彼はなにもしゃべらない

※ペットがなくなった話ですのでご了承ください。

彼はなにもしゃべらない、うさぎだから。

昨日の朝、前日から調子がわるかった彼が、うごかず、食事もとらなくなって、いよいよかと思いつつどうぶつ病院へいき点滴をしてもらった。わたしは静かにうずくまったまま動かない彼の額にいつものようにキスをして「大好きだよ」と伝えて会社へでかけた。

帰ったら、もういないのではないかと薄々思っていて、それが怖くて遠回りして帰った。

やはり、だった。まるで、寝ているようだった。いつものように横たわって寝ているだけのようで「死んじゃったの?」って聞いてみたけどやっぱり彼はうさぎだからなにもしゃべらない。


彼と知り合ったのは9年ほど前、当時働いていたキャバクラのお客さんからもらった。(うさぎをくれた男

わたしは彼を飼うと決めた時に正直重いものを背負ったと、おもった。生き物を飼う責任ってやつだ。死にたがりのわたしなのに、そんなもの背負ってしまったら、頑張って生きなくては。そう思った。

でも、飼うことを決めた。

夏場に実家に一緒に帰る時、うさぎは暑さに弱いのを知らず、熱中症になってしまって緊急入院したり、わたしが男ともめて警察沙汰になったとき、実家に1カ月預けて離れ離れになったり、新しいおとこと暮らすことになったり、尿管結石ができて手術したり、いろんなことがあった。

わたしの人生で、だれよりもそばにいた。なにもしゃべらないけど、いつもいてくれた。

何かを背負うことはとてもしんどいけれど、わたしが何か行動しなければ、彼は命を落としたり苦しむことになる。だから、ちゃんとわたしは生きなくちゃ、と学んだし、彼の世話のために決まった時間におきる習慣もできた。

人間らしく、きちんと生きられるようになった。

9年間ずっと一緒に暮らしてくれた。なにか言ってくれるわけでもないけど、彼がいたからわたしはちゃんと生きてこられた。

いつかこうなることも知ってたし、最後まできちんと面倒をみられた。動物を飼うなんて人間のエゴだと思うから、彼が幸せだったとか、どうだったかとかはどうでもいいんだけれど、いなくなって、すごくさみしいよ。

ずっとずっと、大好き。忘れないように、たまには夢にでも会いに来てほしい。



おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?