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本当に怖い!特発性食道破裂

本当に怖い!特発性食道破裂

ゴールデンウィーク明けに、知人の方が、「特発性食道破裂」で入院されていたということを知りました。
この病気は、誰にでも起こりうる可能性があるので、取り上げてみました。


特発性食道破裂とは?

喉から胸のあたりを通っている「食道」は食べ物や飲み物の通り道です。
「特発性食道破裂」は、そんな食道が突然、破裂してしまう病気です。

そうなんです。突然起こるのです。
それも、もともと何の疾患もなく、健康な状態の食道の壁が突発的に裂けるのです。

これは、1724年初めて報告された比較的稀な疾患で、Boerhaave症候群(ブールハーフェ症候群)とも呼ばれています。
これに罹ると、早期診断・早期発見が極めて重要となります。
早期の診断と積極的な手術により救命率は90%を超えるものの、診断の遅れから治療まで12時間以上要した場合は、致死率は50%に上ります。

特発性食道破裂の原因

嘔吐反射(「オエッ」とえずくこと)が起きた時、吐かないように我慢してしまうと、食道内に嘔吐物が充満してしまいます。そうなると、瞬間的な内圧の上昇に耐えきれなくなって食道壁が破裂していまいます。
大部分は、飲酒後に起こる場合が多いと言われています。
それだけでなく、いきみ(分娩のときや排便のとき、主に下腹部に力を入れてふんばること)、激しい咳、腹部(胸部)打撲によって、食道に内圧がかかり破裂してしまうこともあります。

破裂が起こりやすい場所は食道下部の左側とされています。
この部位はもともと食道の壁の筋層がもろく弱い状態になっていることや、血管や神経の出入り口になっている場所であるため、周りの支持組織(体を支えるためにある組織)が欠如していることなどが理由とされます。

特発性食道破裂の症状

食道破裂が起こると、食道壁全層が裂けるため、その部分から食べ物や細菌が縦隔膜に広がってしまい、あっという間に縦隔炎(じゅうかくえん)や胸膜炎(きょうまくえん)を引き起こします。

※縦隔炎(じゅうかくえん)
縦隔は、肺を圧迫する膜である胸膜の内側にあり、心臓や大血管、気管や食道、リンパ節などが含まれています。縦隔炎は、縦隔内の組織が感染症や腫瘍などによって炎症を起こす病気です。

※胸膜炎(きょうまくえん)
胸膜は、肺と胸郭の間にある薄い膜です。胸膜炎は、この胸膜が炎症を起こす病気です。

それにより、
・激しい胸部痛や背部痛 ・吐き気 ・嘔吐 ・吐血 ・呼吸困難 ・咳 ・冷汗 ・発熱 ・貧血
など、様々な症状が起こります。

嘔吐後、突然激痛が心窩部(しんかぶ:みずおち)や胸部に起こり、呼吸が苦しくなってきたら、特発性食道破裂を疑いましょう。

特発性食道破裂の治療

ただちに手術を行って胸腔内や縦隔をよく洗浄し、破裂した食道壁を2層に縫合して十分なドレナージ(ドレーンチューブを留置し、たまった滲出液・膿・血液などを排出すること)を行うことが必要になってきます。

とにかく、特発性食道破裂は命にかかわります。
特に発症率の高いとされている中高年の男性の方は要注意です。
飲酒後に嘔吐し、激しい胸痛に襲われたときは、なりふり構わず医療機関を受診してください。

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