNS経由、関連アプリ経由の事例
が挙げられています。

私が受けたのは電話のもので、その詐欺の内容は
「あなたには税金の未払いがあるので払わなくてはなりません。」
というものでした。その内容から始まり、電話で対応したのですが、こちらが疑うことを前提にいろいろ「武装」しているようでした。その事例が下記から読み取れるかと思います。ともかくも相応のマニュアルがあり、訓練が課せられているようです。

そしてその電話の中で相手の不安を煽りつつ、懐疑を解いていき、振込みをさせるという手段をとります。

具体的に電話の流れを述べたいと思います。

“振り込め詐欺”電話の実例・・自動音声の電話から

ある朝、自動音声の電話がかかってきました。それに出ると、自動音声で次のように警告されました。

「この電話はとても重要な電話です。あなたは納税を怠った記録があり、今日中に対応しなければあなたは裁判所への出頭を要求され、あなたの銀行口座は凍結され、犯罪履歴、クレジットスコアなどに影響することとなります。この点、理解して頂けましたら税の担当者につなぎますので1を押してください。」

そのときの電話番号は詐欺の電話として登録されているか調べてもヒットせずでした。

(馬鹿正直に?)1を押すと
「それでは担当者につなぎます。」
とながれ、実際の職員らしき人につながりました。

インド系の訛りのつよい方につながり、次のように会話がすすみました。
・自動音声で何と言われたか説明を求められる。様々なケースがありそれに応じて照会していくとのこと。
・「そのために名前の確認が必要になります。」※
・「世の中には多くの脱税の記録があるが、手違いによってそのように判断されてしまうケースが多い。あなたの場合もそういったケースでしょう。」という説明を受けました。
・「この会話は録音されており、情報の授受に関するエビデンスとなります。私の説明を受けて対応しないままとなれば、『納税を逃れるために逃げた』と判断されてしまうので気をつけてください。その場合、明日までに銀行口座の凍結、裁判所からの支払いと出頭命令・・略・・などの処置が採られてしまいます。」
という説明も受けました。この点は何度も繰り返されるのですが、決して抑圧的ではなく「事務的に、お伝えしなくてはならないのですよ」という呈で話をされます。

※ここで自分の本名を伝えるべきではなく、違う、いじった名前で伝えるべきだったかと反省しています。私の名前はウェブ上でも検索して出てくるようなものなので軽率になってしまったかなと。

“振り込め詐欺”電話の実例・・電話番号の操作

私が「あなたが詐欺ではないという確証を得たいのですが」と訪ねると、
「パソコンで”hmrc senior courts”と検索しほしい」
と言われます。それに応じて検索し、出てきたページ(政府のホームページ)に記載された連絡先を述べるように言われます。

その電話番号を伝えると、
「それは私のオフィスの一部の電話番号ですね。今からその番号から電話しますので取ってください。」
と指示がなされ、その電話番号から掛かってきます。録音等について再び同様の警告が繰り返されます。
「繰り返さなくてはならないのです。すみません。」
というように説明され、会話がすすみました。

その後、要請に関する手紙など受け取ったことがない旨、信じられるわけない旨とう伝えたのですが、
「手紙も含め手違い上のミスはよくあることで申し訳ないが・・」
という旨の説明を受けました。

そして解決策は2通りあると説明を受けました。

1.裁判所に出頭し・・略・・法的に戦うこと
2.未払いの分の指定額を今日中に支払うと、弁護士(Solicitor)がその後の調整をするので、その際に納税の書類等を整理、ミスであることが確認されれば支払った分は返金される

ここで返金されるという選択肢があることが嫌な策だなと思いました。「あなたは納税をきちんとしており、税務署か職場のミスなのですからそれが確認されれば返金されるので大丈夫ですよ」という意です。

のらりくらりと問答を繰り返しながら、この時点で0207 947 6000 という番号を偽装して詐欺を行う事例をオンラインで確認していました(Link)。
このウェブサイトには同様の電話を受けた方のテキストがあります。

番号の偽装など可能とは私は知らなかったのですが、"Number spoofing", "Call spoofing" というそうで、この手の詐欺ではよくあるようです。中東や南アジアから電話しているにも関わらず、あたかも国内から電話がかかっているかのように装うことが可能です。

日本でも電話番号の偽装はあるそうで、電話詐欺に応用されてしまっているそう。
2020年4月の関連ニュース@日本:
https://www.tokyo-np.co.jp/article/17108

“振り込め詐欺”電話の実例・・公的文書の操作

文書について確認させてもらうことは可能かと問うと、PDFを送信する・・というように言うので、次の図のレターヘッドをこしらえたファイルを(電話番号で授受できるアプリ経由で)受け取りました。灰色の部分は私の名前が入ります。

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Tax Fraud Scam Letterというように検索すると同様に多くの例が出てきます。ともかくも本物らしい文書をすぐに用意する準備があちらにはあるようです。おそらく状況や対象に応じていろんなバリエーションを備えていることでしょう。

