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【連載】僕の親友は不法滞在13

13 解体ショー

僕が行ったのは長い平屋3軒が連なる大きな長屋。中はとても広い。

僕が行ったときには既に10人以上がいて、料理を煮込んだり、くっちゃべったりしていた。

僕は料理作りを見ていた。器用に緑の葉っぱを何かにくるんで煮たりしている。
すると親友Hが裏のほうからやってきて、
「あっちで面白いのが見れるよ」
何だろう?裏手のほうで何かやるそうだ。
ベトナム人の男数人が子豚を押さえていた。

豚の解体ショーだ。

Hと見ていたが、準備なくいきなりグロテスクなことが始まった。
まず豚のノドにナイフを突き立て血を出す。その血を洗面器ほどの容器で受ける。500ccくらいか。そして頭をすとんと落とし、体を開いていく。
実に手際がよく見事だった。

 2020年10月、群馬県太田市で豚の窃盗容疑でベトナム人たちが逮捕された事件。これは近隣の家畜の豚などが盗まれる事件が多発していたことから始まる。
 逮捕される前、外国人ではないかとSNSなどで憶測を呼んでいた。
 それに対して女性問題で辞任した北陸の元知事は、日本の同業者の仕業だと上から断定して外国人だという人は差別主義者だと言い放っていた。この元知事の実家は養豚場と精肉業を営んでいるそうだ。素人が豚を解体するのは到底無理であり、同業者でしかありえないと主張し続けた。
 僕はこの偉そうに断定する元知事をニヤニヤして見ていたものだ。なぜならベトナム人はキレイに解体することを知っていたからね。

 今思うが、まさかこの豚は近所から盗んだのでは?と心配になる。みんな近くの養豚場から安く売ってもらったのだと言っていたのを信じるしかない。

では、なぜわざわざ豚を一匹解体するんだろうか?このHたちも、群馬で家畜窃盗をしてしまったベトナム人たちも。
それは日本では決して売っていないものがあるからだ。いろいろな内蔵類。そして新鮮な血。これらがベトナム人は好物で、そして日本にはない。

 先入観などから勘違いされては悲しいので言うが、これは、日本人にとってはグロテスクであり、野蛮な行為と映るかもしれない。
 しかしこれは文化だ。日本の刺身や寿司は生魚をそのまま口に入れるわけで世界中でいまだに気味悪がられる。アメリカなどでは市民権を得たがそれでも一度冷凍したものでなければならないなど規制も厳しい。
 ベトナム人の大半は刺身が気持ち悪くて食べられない。好きな人(好きになった人)も増えて来てはいるが、やはり生魚は気持ち悪く、危険な食べ物だ。
 だから決してベトナム人をこれだけ見て野蛮だと即答するのはやめてほしい。あくまでも文化の違い。世界にはいろんな文化があります。日本の文化や価値観を押し付けずに、いろんな文化に飛び込んで楽しんでみましょう。



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