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読書感想文【結局、どうして面白いのか 「水曜どうでしょう」のしくみ】

水曜どうでしょうーいわずとしれた人気「ローカル」番組である。
そう、ローカル番組なのだ。
にもかかわらず、口コミで広まったその面白さは日本全国に広がり、今日も新たな「藩士」を増やしている。

では、そのいち地方の、いちローカルバラエティー番組の面白さとは一体なんなのか??
考えてみれば不思議なもので、私もファンの一人ではあるのだが、その「面白さ」というのはどういうものだか説明しにくい。
ありきたりな「見ればわかるし、ハマる人はハマる」としか言いようがないのだ。

もちろん、ある程度は説明できる。
まず、こんなにディレクターやカメラマンがしゃべる番組見たことがない。
普段裏方に徹してるであろう人たちが、音声のみとはいえ堂々と出てる。
出演者の大泉洋と鈴井貴之のかけあいはもちろん、この番組制作者たちとのかけあいがまた面白い。

おい、このバカヤロー!
よく聞け、いいか
ここをキャンプ地とする。
ヨーロッパ・リベンジより
そうだよ君ィ、俺もう44(歳)だよ。
なんで、ジャングルに?って俺は言いたいところがあるけど、あるからグッと堪えてる。堪えてるよ。
ジャングル・リベンジより

何が面白いのかはよくわからないが、とにかく面白い。
その謎の解明に、なんと臨床心理士が解説してみた、という内容。


この面白さを説明するにあたって、1つの仮説を立てる。
水曜どうでしょうには、2つの物語が存在しているという。
番組としての「物語」と、その「物語」を作ってる男たちの物語ー「メタ物語」の2つ。

北極圏突入 〜アラスカ半島620マイル〜で考えてみる。
オーロラを見にアラスカへ行こう!というのが番組としての「物語」
そして、その珍道中が「メタ物語」

考えてみれば番組の企画としてはグッダグダで、オーロラを見るはずなのに氷河クルーズに行っちゃったり、マッキンリーが見たいがために無駄に数日費やしたり、全体の半分くらいはシェフ大泉がお見舞いするところ、目的のオーロラを観測する町にきたのは最終日で、それも雨が降ってるという最悪な状況、最後のオチは4人がトランプして終了(当然オーロラはない)と、初見ならば「なんだこれ…」となることウケアイである。

こんなグダグダな内容でも、彼ら4人の物語ーオーロラを見に行くまでのドタバタ珍道中ーすなわち「メタ物語」という別の物語があるから面白いのだ。
もしオーロラが見れればそれでよし、見れなくてもそれまでの「物語」がある。
どっちに転んでも「面白い」ー。


この2つの物語があるという仮説のもと、番組ディレクター2人にインタビューし、さらなる解明をすすめていく。

読んでみて思ったのが、いきあたりばったりの珍道中ではなく、キチンと考えていて、そこからの「偶然」がある、というもの。

だから僕はキミらと違うんだね。
常に演出プランを練ってるから。
四国八十八ヶ所IIより

カメラの撮り方、画面の映し方にもこだわりがある。
なぜ普段パンをしないのか(するのはサイコロの旅で駅→出演者のときくらい)、なぜズームを使わないのか、なぜ出演者を映さないのかー。

彼らの考え方や「物語」としての役割が合わさって、このように面白い番組となったのではないかー、と筆者は考える。

無論これは無数にある答えの1つであり、これが最適解だとは誰も思ってない。
それでも、本の中に「彼らと一緒に旅をしている」という表現は、なるほどとてもしっくりきた。


水曜どうでしょうが始まって20年以上、一昨年には新作も発表された。
これからも水曜どうでしょうは私たちの「物語」の1つとしてあり続けるだろうー。


最後に、私が好きな水曜どうでしょうの企画を紹介!

サイコロシリーズ
サイコロシリーズは定番だが、中でも3が好み。
前編と後編があり、1粒で2度美味しい。
過酷すぎるスケジュールに、ふいに子供の顔を思い出して涙するミスターの姿にこちらも涙。

絵ハガキの旅シリーズ
単純に「旅番組」としていい企画だなあと思った。
2回目は推理ものとしての一面もあり必見。

原付シリーズ
出演者のほとんどがバックのみという異色の企画。
企画としての面白さはもちろん、画としてのこだわりが詰まってる。

ヨーロッパシリーズ
車でヨーロッパ21ヶ国完全制覇しようという無謀な企画。
1997年にスタートしてから2020年に完結と、超ロング企画。
「ここをキャンプ地とする」の名言が生まれたのもこれ。

マレーシアシリーズ
海外ロケものの中でも1,2を争うくらい好き。「シカでした。」
特にレギュラー放送終了後の、あの肩の力が抜けた感じがいつものどうでしょう感があって「ほっとする」。

ユーコン川160キロ 〜地獄の6日間〜
企画の罰ゲームとしてユーコン川をカヌーで下るというもの。
笑いあり、料理あり、ボヤきあり、ハプニングあり!
ガイドの2人もいい味出してる。RED SIDE DOWN!!
大のアウトドア嫌いのミスターがアウトドアに目覚めてしまった企画でもある。

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