1番の価値
「ねえ、なんであれが1番だったんだろうね」
「そんなのぼくは知らないけど、みんなわかりやすいものがすきなんじゃない」
そう、みんなあれの何がよくて1番にしているのかなんてわからないものなんだ。とくに感性を必要とするジャンルでは。
「だって、わたしたちのグループは、機能性もコストもちゃんと考えてつくったのに、おかしくない?なんにもわかってないよ」
「そうだよね、でも、ぼくはぼくたちのグループの作品が1番すきだなあやっぱり」
「えー、納得いかないなあ」
自分が良いと思ったものが世の中の1番じゃないときなんてしょっちゅうある。そんなこと、わかりきってる大人なぼくは、でも夢見がちなきみを1番にしてあげたかったなあ、なんて思ったりする。
きみが笑ってくれるんだったら、ぼくはべつにいらない1番をとるために一生懸命になるけど、そうしたって、きみの1番には、きっとなれないんだろうなあ。
「ねえ、もし次一緒に作ってさ、1番になったら、ぼくのこときみの1番にしてくれる?」
「ふふっ、ねえ、なに言ってるの?」
そうやって、わらってはぐらかすんだから、ずるいよなあ。
「ほんとに。1番になるためにはそれぐらいしなくちゃダメなのかもよ?」
「えー、そうなのかなあ」
きみはまた夢見がちな少女みたいにはぐらかす、ほんとはぜんぶわかっているくせに。
「そうだよ。なにかで1番になるなら、なにかをすてなくちゃ」
ぼくはとても意地悪だから、きみに現実を突きつける。そんなときのきみの顔が見たくて。
「そうなのかなぁ・・・・」
そうやってきみはうつむいて、口をとがらせる。その顔がたまらなく可愛くて、なんだってしたくなる。
「どうかな、わかんないけど。アイスたべにいく?」
「やったー!いこう!今日はトリプルにしよう!!」
すっかりアイスのことで頭がいっぱいになった笑顔でぼくを見上げる顔をみて、単純だなあと思いながら許してしまうぼくはきみが1番すき。
でもきみの執着する1番はアイスくらいで消え去るくらいの価値なんだろう。1番の価値なんか、たぶんひとによって違うものなんだ。
ぼくはきみが変わらないでそこにいてくれるなら、何番だっていい。最下位だっていいよ。
おわり
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