“振り込め詐欺”電話の実例・・支払い手続きへ

そして支払う旨を伝えると、オンラインバンキングを手伝うように会話がすすみます。そこで口座情報を得ました。私が口座を持つ銀行では、支払い時のセキュリティのために自動音声の電話がかかって来るのでそれに対応しなくてはならない旨を伝えました。すると、そうしたケースも問題なく、その場合は電話を切ってから1分後に電話するとのことでした。
「これから支払います」
「銀行から電話が来るので応じます」
と伝え、電話を切り、さらに携帯の電源も切りました。

取得した電話番号、PDFファイル、銀行口座の番号は、詐欺の報告として政府のウェブサイト経由で報告しました。

以上がやりとりです。

電話番号の偽装、公的に通用しそうなレターの用意、選択肢を与えた上で今日中に支払わせようとする様など、いろいろ練りこまれているなと感じた次第です。イギリスの政府ウェブサイトでの注意勧告では、電話での突然の催促、その催促中に支払いまで済ませるように指示することは絶対にないということです。

ここまで読んでくださった方、どうも有難うございます。どうぞ似たような類にはお気をつけて。

同類の組織犯罪に関するNew York Timesの記事

2020年12月17日、アメリカのニューヨークタイムズの記事でも同様の問題が紹介されていました。
https://www.nytimes.com/2020/12/17/world/asia/india-call-center-scam.html

内容のいくつかを訳したものを羅列したいと思います。

インドのコールセンターが、アメリカ人を欺き1400万ドルを搾取した(=14.5億円)

・あるコールセンターから50人以上が逮捕された。もともと薬物使用の疑いから発覚。
・未納の税を払わなくては、監獄に入れられる、銀行口座が凍結されるという電話をし続けた。
・支払い先の銀行口座を辿ると、メキシコ、コロンビアの口座へとつながる。
・そのコールセンターではアメリカ人4500人以上が引っ掛かった記録があり、2年間で14.5億円規模の被害が推定された。
・被害者は、警察沙汰・裁判沙汰を避けるための手段として、いろいろとお金を工面する、送金する筋を紹介される(Google Gift、ビットコインの購入)
・詐欺の拠点はインドの産業の盛んな地域にあり年間280億ドルほどの利益を出す産業、120万人従業員を抱えている。
・インド政府はそうした犯罪を認識して、特別な体制を築こうとしている。
・インドのデリー郊外で50人弱が逮捕されたケースでは3万人ほどのアメリカ人が騙されたという。その組織ではEメール経由で、デバイス/パソコンに“バグ”があると伝え、その解決措置として支払いを求める手口を採っていた。
・国際的なコールセンターでは数百人が逮捕された例も。
・詐欺師側は、アメリカ英語を話せるようにトレーニングされ、歩合制で給料を支払う仕組みがとられていた。
・犯罪組織の頭目は、アラブ首長国連邦でも同様の犯罪組織がありそこで働いた敬家印を持つ。従業員のほとんどは10代の若者だったという。
・コロナウイルスの影響で、職に就けない人が増えるなか、こうした犯罪は今後も増えるみこみ。

同類の組織犯罪に関するカナダのCBCの記事

カナダの同問題の記事(2018年10月30日)の紹介です。CBCは(Canadian Broadcasting Corporationの略です。

https://www.cbc.ca/news/world/national-cra-india-rcmp-scam-1.4883796

警察が、カナダ人を税金未納詐欺で欺くインドのコールセンターにかちこみ

・2018年10月、インド警察が違法コールセンターに突入、職員を逮捕、関連機器を押収した
・「ほんの始まりに過ぎないだろう」
・カナダ警察が詐欺行為の発端を掴むためにインドのニューデリーに赴いたところから逮捕劇ははじまったといえる。
・米国FBIも協力した。
・まだ数十の違法なコールセンターが稼動していると推測されている。
・1つのコールセンターからでも600人のカナダ人が詐欺にひっかかった模様。
・手口は自動音声の電話から始まり、かけなおさなくては逮捕や収監の恐れを告げられるもの。掛けなおすと低い額の支払いをすれば事なきを得られるというアドバイスが告げられる。
・カナダ国内から電話が来るかのような技術が使われている(Number spoofing, call spoofing)。
・被害総額でおそらく1000億カナダドルほどに及んでいることだろう(8000億円規模)。
・被害者には高齢者、移民が多い模様。被害を受けた極度の羞恥心から過少申告もあ考えなくてはならない。
・8000万円ほどの損害を出した男性いわく「警察はもっとやれ。」
・支払いの手口はギフトカードの購入であったり、ビットコインATMの利用であったり多種多様。
・支払われた金額は分割され複数の犯罪組織にわたる模様でそれも警察の捜査を難しくしている様子。
・インドの警察の動きも鈍く、カナダの被害者はクレームを無視されていると感じざるを得ないという。国家間の警察の協力が必須だが、期待されるような動きは遅々とする傾向。
・インドのムンバイを拠点とする大規模なコールセンターに監査がはいっている段階。
・カナダ国民からの声が大きければ、カナダ政府・警察も動き易くなると考えられる。
・一方で犯罪行為も止まる気配はない。


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