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【読書】三国志

本書三国志とは、後漢末期から晋が再統一するまでの「正史」、そこに脚色を加えた「三国志演義」や「通俗三国志」をもとに書かれてた小説である。
そう、これは小説であり創作であり、決して堅苦しい歴史の教科書でもなく、かといって読みやすい伝記本でもないのだ。

前半は主に曹操が活躍する。
しかし時は群雄割拠、実に多くの魅力的な人物がこれでもかと登場し、三国志好きにとって名のある将たちが出てくるたびに、事の顛末を知っていながらもハラハラドキドキせずにはいられない。


しかし、この高揚感もある人物の登場によって徐々に冷めていくことになる。
誰であろう、諸葛亮字は孔明その人である。

作者はそりゃもう諸葛亮のことを書きたかったに違いない。
なにせ力の入れようがハンパじゃあない。
諸葛亮の子孫はどこどこだ、父子はいずこだ、噂ではこんな人物だー。
三顧の礼の緻密な描写、赤壁の戦い前の舌戦ー。

\諸葛亮すごい!諸葛亮天才!!諸葛亮万歳!!!/

呉の魯粛や周瑜はもちろん、好敵手である司馬懿はもとい、桃園の3人ですら彼の引き立て役にすぎない。
そして巻を追うごとに、諸葛亮の独壇場ーまた諸葛亮かーとなっていくー。
北伐に関しても、彼が悪いんじゃない、部下が匹夫だからだ、国が弱いせいだ、運がなかったからだー。

彼に代わるものがないほどの才をもっていたのは事実ではある。
しかし、もう正直、諸葛亮に対するあまりの持ち上げっぷりに辟易してくる。


著者は三国志を「曹操と孔明の戦い」といったが、樊城の戦いーすなわち関羽が討たれる前を前三国志、それ以降を後三国志と呼ぶーとわざわざ書いたように、どうみても諸葛亮がいる蜀を贔屓しているようにしかみえない(もっとも、本書は劉備から始まり諸葛亮で終わるので、いまさら蜀贔屓だなんだといったところで無意味だが。)

諸葛亮が病没した五丈原の戦い以降の話は「三国志演義もそこから急に勢いなくなっちゃったし、私も書くのをやめます」として、その後は”あとがき”として「篇外余録」にわずかに書くにとどめた。
もちろん、このあとがきの中でも諸葛亮を「正確に」持ち上げるのを忘れない。

全体を見れば、序盤こそ群雄割拠の華々しい戦とその裏の政戦を描いているが、三顧の礼以降は諸葛亮を中心とした話ーいわば諸葛亮伝といった話になる。

諸葛亮が生まれる前、現れるまではこんな世界でした。
劉備のもとについてからはこのような華々しい活躍をしました。
そして五丈原の戦いで没したので、この物語は終わりですー。


諸葛亮好きなら一読の価値あり。
が、自分にとって肌に合わず、もううんざりー二度と御免である。

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